選び方

オベサの実生株と輸入株の違い|根の状態と育てやすさ、見た目と値段の差

木の縁側に並んだ素焼き鉢のオベサ2鉢。左は縞のはっきりした小さな球、右は肌に古い跡の残る大きな球
AIで生成したイメージです
この記事の結論

実生株と輸入株のいちばん大きな違いは、根が付いたまま手元に来るかどうかです。国内で種から育てられた実生株は鉢の中で根が張っていて、迎えたその日から普通の管理が始まります。輸入株は検疫の決まりで土を落として運ばれるため、まず根を出させる工程が挟まります。なお、オベサの輸入株は野生採取の株ではなく、海外で種から育てられた株であることがほとんどです。

売り場で「実生」「輸入株」と書かれた札を見て、値段も姿も違う2つのどちらを選べばいいのか迷う場面があります。この2つを分けているのは、育てられた場所と、根が付いたまま手元に来るかどうかの2点です。ここが分かると、値段の差も、迎えたあとの手間の差も同じ筋道で説明がつきます。選び方全体の流れはオベサの選び方にまとめています。

それぞれの札が指しているもの

まず言葉の中身をそろえます。

  • 実生株(みしょうかぶ):種をまいて育てられた株です。国内の生産者や愛好家が育てたものが売り場に並びます。発芽してからずっと同じ鉢の中にいるので、根は最初から土をつかんでいます。
  • 輸入株:海外で育てられ、日本に運ばれてきた株です。根に付いた土は検疫の決まりで持ち込めないため、土を洗い落とした状態(ベアルート)で運ばれます。輸入のときに根も短く切り詰められることが多く、手元に届いた時点では根がほとんどありません。
  • 現地球:原産地の自生地で育った株を指す言葉です。輸入株とよく同じ意味で使われますが、オベサでは事情が違います(次の節)。
比べるところ実生株(国内で種から)輸入株(海外から届いた株)
根の状態鉢の中で張っている切り詰められている・発根の工程が要る
迎えた日から普通の水やりで始められる根が出るまで専用の管理
環境への馴染み日本の気候で育っている光と湿度に慣らす期間が要る
姿締まった稜と縞が出やすい大きさのわりに古い跡が残ることも
値段大きさなりの値段輸送と手間のぶん上がりやすい

分かれ道は表の1行目です。ここから下の違いは、ほとんどが根の状態から派生しています。

オベサでは、輸入株が野生の株とはかぎらない

塊根植物の世界では「現地球=自生地で何十年もかけて育った株」「実生株=人が種から育てた株」という対比がよく使われます。パキポディウムやアデニウムではこの対比がそのまま当てはまりますが、オベサをこの枠で読むと判断を誤ります。

オベサは南アフリカのグレートカルーだけに自生する植物で、かつて収集と輸出のための採取が続いた結果、自生地の個体が激減した経緯があります。そのためオベサを含む多肉性のユーフォルビアはワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載され、野生株の国際取引には書類が必要になりました。一方で、人の手で殖やされた株の種子は条約の対象から外れているため、園芸の世界では種から殖やす流れが定着しました。いま栽培されているオベサの数は、自生地に残る数をはるかに上回ります。

つまり、売り場に並ぶ「輸入株」のほとんどは、海外の生産者が種から育てた株が、ベアルートの状態で日本に届いたものです。実生か否かではなく、どこで育ち、どうやって運ばれてきたかが違います。野生採取の株を前提にした「現地球でしか出ない造形」という説明は、オベサにはそのまま当てはまりません。

この違いは、迎えるときの心づもりにも効きます。発根管理が要るのは同じでも、相手は温室で管理されて育った株です。自生地の厳しい環境で締まった株を日本に慣らす作業ではなく、海外の栽培環境から自分の家の環境へ移し替える作業だと考えると、光の慣らし方も水の戻し方も見通しが立ちます。

根が付いているかどうかで、最初の数か月が変わる

実生株を迎えた場合、その日から始まるのは普通の管理です。土の乾き具合を見て水をやり、光に少しずつ慣らす。それだけで、季節が巡っていきます(オベサの水やり)。

輸入株の場合は、ここに発根管理というひとつ前の工程が挟まります。根がない株は水を吸えないので、球体にためた水だけで新しい根を出しきらなければなりません。順番はおおよそ次のとおりです。

  • 切り口を乾かす:切り詰められた根の断面が湿ったままだと、そこから傷みが入ります。風通しのよい日陰で数日おいて、断面が乾いて締まるのを待ちます。
  • 乾いた用土に浅く置く:軽石など粒の粗い用土に、球の下だけが触れる高さで据えます。深く埋めると株元が蒸れます。
  • 明るい日陰で、水は控えめに:直射には当てず、用土の表面がうっすら湿る程度を間隔をあけて与えます。この時期の「たっぷり」は、吸える根がないぶんそのまま鉢に残ります。
  • 動いたかどうかを確かめる:数週間から数か月かけて、軽く揺すってもぐらつかなくなれば根が土をつかんでいます。球の張りが戻ってくるのも目安になります。

浅い鉢の軽石に据えて発根を待つオベサ。傍らに霧吹きと竹串 根を切り詰められた株は、粒の粗い用土に浅く据えて根が出るのを待ちます。(AIで生成したイメージです)

この工程のあいだは、球にしわが寄ります。水切れのしわなのか、傷みが入ったしわなのかは触り心地で切り分けます。硬いままなら待てる状態、押して柔らかくなっていれば内側が傷んでいます(オベサの根腐れ)。数か月かけても根が出ず、そのまま失われることもあります。輸入株の値段には、この歩留まりの分も含まれています。

発根済みとして売られている株は、この工程を売り手が済ませたものです。確かめ方はひとつで、鉢を押さえて球を軽く揺すり、球と土がひとかたまりで動くかどうか。球だけが動くなら、まだ根が土をつかんでいません。通販で実物を触れない場合は、発根からどのくらい経っているかを聞くと判断がつきます。

見た目の差は、どこから来ているか

同じ直径のオベサでも、育った場所が違えば姿が違います。ただしその差は品種の差ではなく、光・風・水の与えられ方の差です。

  • 稜と縞:強い光をしっかり受けて育った株は、稜が深く立ち、横縞が濃く浮きます。光の弱い環境で育つと稜が浅くのっぺりし、色も薄くなります(オベサの徒長)。実生か輸入かではなく、育った場所の明るさで決まる部分です。
  • 古い跡:オベサの表皮は一度傷つくと元には戻らず、茶色いコルク状の跡として残ります。輸送の距離が長いぶん、輸入株には擦れや日焼けの跡が付いていることがあります。乾いていて、ふちがはっきりしていれば見た目だけの問題です。
  • 球の形:若いうちは球形で、年を重ねると幅を保ったまま縦に伸びて円柱に近づきます。大きな輸入株が縦長に見えるのは、多くの場合この自然な変化です。
  • 子株の有無:オベサはあまり子株を吹きませんが、頂部を傷めた株が脇から子を出して群生になることがあります。これも個体の経歴であって、育ち方の区分とは別の話です。

縁側の板に並べた3つのオベサを真上から見た様子。稜の数と縞の濃さがそれぞれ違う 同じ大きさでも、稜の数も縞の濃さも1株ずつ違います。(AIで生成したイメージです)

「輸入株のほうが渋い顔をしている」と感じる場面の多くは、年数のぶん大きく、跡が残り、色が締まっていることの合計です。同じ年数を国内で育てた実生株にも、同じだけの時間が積もります。

値段の差は何でついているか

オベサの値段を分けている要素は、実生か輸入かという区分そのものではありません。効いているのは次の4つです。

  • 大きさ(=育った年数):いちばん大きく効きます。オベサは1年に直径1cm前後というゆっくりした速さで育つので、大きさはそのまま待った時間です。
  • 根が出ているか:同じ株でも、発根前と発根後では値段が変わります。発根済みの価格には、売り手が数か月かけて根を出させた手間と、途中で失われた株の分が含まれます。
  • 運ばれてきた距離:輸入には輸送費と検疫の手続きが伴います。同じ大きさなら、輸入株のほうが上に振れやすい理由です。
  • 姿の珍しさ、雌雄が分かっているか:稜の数や縞の出方、群生しているかどうか。オベサは雌雄異株で花が咲くまで雌雄が分からないため、種を採りたい人には開花サイズの株に価値が出ます。

言い換えると、輸入株が高いのは希少だからというより、大きく育っていて、運ばれてきて、根を出させる手間がかかっているからです。同じ予算なら、実生株のほうが一回り大きいものを選べる場面が多くなります。相場そのものの目安はオベサの選び方にまとめています。

種から育てる側の話実生株がどうやってできるのか、種まきの時期から発芽までの管理まで。1年目の付き合い方をまとめています。
オベサの実生を見る →

どちらを選ぶか|迷ったときの順序

判断は、次の3つを順に見ると決まります。

  1. 発根管理をする時間と置き場所があるか。数か月のあいだ、明るい日陰で水を控えめに保てる場所が要ります。用意できないなら、実生株か発根済みの株から選びます。
  2. その株を失っても納得できるか。発根前の輸入株は、根が出ないまま終わることがあります。ここに納得がいかないなら、根のある株を選ぶほうが穏やかです。
  3. その顔が好きか。1と2を通ったうえで、稜の並びや縞の濃さで選びます。

はじめの1鉢なら、国内で育てられた実生株が扱いやすい選択です。根があるので水やりの練習がそのまま普通の管理になり、置き場所の癖も1年かけて確かめられます。オベサの管理に慣れて、球の張りの読み方が身についたころに、発根前の輸入株を迎えると落ち着いて向き合えます。

反対に、すでに塊根植物で発根管理の経験がある方なら、最初から輸入株でも構いません。ユーフォルビアは切り口から白い樹液を出すので、扱うときは手袋をつけます(ユーフォルビアの育て方)。

どちらを選んだ場合も、落ち着いてからの植え替えで球の肩が土の上に出る高さに植え直しておくと、そのあとの管理がずっと楽になります(オベサの植え替え)。

縁側では、オベサと鉄甲丸の交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)の個体を、1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

実生株と輸入株は、見ただけで区別できますか?

確実には分かりません。鉢に植わって根が張った状態まで来ると、育った場所の違いは姿にほとんど残らないためです。判断の材料になるのは、売り手の表記と、鉢から抜いたときの根の様子です。実生株は細い根が鉢の形に沿って広がり、輸入株は一度切り詰められた太い根の断面から新しい根が出ている形になります。売り場では、実生かどうかと、いつ植え付けたかを聞くのがいちばん早い方法です。

輸入株のほうが丈夫だと聞いたのですが、本当ですか?

オベサではそうとはかぎりません。輸入株の多くは海外の温室で種から育てられた株なので、生い立ちの厳しさという意味では国内の実生株と大きく変わらないためです。むしろ根を切られて運ばれてきたぶん、迎えた直後は体力を消耗しています。丈夫さを分けるのは育ち方の区分ではなく、根がしっかり張っているかどうかと、光に慣れているかどうかです。

発根管理にはどのくらいの期間がかかりますか?

季節と株の状態で幅がありますが、数週間で動きだすこともあれば、数か月かかることもあります。始める時期は、株が動いている春か秋が向いています。真夏と冬に始めると、株が動いていないぶん待つ時間が長くなり、そのあいだに体力を使い切ってしまうことがあります。輸入株を秋の終わりに迎えた場合は、無理に根を出させようとせず、明るく暖かい場所で春を待つ選び方もあります。

オベサは野生の株を買うことができますか?

一般の売り場に並ぶことはまずありません。オベサは自生地での採取が続いた結果、多肉性のユーフォルビアとしてワシントン条約の附属書IIに掲載されており、野生株の国際取引には書類が要ります。いま流通しているものは、国内外を問わずほぼすべて人の手で種から育てられた株です。「現地球」という言葉を見かけた場合も、オベサでは野生採取の意味ではなく、海外から届いた株を指して使われていることがほとんどです。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。