冬越し

グラキリスの耐寒性は何度まで?冬の最低気温は10℃、下限は5℃前後

冬に葉を落としたパキポディウム・グラキリス。丸い銀白色の幹と短い枝だけの姿で、レースのカーテン越しの窓辺から少し離した木の棚に置かれている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

グラキリスは寒さに強い植物ではありません。葉を落として土が乾いた株なら5℃前後までしのぐこともありますが、それは下限であって目安ではなく、冬を安全に越すなら最低10℃を保ちます。霜と凍結には耐えません。同じ温度でも、未発根の株や小さな実生苗、湿った土の株ほど寒さで傷みやすいので、手元の株の状態に合わせて余裕を持たせます。

パキポディウム・グラキリスは、マダガスカルの乾いた岩場に育つ塊根植物で、霜が降りるような寒さにはなじみがありません。日本の冬は屋外で越せないので、秋のうちに室内へ移して春を待つのが前提になります。結論から言うと、冬の最低気温は10℃以上を保つのが目安、5℃前後が下限です。迷いやすいのは「何度までなら大丈夫か」という線の引き方で、これは気温だけでなく、株が乾いているか、根が張っているかで動きます。この記事では、温度ごとに株に起きること、株の状態による違い、室内での冷え込みの避け方、寒さで傷んだときの見分け方を順にまとめました。冬越し全体の段取り(落葉から断水、春に水を戻すまで)はグラキリスの育て方に、ほかの塊根植物との温度の比べ方は塊根植物の冬越しにまとめています。

グラキリスの耐寒性の目安|10℃・5℃・0℃で起きること

グラキリスの冬の温度は、最低10℃を保つのが目安、5℃前後が下限、0℃以下は越せない、と3つの線で考えると整理できます。ここでいう温度は昼間の室温ではなく、株を置いている場所の夜明け前の最低温度です。

最低温度株に起きること扱いの目安
15℃以上葉を残して、ゆっくり動き続けることがある加温して育てる場合の線。水は株の様子に合わせる
10〜15℃落葉して休眠に入る。幹は硬いまま冬越しの標準。水は止めて乾かしておく
5〜10℃乾いた株ならしのげるが、余裕は少ない短い期間にとどめる。土が湿っていると傷みやすい
5℃未満幹や根が冷えて傷む恐れが高まる置かない。暖かい場所へ移す
0℃以下・霜幹の組織が凍って傷む越せない。一晩でも当てない

5℃前後まで耐えたという話は、葉を落とし、土がからからに乾き、根がしっかり張った株でのことが多く、どの株でも通じる数字ではありません。同じ5℃でも、土が湿っていれば冷えた根から傷みが始まります。寒さそのものより、寒さと湿りが重なることが怖い、と覚えておくと判断がぶれません。

反対に、15℃を下回る程度の涼しさで弱ることはほとんどありません。冬のあいだに葉が黄ばんで落ちるのは寒さの害ではなく、休眠に入る合図です。

寒さへの強さは、株の状態で変わる

同じグラキリスでも、手元の株がどんな状態かで、冬に保ちたい温度は変わります。迷ったら、表の右側の温度に寄せておくと安心です。

株の状態寒さへの強さ冬に保ちたい最低温度気をつけること
根が張った株(実生の成株・発根済みの現地球)いちばん安定している10℃以上落葉したら水を止める。乾いていれば多少の冷えはしのぐ
実生の小さな苗(数cmほど)幹が細く、蓄えが少ない10〜15℃完全に乾かしきると細い根が枯れやすい。暖かい日に表土が湿る程度の少量
発根して1年目の現地球根がまだ少なく、回復力が弱い15℃前後初めての冬は無理をさせない。加温できる場所があれば使う
未発根・発根管理中の株根がなく、冷えると発根が止まる20℃以上(発根管理の温度を続ける)冬越しではなく発根管理として扱う

小さな実生苗は、大きな株と違って幹にためられる水が少なく、冬に完全に断水すると根の先から枯れていくことがあります。温度を高めに保ち、月に1〜2回、暖かい日の午前に土の表面が湿る程度を与えるくらいが落ち着きます。

輸入された現地球は、発根して最初の冬がいちばん慎重になる時期です。見た目は大きくても根はまだ少なく、寒さで根が傷むと春に取り戻すのに時間がかかります。秋の時点で根が動いていない株は、冬越しではなく発根管理の続きとして温度を保ちます。発根を待つあいだの温度や方法の選び方はグラキリスの発根管理にまとめています。

室内に入れる時期と、冬の置き場所の冷え込み

夜の最低気温が15℃を切ったら取り込む

屋外の株は、夜の最低気温が15℃を切りはじめたら室内に入れます。関東から関西の平野部ではおおむね10月中旬から下旬で、寒い地域では9月下旬から10月上旬にずれ込みます。10℃を下回る夜が来てから慌てて取り込むと、冷えた鉢のまま室内に入れることになり、落葉が急に進むことがあります。取り込みの目安は暦ではなく、天気予報の週間の最低気温で決めると地域を問わず使えます。

「室内」でも冷える場所がある

室内に入れたから安心、とは限りません。冬の家の中には、夜のあいだに屋外とあまり変わらない温度まで下がる場所があります。

  • 窓ガラスのすぐそば:夜は外気に近い温度まで冷えます。昼は窓辺、夜は窓から1mほど離すか、カーテンの内側に置きます。
  • 暖房を切る部屋:日中は20℃あっても、明け方に5℃台まで下がることがあります。寝ている間に暖房を止める部屋なら、家の中心に近い場所が安定します。
  • 玄関・廊下・北側の部屋:暖房が届かず、冬じゅう10℃を下回りやすい場所です。
  • 床の上:冷気は下にたまるので、床に直接置くより棚や台の上のほうが数℃高くなります。

窓から少し離した木の台に置かれた、葉のないグラキリスと最高最低温度計。窓ガラスとのあいだにはレースのカーテンがある 置き場所の明け方の温度は、最高最低温度計を隣に置くと分かります。(AIで生成したイメージです)

置き場所の温度を確かめるには、最高最低温度計(その日の最高と最低を記録しておけるもの)を鉢の隣に置くのが確かです。部屋の温度計が18℃を指していても、窓辺の棚は明け方6℃だった、ということは珍しくありません。数日見れば、その場所が10℃を保てるかどうかがはっきりします。

暖房の温風が直接当たる場所は、温度は足りていても幹が急に乾いて表皮が傷むので避けます。冬の窓辺の光と、室内での風の通し方は塊根植物の冬越しに詳しくまとめています。

10℃を保てない部屋での守り方|寒波の夜と保温の工夫

最高最低温度計で測ってみて、明け方に10℃を切る場所しかない、という家は少なくありません。そのときは部屋全体を暖めるより、株のまわりだけを囲って温めるほうが手軽で確かです。

株のまわりだけを温める

方法上がる温度の目安向いている場面気をつけること
夜だけ暖かい部屋へ移す部屋しだい鉢が少なく、持ち運べるとき昼は明るい窓辺、夜は家の中心へ。移動の手間だけで済む
発泡スチロール箱・段ボールで夜だけ囲う外より数℃一晩〜数日の寒波落葉株は暗くても平気。朝には開けて光と空気を入れる
室内用の簡易温室+園芸用ヒーター10℃以上を保ちやすい鉢が多い・冬じゅう寒い部屋温度を一定に保つ調節器(サーモスタット)付きを選ぶ
鉢の下に敷くヒーターマット根のまわりを数℃実生の小さな苗・発根1年目の株温めると土が乾きやすい。鉢底だけ熱くなりすぎないよう調節器と組み合わせる

囲いや温室の中は、夜は暖かくても日中に日が差すと急に高温になります。窓辺に置いた簡易温室は、晴れた昼に扉を開けて熱を逃がします。ヒーターを使う場合も、温度は「暖かければ暖かいほどよい」ではなく、落葉させて休ませる株なら10〜15℃で十分です。20℃近くまで上げると、休眠が浅くなって芽が早く動き、光の足りない冬に枝が細く伸びます。

寒波の予報が出た夜にすること

週間予報で一段と冷え込む夜が分かったら、その前日のうちに次の3つを済ませておきます。

  1. 水を与えない:冷え込む前の水やりは、湿った土を冷やして根を傷める原因になります。小さな苗に少量与えている場合も、寒波が過ぎるまで待ちます。
  2. 窓から離し、床から上げる:窓辺から部屋の内側へ、床から棚や台の上へ。これだけで明け方の温度が数℃変わります。
  3. 夜だけ囲う:発泡スチロール箱や段ボールをかぶせ、朝に外します。暖房の効いた部屋へ移せるなら、それがいちばん確かです。

一晩だけ5℃を下回ってしまったら

落葉して乾いた株なら、一晩5℃を切った程度で傷むことは多くありません。慌てて水を与えたり、すぐに暖房の真横へ移したりせず、まず暖かい場所へ戻して乾いたまま数日見ます。確かめるのは、幹と株元の硬さ、枝先の色です。押して硬く、黒ずみや透けたような部分が出てこなければ、そのまま冬越しを続けます。数日のうちに変化が出た場合は、下の「寒さで傷んだときのサイン」の表で見分けます。

発泡スチロール箱の中に置かれた、葉を落としたグラキリスの鉢。箱のふたは半分開けてあり、横に小さな温度計が置かれている 冷え込む夜は、箱で囲うだけでも明け方の温度が数℃変わります。(AIで生成したイメージです)

冬も葉を残して育てる場合|加温と光をそろえる

暖房の効いた部屋で夜も15℃以上を保ち、育成ライトで光を足せる環境なら、グラキリスは葉を全部落とさずに冬を過ごすことがあります。葉が残っているあいだは株が水を使っているので、土が中まで乾いたら少なめに与える、という生育期に近い扱いになります。

このやり方で気をつけたいのは、温度と光のどちらかが欠けたときです。温度だけ高くて光が足りないと、新しい枝が細く伸びて姿が崩れます。光は足りていても夜に暖房が切れて冷え込むなら、葉を残すより落葉させて休ませるほうが株への負担は小さくなります。どちらにするか迷うなら、標準の「落葉させて乾かし、10℃以上で休ませる」冬越しで十分です。枝が細く伸びてしまったときの整え方はグラキリスの徒長にまとめています。

冬越しの段取りを通して確かめたい方へ落葉から断水、春に新芽を見て水を戻すまでの流れを、グラキリスの育て方にまとめています。
グラキリスの育て方を見る →

寒さで傷んだときのサインと、正常な休眠の見分け

冬のグラキリスは、葉が落ちて幹にも浅いしわが寄るので、「寒さでやられたのでは」と心配になりやすい時期です。正常な休眠と寒さの害は、幹を押したときの硬さと、色の変わり方で切り分けます。

様子考えられること手当て
葉が黄ばんで落ちる・幹は硬い正常な休眠そのまま。水は止めたまま春を待つ
幹に浅いしわ・押すと硬い休眠中の水分の減り正常な範囲。水は戻さない
枝先や幹の一部が黒ずむ・水が染みたように透ける冷えによる組織の傷み暖かい場所へ移し、乾いたまま様子を見る
幹の下部が柔らかい・押すと沈む低温と湿りが重なった根腐れ鉢から抜いて根を確かめ、傷んだ部分を取り除く

枝先だけが冷えで黒ずんだ場合は、すぐに切らず、春に新芽が動くまで待つと、生きている部分と枯れた部分の境目がはっきりします。境目が分かってから、枯れた枝先を清潔な刃物で落とします。

心配なのは、株元が柔らかくなるほうです。幹の下が押して沈むなら、冷えた土に水が残っていたことが多く、放っておくと上へ広がります。鉢から抜き、黒く崩れた根を取り除いて乾かし、新しい乾いた用土に植え直します。根の状態の見方と植え直しの手順はグラキリスの植え替えに、パキポディウムの仲間に共通する傷みの見分け方はパキポディウムのトラブルにまとめています。

縁側では、塊根植物の個体を1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

グラキリスはベランダで冬を越せますか?

日本の多くの地域では難しいです。グラキリスは霜や凍結に耐えず、冬の夜のベランダは関東の平野部でも5℃を下回る日が続きます。簡易な温室やビニールで囲っても、加温しなければ明け方には外気に近い温度まで下がります。秋に夜の最低気温が15℃を切りはじめたら、室内の明るい場所へ移すのが確かです。

冬の室温が8℃くらいまで下がります。大丈夫でしょうか?

葉を落として土がしっかり乾き、根の張った株なら、しのげることが多い温度です。ただし余裕は少ないので、水は完全に止め、窓から離して床ではなく棚の上に置くと数℃は上げられます。小さな実生苗や、発根して最初の冬の現地球には低めなので、もう少し暖かい部屋か、夜だけ暖かい場所へ移すほうが安心です。

パキプスや亀甲竜と同じ部屋で冬越しできますか?

同じ部屋に置くことはできますが、扱いは揃いません。オペルクリカリア・パキプスはグラキリスと同じく冬に葉を落として休む夏型ですが、亀甲竜は冬に葉を茂らせて育つ冬型で、冬も日に当てて水を与えます。種類ごとの最低温度と冬の水の違いは、塊根植物の冬越しで一覧にしています。

春は最低気温が何度になったら外に出せますか?

夜の最低気温が安定して15℃を超えてからが目安です。関東から関西の平野部ではおおむね5月に入ってからになります。暖かい日が数日続いても、春先は急に冷え込む夜が戻ることがあるので、週間予報で15℃を切る夜がなくなったのを確かめてから出します。冬のあいだ室内にいた株は日差しに慣れていないので、はじめの1〜2週間は明るい日陰や午前だけ日の当たる場所に置き、少しずつ日なたへ移します。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

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