実生

サルコカウロンの実生|種まきの時期と手順、発芽後の育て方とモンソニア属のこと

素焼き鉢に植えたサルコカウロン。低く横に広がる灰褐色の太い枝に細いトゲが並び、枝先に小さな葉と淡いピンクの花がひとつ咲いている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

サルコカウロンはフウロソウ科の、冬に育って夏に休む塊根植物です。近年はモンソニア属に含める扱いが広がっています。実生は、気温が下がりはじめる秋(15〜25℃が目安)に、水はけのよい細かい用土の表面近くに種をまき、腰水で乾かさずに発芽を待つのが基本です。発芽後は早めに日に当てて腰水を外し、最初の夏は完全には断水せず日陰で控えめに。根を動かされるのを嫌うため、植え替えは2年ほど待つのが目安です。

サルコカウロン(Sarcocaulon)は、ろうを含んだ硬い皮の枝が地面を這うように広がり、季節がくると小さな葉と、ゼラニウムの仲間らしい五弁の花をつける塊根植物です。現地から根を切って輸入された株は、鉢に植えても根が張りにくいことが知られていて、種から育てた株のほうが鉢の環境になじみやすいとされています。この記事では、種まきの時期と手順、発芽してからの最初の一年、そして親株になってからの育て方と種類ごとの姿を順にまとめます。塊根植物全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。

サルコカウロンとは|フウロソウ科の、冬に育つ塊根植物

サルコカウロンはフウロソウ科の植物で、南アフリカからナミビアにかけての乾いた地域に十数種が自生します。同じ科には、園芸でおなじみのゼラニウム(ペラルゴニウム)があり、花を見ると近い仲間だとわかります。

名前について、ひとつ知っておきたいことがあります。近年は遺伝子の解析をもとに、サルコカウロンをモンソニア属に含める扱いが広がっていて、学名では「モンソニア・ムルチフィダ(Monsonia multifida)」のように表記されることが増えています。一方で、サルコカウロンを独立した属として扱う資料も残っているため、流通名としては両方が使われています。店頭やラベルで「モンソニア」と書かれていても、同じ植物を指していることが多いと考えてよいでしょう。

枝の皮にはろうのような成分が多く、乾いた枝はよく燃えることから、現地では「ブッシュマンのろうそく」とも呼ばれてきました。多くの種では、葉が落ちたあとの葉柄が硬く残ってトゲになり、枝にトゲが並んだ独特の姿になります。

日本の鉢植えでは、秋から春に葉を出して育ち、晩春に葉を落として夏を休む冬型として扱うのが一般的です。ただし葉の出入りは気温と水で前後しやすく、冬型のなかでは比較的ゆるやかなリズムで動きます。

種まきの時期と、種を迎えるときのこと

種まきは、暑さが落ち着いて気温が下がりはじめる秋(9〜10月ごろ)が基本です。発芽後すぐに株の生育期に入るので、苗が体力をつけてから最初の夏を迎えられます。発芽の温度は15〜25℃ほどが目安で、室内の明るい場所なら春まきもできます。春にまいた場合は、発芽してまもなく夏の休眠期に入るので、最初の夏の管理を少し丁寧にします。

種は、専門店や種子を扱う販売元から手に入れるのが一般的です。採ってから時間がたった種は発芽がそろいにくくなるので、届いたら長く置かずにまくほうが安心です。保管する場合は、紙袋などに入れて涼しく乾いた場所に置きます。

項目目安
まく時期秋(9〜10月)。室内なら春も可
発芽の温度15〜25℃ほど
発芽までの日数1〜4週間ほど。種の状態や温度で幅がある
置き場所明るい日陰。直射は発芽後に少しずつ
個別の鉢へ2年ほどたってから

種まきの手順|表面近くにまき、腰水で乾かさない

用意するのは、平たい鉢や育苗トレー、水はけのよい細かい用土、腰水用の受け皿です。用土は、細かい軽石や日向土を中心に、赤玉土の小粒を少し混ぜた、肥料を含まないものが扱いやすいです。用土の考え方は用土と鉢の選び方にまとめています。

  1. 鉢に用土を入れ、鉢底から水が流れるまで湿らせておきます。
  2. 種を間隔をあけて表面に置き、ごく薄く用土をかけるか、指で軽く押さえて表面近くに沈める程度にします。深く埋めないのがポイントです。
  3. 受け皿に水を張って鉢の底から吸わせる腰水にし、表面を乾かさないようにします。上から勢いよく水をかけると種が動いてしまうので、霧吹きを使います。
  4. 明るい日陰の、温度が15〜25℃ほどに保てる場所に置きます。乾燥しやすい室内では、ラップなどで軽く覆って湿り気を保つ方法もあります。その場合も、ときどき外して空気を入れ替えます。

発芽までのあいだは、表面にカビが出ていないかを見ます。白い綿のようなカビが広がるときは、覆いを外して風を通し、腰水の水位を少し下げます。

平たい育苗鉢に並んだサルコカウロンの小さな苗。根元が少し太り、丸い双葉の上に切れ込みのある本葉が出ている。鉢は水を張った皿に浅く浸かっている 発芽してまもない苗。双葉の上に、切れ込みのある本葉が出てきます。(AIで生成したイメージです)

発芽してから最初の夏まで|光に慣らし、腰水を外していく

芽が出そろったら、少しずつ光を強くしていきます。明るい日陰から、数日おきにレースカーテン越しの日なた、やわらかい直射へと移すと、苗が間延びせずに締まって育ちます。光が足りないと、茎が細く長く伸びて倒れやすくなります。

腰水は、本葉が出てきたころから外していきます。いきなり乾かすのではなく、腰水の時間を短くし、やがて「表面が乾いたら鉢底から流れるまで与える」普通の水やりへ切り替えます。苗のあいだは用土が乾ききる前に与えるくらいでかまいません。

最初の冬は生育期です。日当たりのよい室内に置き、夜も5℃を下回らないようにします。暖かすぎる部屋で光が足りないと徒長しやすいので、日中によく日を当てることを優先します。

いちばん気をつけたいのは最初の夏です。親株のように太い枝にたっぷり水をためていない苗は、完全に断水すると枝がしぼんで戻りにくくなることがあります。葉を落として休みに入っても、風の通る明るい日陰に置き、夕方の涼しい時間に土の表面が湿る程度を、月に2〜3回ほど与えて越させるのが目安です。逆に、暑い時期に鉢の中を長く湿らせると根が傷むので、たっぷり与えることは避けます。

植え替えを急がない理由|根を動かされるのが苦手

サルコカウロンの仲間は、一度根を傷めると新しい根を広げにくい性質があるとされています。現地球(根を切って輸入された株)が鉢で根づきにくいのも、この性質によるものです。

そのため実生の苗も、種まきした鉢で2年ほど育ててから、個別の鉢へ移すのが目安です。最初から少し深さのある鉢にまいておくと、根が窮屈になりにくく、植え替えまでの時間を稼げます。

植え替えるときは、秋の動き出しのころに行います。

  1. 数日前から水を止め、用土を乾かしておきます。
  2. 根鉢をできるだけ崩さないように抜き、根をほぐしすぎずに新しい鉢へ移します。
  3. 植え付けたら1週間ほど水を控え、新しい葉の動きを見てから少量ずつ再開します。

根のない状態で届いた輸入株の扱い方は、ベアルートとはにまとめています。同じフウロソウ科で、冬型の塊根性ペラルゴニウムの発根の進め方はミラビレの発根管理が参考になります。

親株の育て方|秋〜春は日なた、夏は明るい日陰

大きくなった株も、基本のリズムは苗と同じです。

  • 置き場所:秋から春は、日当たりと風通しのよい場所。冬の夜は室内の明るい窓辺に取り込み、5℃を下回らないようにします。夏は直射を避けた明るい日陰で、雨の当たらない風の抜ける場所に置きます。
  • 水やり:葉があるあいだは、用土が中まで乾いてからたっぷり。葉が黄ばみはじめたら間隔を伸ばし、夏は断水か、月に1〜2回表面を湿らせる程度にとどめます。枝が太く硬い株ほど、夏の断水に耐えます。
  • 用土と鉢:水はけと通気を最優先に、硬い粒を中心にした配合。素焼き鉢など乾きやすい鉢が扱いやすいです。
  • 枝の扱い:トゲのある種は、植え替えや移動のときに手袋をすると安心です。

冬型の塊根植物に共通する冬越しの考え方は塊根植物の冬越しに、夏型・冬型の水やりの切り替えは塊根植物の水やりに詳しくまとめています。

同じ冬型の塊根植物もあわせて秋に葉を出して冬に育ち、夏に休む。サルコカウロンと同じリズムで暮らすチレコドンの育て方は、夏の断水の加減や植え替えの時期の参考になります。
チレコドンの育て方を見る →

種類による違い|ムルチフィダ・パターソニーなど

よく名前を見かける種を、姿の特徴で並べます。学名は、サルコカウロン属とモンソニア属の両方の表記が流通しています。

名前学名(サルコカウロン/モンソニア)姿の特徴
ムルチフィダ(ムルチフィズム)S. multifidum / M. multifidaトゲがなく、平たく這うように枝が広がる。細かく切れ込んだ葉
パターソニーS. patersonii / M. patersonii低く枝分かれし、細いトゲが並ぶ
ヘレイS. herrei / M. herreiトゲのある枝に、灰緑色の小さな葉
クラシカウレS. crassicaule / M. crassicaulis太めの枝にトゲが目立つ

育て方の基本は共通です。違いが出やすいのは夏の水の加減で、小ぶりな株や枝の細い種ほど蓄えが少ないので、苗と同じように夏も完全には乾かしきらない扱いが向きます。

縁側では、ユーフォルビアのオベサ鉄甲を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。同じく冬に育つ塊根植物として、オトンナの育て方もあわせてどうぞ。

よくある質問

サルコカウロンとモンソニアは同じ植物ですか?

近年は遺伝子の解析をもとに、サルコカウロンをモンソニア属に含める扱いが広がっています。そのため、同じ種が「サルコカウロン・パターソニー」とも「モンソニア・パターソニー」とも呼ばれます。サルコカウロンを独立した属とする資料も残っているので、名前は両方が流通していますが、育て方の考え方は変わりません。

種まきは春と秋のどちらがよいですか?

基本は秋(9〜10月ごろ)です。発芽してすぐに株の生育期に入るので、冬のあいだに体力をつけてから最初の夏を迎えられます。室内で15〜25℃ほどを保てれば春まきもできますが、まもなく夏の休眠期に入るので、日陰に置いて表面が湿る程度の水を月に数回与え、乾かしきらないように夏を越させます。

苗はいつ個別の鉢に植え替えればよいですか?

2年ほどたってからが目安です。サルコカウロンの仲間は根を動かされると新しい根を広げにくい性質があるとされているため、苗のうちは種まきした鉢でそのまま育てます。植え替えるときは秋の動き出しのころに、根鉢をできるだけ崩さずに移し、1週間ほど水を控えてから少量ずつ再開します。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

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