育て方

チレコドンの育て方|冬に育ち夏に休む水やりと置き場所、万物想・阿房宮など種類別の違い

素焼き鉢に植えた万物想(チレコドン・レティキュラーツス)。ずんぐりした幹の先に指のような多肉質の葉が集まり、その上に枯れた細い花茎が網のように広がっている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

チレコドンは南アフリカ西部の冬に雨が降る土地に育つ、ベンケイソウ科の冬型の塊根植物です。秋に葉を出して春まで育ち、晩春に葉を落として夏を休みます。秋〜春は日なたで土が乾いたらたっぷり、夏は風の通る明るい日陰で断水か、ごく控えめな水に。冬は5℃を下回らない日当たりのよい場所に置きます。万物想のような小型種と阿房宮のような大型種では、夏の水の加減と育つ速さが違います。

チレコドン(Tylecodon)は、ずんぐりした幹や枝に水をため、季節がくると多肉質の葉を広げる塊根植物のグループです。網目のように残る花茎が特徴の万物想、黄褐色の皮がはがれる阿房宮など、同じ属でも姿はさまざま。育て方でいちばん戸惑うのは、多くの多肉植物と季節が逆で、秋から春に育ち、夏に葉を落として休むことです。この記事では、その一年のリズムを軸に、水やり、置き場所と温度、用土と植え替え、増やし方、種類による違いを順にまとめます。塊根植物というくくり全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。

チレコドンとは|冬に雨が降る土地の、ベンケイソウ科の塊根植物

チレコドンはベンケイソウ科チレコドン属の植物で、南アフリカ西部からナミビアにかけての、冬に雨が降り夏は乾ききる地域に自生します。かつてはコチレドン属に含められていた仲間で、幹や枝が太り、枝先に多肉質の葉をつけ、花のあとに花茎を残すものが多く見られます。

自生地の雨季が冬にあたるため、日本の鉢植えでも秋に葉を出し、冬から春に育ち、晩春に葉を落として夏を休みます。成長はゆっくりで、年に幹が目に見えて太るような植物ではありません。そのぶん、何年もかけて枝ぶりや花茎の重なりが積み重なっていく姿を楽しむ植物です。

日本の鉢植えでの一年は、おおよそ次のように進みます。

時期株の様子管理の中心
9〜10月枝先から新しい葉が動き出す少量から水を再開、植え替えの適期
11〜2月葉を広げて育つ日なたで乾いたらたっぷり、5℃以上を保つ
3〜4月まだ育つ。花をつける種も引き続き日なた、水は乾いたら
5〜6月葉が黄ばみ、落ちはじめる水を少しずつ減らす
7〜8月葉がなく休む明るい日陰で風を通し、断水か控えめに

葉が出る時期・落ちる時期は、種類や置き場所の温度で1か月ほど前後します。カレンダーより、葉があるかどうかを合図に管理を切り替えるのが確実です。

ひとつ知っておきたいのは、チレコドン属には家畜が食べると中毒を起こすことで知られる種があることです。鉢植えで触れる程度なら気にしすぎることはありませんが、剪定や植え替えで汁が手についたら洗い流す、ペットや小さな子どもが口にしない場所に置く、という付き合い方にしておくと安心です。

置き場所と温度|秋〜春は日なた、夏は明るい日陰

生育期の秋から春は、日当たりと風通しのよい場所が基本です。光が足りないと、新しい葉が細長く間延びし、枝も締まらずに伸びてしまいます。室内なら、南向きの窓辺など日中できるだけ長く日が入る場所に置きます。

冬の温度は、最低5℃を下回らないことがひとつの目安です。冬型とはいえ霜や凍結には耐えられないので、冬の夜は室内の明るい場所に取り込みます。理想は、日中は日が当たって暖かく、夜は5〜10℃ほどに下がる環境です。日中にしっかり光を浴び、夜は暖まりすぎないほうが、葉も枝も締まって育ちます。冷たい北風が直接当たる場所は避けます。

夏は、直射の当たらない明るい日陰で、風の通る場所へ移します。葉がない休眠中は光をほとんど使わないので、日に当てるより鉢の中を暑く蒸らさないことのほうが大切です。雨のかからない棚の下や、軒下の風が抜ける場所が向いています。日本の夏の高温多湿は、自生地の乾いた夏とは違い、株にとっていちばんの負担になる季節です。冬越しの温度の考え方は、ほかの塊根植物との比較も含めて塊根植物の冬越しにまとめています。

水やり|葉があるあいだはたっぷり、夏の断水はどこまでか

水やりは、葉が出ているあいだは、土が中まで乾いてからたっぷりが基本です。鉢底から流れ出るまで与え、受け皿の水は捨てます。生育期でも、1〜2週間に1回ほどの間隔になることが多く、気温が低い真冬は土の乾きも遅くなるので、さらに間をあけます。乾いたかどうかは、鉢を持ち上げたときの軽さか、鉢の縁から挿した竹串の湿り気で確かめます。

季節ごとの切り替えは、次の順に進めます。

  1. 秋の動き出し(9〜10月):枝先に新しい葉が見えたら、土の表面が湿る程度から再開します。葉が増えてきたら、乾いたらたっぷりへ。
  2. 生育期(11〜4月):土が乾いたらたっぷり。晴れた日の午前中に与えると、夜までに鉢の中が冷えすぎません。
  3. 休眠入り(5〜6月):葉が黄ばみはじめたら、間隔を少しずつ伸ばします。
  4. 休眠中(7〜8月):断水、または月に1〜2回、土の表面を軽く湿らせる程度にとどめます。

この夏の扱いは、情報源によって「断水」とも「月に数回の少量」とも書かれていて迷うところです。違いは株の大きさと種類から来ています。幹が太く水をたっぷりためている株は、夏じゅう断水しても蓄えで持ちこたえます。 いっぽうで、実生から1〜2年の小さな苗や、細い枝の小型種は蓄えが少なく、完全に断水すると幹や枝がしぼんで戻りにくくなることがあります。そうした株には、夕方の涼しい時間に、表面が湿る程度を月に1〜2回与えます。どちらの場合も、休眠中にたっぷり与えて鉢の中を長く湿らせるのは避けます。暑さと湿りが重なると、根や幹が傷む原因になります。

塊根植物全体での夏型・冬型の水やりの違いや、休眠明けの切り替え方は塊根植物の水やりに詳しくまとめています。

葉を落として夏の休眠に入った阿房宮。黄褐色の皮がはがれる太い幹から短い枝が伸び、明るい日陰の縁側に置かれている 夏は葉がなく幹と枝だけの姿になります。日陰で風を通し、水は止めるか控えめに。(AIで生成したイメージです)

用土・鉢・植え替え|水はけを最優先に、秋の動き出しに合わせて

用土は水はけと通気を最優先にします。チレコドンは根が過湿に弱く、とくに夏に湿った土が残ると傷みやすいので、保水力の高い土は向きません。市販の多肉植物・サボテン用の土に軽石や日向土を足すか、自分で配合するなら、軽石・日向土などの硬い粒を中心に、赤玉土を少し、有機質はごく控えめにします。用土の考え方は用土と鉢の選び方にまとめています。鉢は、素焼き鉢やスリット鉢のように乾きやすいものが安全で、株に対して大きすぎない鉢を選ぶと乾きの読みがしやすくなります。

植え替えは2〜3年に1回、9〜10月の動き出しの時期に行います。夏の休眠明け、新しい葉が見えはじめたころが、根がこれから伸びる時期にあたります。

  1. 植え替えの数日前から水を止め、土を乾かしておきます。
  2. 鉢から抜いて古い土を軽く落とし、黒く傷んだ根や枯れた根だけを取り除きます。
  3. 乾いた新しい用土に植え付けます。
  4. 1週間ほどは水を与えず、根の切り口を乾かしてから少量で再開します。

作業中に気をつけたいのは、チレコドンの枝や幹はもろく、ぽきりと折れやすいことです。植え替えのときに枝をつかんで引き抜かない、水やりのときに勢いの強い水を枝に当てない、というだけで折損はかなり防げます。万一折れた枝は、切り口を乾かして挿し木に回せます。

増やし方|実生と挿し木

チレコドンは種まき(実生)と挿し木で増やせます。

実生は、秋の生育の入りに合わせて種をまきます。種はごく細かく、とくに万物想の種は粉のように小さいので、土をかぶせずに表面にまき、鉢の底から水を吸わせる腰水で湿り気を保ちます。上から水をかけると種が流れてしまいます。発芽までは明るい日陰で、乾かさないように管理します。苗が小さいうちは蓄えがほとんどないので、最初の夏は完全には断水せず、日陰で控えめに水を与えながら越させるほうが安定します。

挿し木は、生育期のはじめに、枝を切って切り口を数日から1週間ほど乾かし、乾いた用土に挿します。根が出るまでは水を控えめにし、新しい葉が動き出したら通常の水やりへ移ります。折れてしまった枝も、同じ手順で育て直せます。

同じ冬型の塊根植物もあわせて秋に芽を出して冬に育ち、初夏に休む。チレコドンと同じリズムで暮らす亀甲竜の育て方は、休眠の見極めや夏の過ごし方の参考になります。
亀甲竜の育て方を見る →

種類による違い|万物想・阿房宮・奇峰錦など

チレコドンは、手のひらに乗る小型種から、自生地では背の高い低木になる種まで幅があります。よく流通するものを、姿の特徴で並べます。

和名学名姿の特徴
万物想T. reticulatus小型。花のあとの花茎が枯れて硬く残り、年々網目のように重なる
阿房宮T. paniculatus属のなかでは大型。黄褐色の薄い皮がはがれる太い幹
奇峰錦T. wallichii幹が葉の付け根の跡でごつごつと覆われ、細長い葉を枝先につける
白象(ペアルソニー)T. pearsonii小型でまとまりのよい姿
ブッコルジアヌスT. buchholzianus細い枝がよく分かれる小型種

育て方の基本は共通ですが、違いが出るのは主に次の2点です。

  • 夏の水の加減:阿房宮のように幹の太い大型種は蓄えが多く、夏の断水に耐えやすい側です。万物想やブッコルジアヌスのような小型・細枝の種、そして若い苗は、断水しすぎるとしぼみやすいので、前の節の「月に1〜2回の控えめな水」を当てはめます。
  • 花茎の扱い:万物想の網目のような花茎は、この種の見どころそのものです。枯れて見えても切らずに残しておくと、年を重ねるほど重なりが増していきます。

開花の時期は年によってずれることがあり、葉が落ちはじめるころに咲くこともあります。花が咲いても株の調子とは直接関係しないので、管理はそのまま葉の有無に合わせて進めます。

迎えるときに見るところと、調子を崩したときのサイン

チレコドンは、季節によって店頭での姿が大きく変わります。秋から春に並ぶ株は葉があるのが健全な姿で、夏は葉がなく幹だけなのが普通です。葉のない時期に迎えたときは、そのまま明るい日陰で休ませ、秋に葉が動いてから水を戻します。株選びで見るのは次のあたりです。

  • 幹の硬さ:指で軽く押して硬く張っているもの。柔らかい部分や、しわが深く寄って凹んでいる部分がないか。
  • 株元:地際が黒ずんでいない、ぐらつかないもの。
  • 枝:折れや大きな傷がないもの。枝はもろいので、持ち帰るときも枝ではなく鉢を持ちます。

根を切り詰めた現地球(ベアルート)で迎えたときの始めどきと手順は万物想の発根管理に、輸入株と国内で種から育てた株の違いは実生株と現地球(輸入株)の違いに、塊根植物を初めて迎えるときの選び方は塊根植物の初心者におすすめの種類にまとめています。

調子の変化は、葉と幹の硬さに出ます。

  • 晩春に葉が黄ばんで落ちる:正常な休眠入りです。幹が硬ければ問題はなく、水を減らして日陰へ移します。
  • 秋〜春の生育期に葉が急に落ちる:寒さや水切れ、または過湿。最低温度と鉢の重さを確かめます。
  • 葉が細長く間延びする:光が足りていません。より明るい場所へ寄せます。
  • 夏に幹がしぼんでしわが寄る:蓄えを使っている状態です。硬さが残っていれば、秋の水やり再開で戻ることが多いです。小型種や苗で痩せが進むときは、夕方に表面を湿らせる程度の水を足します。
  • 幹や株元が柔らかい、黒ずむ:腐りです。多くは夏の高温と湿りが重なったときに起きます。水を止めて鉢から出し、傷んだ部分を取り除いて切り口を乾かし、乾いた用土に植え直します。
  • 秋になっても葉が出ない:幹が硬く重いうちは待ちます。気温が下がりきらない年は、動き出しが10月以降にずれることもあります。

どのサインも、光・水・温度のどれかが季節とずれたときに出ます。季節が逆であることさえ体に入れば、チレコドンは手のかからない植物です。

縁側では、ユーフォルビアのオベサ鉄甲を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。夏型の代表として、日を浴びて夏に育つ火星人(フォッケア)の育て方もあわせてどうぞ。

よくある質問

夏は完全に断水したほうがよいですか?

株の大きさと種類で変わります。阿房宮のように幹が太く水をたっぷりためている株は、夏じゅう断水しても蓄えで持ちこたえます。いっぽう、種から育てて1〜2年の小さな苗や、万物想・ブッコルジアヌスのような細い枝の小型種は、完全に断水すると幹や枝がしぼんで戻りにくくなることがあります。そうした株には、夕方の涼しい時間に土の表面が湿る程度を月に1〜2回与えます。どちらでも、休眠中にたっぷり与えて鉢の中を長く湿らせるのは避けます。

春の終わりに葉が全部落ちました。枯れたのでしょうか?

チレコドンは夏に休む冬型の植物なので、5〜6月ごろに葉が黄ばんで落ちるのは正常な休眠入りです。幹を軽く押して硬く張っていて、株元に黒ずみや柔らかさがなければ生きています。水を減らして明るい日陰の風が通る場所へ移し、秋に枝先から新しい葉が見えたら、表面が湿る程度から水を戻します。

冬は何度まで耐えられますか?

最低5℃を下回らないことがひとつの目安です。冬は生育期なので、寒さを避けるだけでなく、日中にしっかり日を当てることも欠かせません。霜や凍結には耐えられないため、冷え込む夜は室内の明るい窓辺に取り込みます。窓ガラスのすぐそばは夜に室温より冷えるので、夜だけ部屋の内側へ寄せると安心です。

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縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

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