育て方

パキポディウムの育て方|月別の水やり・置き場所・冬越しと種類ごとの違い

縁側に置いた素焼き鉢のパキポディウム。丸く膨らんだ銀灰色の幹から細い枝が伸び、棘の並ぶ枝先に細長い葉が広がっている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

パキポディウムは、ほとんどの種類が春から秋に葉を広げて育ち、冬に葉を落として休む夏型です。水やりは暦ではなく葉の出入りで切り替え、葉があるあいだは乾いてからたっぷり、落葉したらほぼ断水。冬は最低10℃を目安に室内へ入れます。分かれるのは「夏の暑さにどれだけ強いか」と「冬にどこまで葉を落とすか」で、ここが種類ごとの差になります。月ごとの手入れは、記事冒頭の早見表で一覧できます。

パキポディウム(Pachypodium)は、銀灰色の太い幹に棘を並べ、その先に細い枝と葉を伸ばす塊根植物です。育て方の情報は多いのですが、「パキポディウム全般の話」と「グラキリス1種の話」が混ざっていることが多く、手元の株にどちらが当てはまるのか迷いやすい植物でもあります。この記事では、まず一年の管理を早見表で見渡し、種類による違いの地図を描いてから、置き場所、水やり、冬越し、植え替え、剪定と増やし方、そして未発根の輸入株を迎えたときの扱いまでを順にまとめます。塊根植物というくくり全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。

基本データと、一年の管理早見表

育て方の前に、押さえておきたい性質を並べます。

  • 分類:キョウチクトウ科パキポディウム属
  • 原産地:マダガスカル、南部アフリカ
  • 生育の型:ほとんどが夏型(春〜秋に育ち、冬に落葉して休む)。光堂(ナマクアナム)だけは冬型
  • 寒さの目安:最低10℃。落葉させて乾かしていれば5℃前後までしのぐ株もある
  • 好む環境:強い日差し、風通し、乾きやすい土
  • 成長の速さ:ゆっくり。幹が目に見えて太るには数年かかる

夏型の種類を関東の平地で育てる場合、一年の管理はおおよそ次の表のようになります。地域や置き場所で前後するので、月は目安として、実際には葉の出入りと最低気温で切り替えます。

時期株の様子置き場所水やり手入れ
3月休眠の終わり室内の明るい窓辺ほぼ断水芽の動きを見る
4〜5月新芽が動く最低15℃超で屋外へ慣らす少量から再開植え替え
6月葉が茂る・梅雨雨の当たらない軒下乾いたらたっぷり植え替え・剪定
7〜8月いちばん育つ日向・風通し乾いたらたっぷり剪定・種まき・液肥
9月育ち続ける日向乾いたらたっぷり液肥は月末まで
10〜11月葉が黄ばむ最低15℃を切ったら室内2〜3週に1回へ肥料をやめる
12〜2月落葉して休む10℃以上の明るい室内ほぼ断水窓際の冷え対策

恵比寿笑いは真夏に動きが鈍るので、7〜8月は半日陰で水を控えめにします。冬型の光堂は、この表の季節がほぼ逆になります。それぞれの理由は、この先の節で順に見ていきます。

パキポディウムとは|よく出会う3種と、種類の広がり

木の縁側に並ぶ3つの素焼き鉢。左は丸く膨らんだ銀灰色の幹のグラキリス、中央は棘の並ぶ柱状の幹の頂に葉を広げるラメリー、右は平たく横に広がる幹から短い枝を出す恵比寿笑い 同じ属でも、幹の形はここまで違います。左から球状・柱状・平たく横に広がるタイプ。(AIで生成したイメージです)

パキポディウムはキョウチクトウ科パキポディウム属の植物で、マダガスカルと南部アフリカの、雨季と乾季がはっきり分かれた乾いた土地に自生します。属名は「太い(pachy)足(podium)」の意味で、そのまま姿を指した名前です。雨の降る季節に葉を広げて一気に育ち、乾季には葉を落として幹に蓄えた水でしのぐ。鉢のなかでも、この繰り返しは変わりません。

国内の売り場でよく出会うのは、次の3種です。

  • グラキリス(Pachypodium rosulatum var. gracilius):ずんぐりと丸い幹から短い枝を出す、いちばん人気のある姿。マダガスカルの高原地帯の出身です。この1種にしぼった水やりと落葉の見方はグラキリスの育て方にまとめています。
  • ラメリー(P. lamerei):「マダガスカルパーム」の名でも流通します。幹が縦に伸びて樹木のような姿になり、育てやすく、大きめの株も手に入ります。
  • 恵比寿笑い(ブレビカウレ、P. brevicaule):幹が平たく横に広がり、岩の塊のような姿になります。マダガスカルの標高1400〜2000mほどの岩山に自生する高山性で、他の2種とは夏の扱いが違います。

このほか、白馬城(サウンデルシー)や光堂(ナマクアナム)なども流通します。どれも「太い幹+棘+細い枝葉」という共通の姿を持ちますが、後で見るように、育てるうえで効いてくる違いがいくつかあります。

夏型と冬型|分かれるのは「夏の強さ」と「落葉の深さ」

「パキポディウムは夏型か冬型か」で迷う方が多いのですが、流通しているもののほとんどは夏型です。マダガスカルも南部アフリカの多くの地域も、夏に雨が降るためです。例外として覚えておきたいのが**光堂(ナマクアナム)**で、こちらは南アフリカ西部の、冬に雨の降る地域の出身です。日本でも秋から春に動き、夏に休むという逆のリズムになります。

つまり、種類による分岐は「夏型か冬型か」よりも、同じ夏型のなかで、夏の暑さにどれだけ強いか/冬にどこまで葉を落とすかにあります。ここが管理の差になります。

種類原産地生育期夏の暑さ冬の落葉
グラキリスマダガスカル高原春〜秋強いが蒸れは苦手ほぼ完全に落とす
ラメリーマダガスカル南西部春〜秋強い暖かい室内なら残ることも
恵比寿笑い(ブレビカウレ)マダガスカル高地の岩山春〜秋蒸れに弱く夏に動きが鈍るほぼ完全に落とす
白馬城(サウンデルシー)南部アフリカ春〜秋強いほぼ完全に落とす
光堂(ナマクアナム)南アフリカ西部秋〜春休眠。夏は日陰で乾かす冬が生育期。葉を出す

表の右2列が、実際の手つきを変えるところです。恵比寿笑いは高山性で、真夏の蒸し暑さのなかでは成長が鈍ります。他の種類と同じ調子で水を与えると、動いていない株の鉢が湿ったままになります。反対にラメリーは丈夫で、冬に15℃以上を保てる部屋なら葉を残したまま育ち続けることがあります。その場合は、落葉を待たずに水を少しずつ与え続けます。

ラベルに種名が書かれていないときは、買った季節に葉が茂っているかが手がかりになります。葉を広げて元気に見える季節が、その株の生育期です。冬に芽を出している株を見かけたら、光堂のような冬型の可能性があります。夏型・冬型という考え方そのものは、亀甲竜の育て方で冬型の側から見ると、いっそう分かりやすくなります。

置き場所と光、そして棘|姿が締まるかはここで決まる

パキポディウムでいちばん確保したいのは光です。自生地は日差しの強い乾燥地で、光が足りないと枝だけが細く長く伸び、幹の丸みとのつり合いが崩れます。

  • 春〜秋:屋外の、一日を通していちばん日の当たる場所。雨の当たらない軒下が理想です。室内から出したばかりの株は、半日陰から1〜2週間かけて慣らします。いきなり真夏の直射に出すと、数日で幹の表皮が白く抜けたり、茶色い跡が残ったりします。
  • 梅雨と秋の長雨:光より水のほうが問題になります。長雨に当て続けると土が乾かず、根が傷みます。軒下の奥へ寄せるか、室内に移します。
  • 真夏:グラキリスやラメリーは直射に耐えますが、風の通らない場所での蒸れには弱い。サーキュレーターや棚の高さで空気を動かします。恵比寿笑いは、午後に日陰になる場所か30%ほどの遮光へ。
  • 冬:室内のいちばん明るい窓辺。葉を落としていても、幹は光を受けています。

棘は、扱い方と成長の目盛りを兼ねる

パキポディウムの棘は、節ごとに2〜3本ずつ、幹と枝に並びます。新しく伸びた部分の棘はやわらかく、時間が経つほど硬く鋭くなります。植え替えや移動のときは厚手の手袋をつけるか、新聞紙をひと巻きして持つと扱いやすくなります。トゲは深く刺さるので、素手で株を抱えないほうが安全です。

この棘は、株の調子を測る目盛りにもなります。棘と棘の間隔が広く空いて、その部分だけ幹が細いなら、そこが伸びた時期に光が足りていません。逆に、間隔が詰まって幹が太いまま伸びていれば、条件が合っている証拠です。一度間延びした部分は元に戻りませんが、明るい場所に移せば、その先からは詰まって育ちます。光の足りない環境での間延びの見分け方は、オベサが徒長したときの見方でも扱っています。

水やり|葉の出入りが切り替えの合図

パキポディウムの水やりは、カレンダーではなく葉の状態で切り替えます。葉があるあいだは水を使っていて、葉がないあいだはほとんど使っていない。この単純な対応を外さないことが、管理のほとんどを占めます。

  1. 新芽が動き出したら(4〜5月):休眠明けは少量から。土の表面が湿る程度を10日に1回ほどで始め、葉が開くにつれて量と回数を増やします。まだ動いていない根にいきなりたっぷり与えると、そこから傷みます。
  2. 葉が茂っているとき(6〜9月):土が中まで乾いてから、鉢底から流れ出るまでたっぷり。屋外の晴天が続けば3〜5日に1回になることもあります。受け皿にたまった水は捨てます。この時期の乾湿のメリハリが、そのまま幹の太りになります。
  3. 葉が黄ばみ始めたら(10〜11月):休眠に向かう合図。間隔を2〜3週間に伸ばしていきます。気温が下がった土は乾くまでに時間がかかるので、夏と同じ調子で与え続けると根が傷みます。
  4. 落葉したら(12〜3月):ほぼ断水。詳しくは次の節でまとめます。

乾いたかどうかは、竹串を鉢土に挿して抜いたときの湿り気か、鉢を持ち上げたときの軽さで確かめられます。同じ「3日に1回」でも、鉢の材質・大きさ・用土・置き場所で乾く速さは倍ほど違うので、暦ではなく鉢の中の状態で決めるほうが確かです。確かめ方の詳しい手順はオベサの水やりにまとめてあります。

迷ったときは、待つほうが安全です。パキポディウムが水切れで枯れることはめったになく、幹が少し痩せてしわが寄る程度で、水を戻せば張りも戻ります。

冬越し|10℃を目安に、落葉させて休ませる

寒さには弱い部類で、最低温度の目安は**10℃**です。葉を落として乾かした状態なら5℃前後までしのぐ株もありますが、霜と凍結には耐えられません。夜の最低気温が15℃を切りはじめる10月ごろに室内へ入れると、落葉の時期と取り込みの時期がそろって管理が楽になります。

  • 10〜15℃を保てる部屋:落葉させて断水し、幹だけで春を待ちます。日本の一般的な室内ではこれが現実的で、水を切っておくほうが低温にも強くなります。
  • 15℃以上を保てる部屋:ラメリーのように葉を残す株なら、月に1回ほど、暖かい日の午前中に表面が湿る程度を与えて細い根を保ちます。ただし明るさが要り、光が足りないまま葉を残すと枝が間延びします。
  • 小さな実生苗:体積が小さく、完全に乾かしきると細い根が枯れてしまいます。成株より少なめ・こまめに、月1回ほどの少量を続けます。

どちらの場合も、窓ガラスのすぐそばは夜間に外気並みまで冷えます。夜だけ窓から離すか、カーテンの内側に置くと安定します。暖房の温風が直接当たる場所も、乾燥と急な温度差で傷むので避けます。

冬のあいだに幹が少し痩せ、浅いしわが寄るのは正常な範囲です。幹を軽く押して硬ければ、そのまま春を待って問題ありません。春に外へ戻すのは、最低気温が安定して15℃を超えてから。新芽が動き出してから水を戻す、という順番を守ると立ち上がりがそろいます。

反対のリズムで育つ塊根植物も秋に芽を出して冬に葉を茂らせ、初夏に休む。冬型の亀甲竜を見ると、夏型・冬型の考え方が立体的になります。
亀甲竜の育て方を見る →

用土と植え替え|春から初夏に、浅く植える

手を入れるのは、株がよく動いている暖かい時期に限られます。植え替えの適期は4〜6月。休眠中や秋の終わりには行いません。

用土は水はけを最優先にします。市販の多肉植物・サボテン用の土に軽石を足すだけでも十分育ちます。自分で配合するなら、軽石(または日向土)を半分ほど、赤玉土の小粒を3割、残りを鹿沼土や燻炭にして、腐葉土やピートはごく少量にとどめます。鉢は素焼きやスリット鉢のように通気のよいもので、株に対して大きすぎないサイズを選びます。大きな鉢は土が乾くまでに時間がかかり、それが冬の低温期に効いてきます。配合の考え方は塊根植物の用土配合にもまとめました。

間隔は2年に1回ほどが目安になります。毎年入れ替える必要はなく、次のような様子が出てきたときが、根が鉢に回った合図です。

  • 鉢底の穴から根が見えている、または鉢の縁に沿って根が回っている。
  • 水を与えても染み込みにくく、表面にたまってから下りていく。
  • 生育期なのに水の減りが鈍く、葉の数も増えない。

合図が出ていたら、次の順に進めます。

  1. 数日前から水を止め、土を乾かしておく。
  2. 厚手の手袋をつけて株を抜き、古い土を落とす。黒く傷んだ根と、干からびて中身のない根だけを切る。
  3. 根を切った場合は、切り口を2〜3日、風通しのよい日陰で乾かす。
  4. 乾いた新しい用土に浅めに植える。幹の膨らみの下端が土の上に少し出るくらいにしておくと、年々その部分が太り、幹と根が続く姿になっていきます。
  5. 植え付け後1週間ほどは水を与えず、その後、少量から通常の水やりに戻します。

素焼き鉢に浅く植えたパキポディウム。膨らんだ幹の下端が土の上に出ている 幹の膨らみの下端を土の上に出して浅く植えると、年ごとにその部分が太っていきます。(AIで生成したイメージです)

肥料は生育期だけ。植え替えのときに緩効性肥料をひとつまみ混ぜるか、5〜9月に薄めた液体肥料を月1〜2回ほど与えます。与えすぎると枝ばかりが伸びて幹とのつり合いが崩れるので、「足りないかな」と思う程度が適量です。落葉期には与えません。

切ったところからは白い乳液が出ます。キョウチクトウ科の植物で、この乳液は口に入れると害になります。作業のときは手袋をつけ、終わったら手を洗い、切った枝はその場で片づける。鉢は、かじる習性のある動物や小さな子どもの手が届かない高さに置いておきます。同じ白い樹液でも、ユーフォルビアのほうは皮膚や目への刺激が主な注意点で、性質が少し違います。

枝を切る・仕立てる|生育期に切って、切り口を乾かす

パキポディウムは放っておいても枝が乱れにくい植物ですが、枝が長く伸びて幹とのつり合いが崩れたときや、枝数を増やしたいときには切ることができます。手を入れるのは株がよく動いている5〜8月。休眠に向かう時期に切ると、切り口が乾かないまま長く残ります。

  • 切る位置:残したい長さのところで、清潔な刃物を使って一度で切ります。しばらくすると切り口の下の節から新しい枝が2〜3本出て、枝数が増えます。
  • 切り口の扱い:白い乳液が出てくるので、乾いた布で軽く押さえて止め、そのまま数日乾かします。癒合剤は必須ではありません。前の節と同じく、乳液に触れないよう手袋をつけて作業します。
  • 頭を止めるかどうか:幹のいちばん上の芽を落とすと、そこから上へは伸びなくなり、代わりに下から枝が出ます。ラメリーのように縦に伸びる種類では、この一手が姿をそのまま決めます。
  • 枯れた葉と花がら:そのままにすると湿気がこもるので、気づいたときに取り除きます。

切ったあとしばらくは、傷口から水が入らないよう水やりを控えめにします。切り落とした枝は、そのまま捨てずに挿して根を出させることもできます。

花を咲かせる|株が育ってから、春から初夏に

パキポディウムの花は、幹や枝の姿とは対照的にやわらかな印象です。キョウチクトウ科らしい5枚の花びらが風車のように開き、種類によって色が分かれます。

種類花の色咲く時期の目安
グラキリス黄色春、葉が出るころ
恵比寿笑い淡い黄色春
ラメリー白初夏〜夏
白馬城白〜淡い桃色春〜初夏

花が咲くには、株がある程度の大きさまで育っていることが前提になります。小さな実生苗はまず幹と根を育てる時期で、咲かないのが普通です。ラメリーのように縦に伸びる種類は、背丈のある株になってから花を付けます。

咲く株に育てるうえで効いてくるのは、次の3つです。

  • 生育期に光を十分に当てる:つぼみの元になる蓄えは、春から秋に葉がつくります。
  • 冬にきちんと休ませる:落葉と断水で休眠を通すと、春の芽吹きと花の上がりがそろいます。冬に暖かい部屋で水を続けると、花より枝葉が先に動きがちです。
  • つぼみが見えたら動かさない:急な置き場所の変化や水切れで、つぼみが開かずに落ちることがあります。

咲き終わった花がらは湿気がこもる前に取り除きます。種を採りたい場合は、同じ種類の別の株と受粉させる必要があります(次の節)。種類ごとの花の色と時期、咲くまでの株の大きさはパキポディウムの花にまとめています。

増やし方|種からと、枝を挿す方法

増やす方法は**種まき(実生)**が基本です。枝を挿して根を出させる方法もありますが、挿し木でできた株は地際が丸く膨らみにくく、太った幹を楽しみたい場合は種からのほうが素直です。

  • まく時期:気温が安定して25℃前後まで上がる5〜8月。
  • まき方:清潔で細かめの用土の表面に種を置き、ごく薄く覆土します。腰水(底面給水)で湿らせ、明るい日陰に置くと、数日から2週間ほどで発芽します。
  • 発芽したあと:小さいうちから明るい場所に慣らします。1年目は体積が小さく、完全に乾かしきると細い根が枯れてしまうので、成株より少なめ・こまめな水やりを続けます。
  • 種を自分で採る:1株だけでは実りにくい種類が多く、同じ種の別の株どうしで受粉させる必要があります。

実生から育てた株は最初から鉢のなかで根が働いているので、輸入株のような発根の工程が要りません。ゆっくりではありますが、幹が太っていく過程をまるごと見られるのは種からならではです。種まきの段取りや腰水の外し方は球形ユーフォルビアのオベサを例に実生・種まきへ、花を咲かせて種を採るところは受粉のしかたにまとめました。まく時期と発芽までの日数は違っても、手順の組み立ては重なります。

挿し木を選ぶのは、剪定で切った枝を捨てずに使いたいときや、ラメリーのように枝が出やすい種類を増やしたいときです。切り口を数日から1週間ほどしっかり乾かし、乾いた用土に浅く挿して、暖かく明るい場所で動き出すのを待ちます。この手順は未発根の株を発根させるときとほとんど同じです。

発根済みの株と未発根の輸入株|最初の1年が別物

パキポディウムの育て方でいちばん結果を分けるのは、日々の水やりよりも手元の株に根が張っているかどうかです。ここを確かめずに一般的な育て方をなぞると、うまくいかない理由が最後まで見えません。

発根済みの株は、鉢のなかで根が働いている状態です。実生株(種から育てられた株)や、輸入後に根を出させてから売られた株がこれにあたります。この記事のここまでの内容は、すべてこの状態を前提にしています。

未発根の輸入株(現地球・ベアルート株)は、原産地で育った株を根を切って輸入したもので、迎えたあとに根を出させる工程が要ります。造形の見応えが魅力ですが、この工程でつまずくと、立派な株がそのまま傷みます。

根があるかどうかの確かめ方

  • 鉢を軽く傾けて、株を指で押してみる。ぐらつかず、鉢に固定されているように感じれば根が張っています。ぐらぐら動くなら、まだ根が働いていない可能性があります。
  • 店で聞く。「発根済みですか」は珍しい質問ではありません。信頼できる売り場なら、発根の有無と、いつ発根したかを教えてくれます。
  • 葉が出ていることを根拠にしない。パキポディウムは幹に水を蓄えているので、根がなくても幹の蓄えだけで葉を出すことがあります。「葉が動いたから発根した」と判断して通常の水やりに切り替えると、吸えない水が鉢に残ります。

未発根の株を迎えたとき

発根させる手順には愛好家ごとの流儀があり、ひとつの正解はありません。共通して言われているのは、次の4点です。

  • 傷んだ切り口を整えて乾かす。黒ずんだ部分や柔らかい部分を清潔な刃物で健全なところまで削り、切り口を数日乾かしてから植えます。
  • 暖かさを確保する。根が動くには気温が要ります。春から初夏にかけて始めるのがいちばん素直で、寒い時期に始めると長く止まったままになります。
  • 清潔で乾きやすい用土に、浅く固定する。株が動くと出はじめた根が切れるので、支柱や鉢の縁で固定しておきます。
  • 光と風を当てる。暗い場所で乾かして待つのではなく、明るく風の通る場所に置きます。

発根までにかかる時間は数週間から数か月と幅があり、そのあいだ幹がしぼんでいくのは正常の範囲です。押して硬さが残っているうちは待てます。指が沈むほど柔らかくなったら、そこは傷みが進んでいます。根が張った合図は、株を指で軽く押してもぐらつかなくなること。ここまで来てはじめて、通常の水やりに移ります。

はじめの一鉢としては、発根済みの株を選ぶのが確実です。しっかり根の張った株で一年のリズムを一度通してから未発根の株に手を伸ばすと、その頃には水と光と温度の加減が体に入っています。実生株と現地球は値段の付き方も育ち方も別物です。オベサを例にした実生株と輸入株の違いは、選ぶときの考え方がそのまま重なります。塊根植物というくくり全体での位置づけは塊根植物・コーデックス入門でも扱っています。

つまずきやすいところ

パキポディウムを傷めるきっかけは、だいたい決まっています。どれも「幹を押してみる」ことから切り分けが始まります。

  • 幹が柔らかい、押すとへこむ、株元が黒ずむ:根腐れです。低温と過湿が重なったときに起きます。すぐに水を止めて鉢から抜き、傷んだ根と柔らかい部分を清潔な刃物で硬い組織が出るまで切り、切り口をよく乾かしてから乾いた用土に植え直します。柔らかさが幹の大半に及んでいると立て直しは難しくなります。
  • 幹が硬いのに、しわが寄っている:水分が減っているだけです。生育期なら水を与えれば戻り、休眠中や発根待ちなら正常の範囲です。
  • 秋から冬に、下の葉から黄ばんで落ちる:正常な休眠入りです。枯れかけと読み違えて水を足すのが、いちばん多い失敗です。
  • 真夏に急に葉が落ちる:高温と蒸れで動きが止まっているときに起きます。とくに恵比寿笑いで見かけます。風の通る涼しい場所に移し、水を控えて秋を待ちます。
  • 枝が細長く伸び、棘の間隔が空いてくる:光不足です。明るい場所に移せば、その先からは締まって育ちます。
  • 葉が白っぽくかすれる、葉裏に細かい点:ハダニ。乾いた高温で増えるので、葉裏にも水をかけ、風通しを確保します。
  • 枝の分かれ目や棘のすき間に白い綿のような塊、葉や幹のべたつき:カイガラムシです。風の通らない場所で増えます。数が少なければ古い歯ブラシでこすり落とし、広がっていれば薬剤を使います。新芽や蕾に群れる小さな虫はアブラムシで、花の上がる時期に出やすくなります。
  • 土の表面から小さな虫が飛ぶ:キノコバエの仲間で、有機質の多い土が湿ったままのときに出ます。表面を軽石や硬質赤玉土で覆い、乾く時間をつくると落ち着きます。

成長はゆっくりで、幹が目に見えて太るには何年もかかります。数センチの差が何年分にもあたるので、一年ごとの変化を写真で残しておくと、その遅さが楽しみに変わります。

縁側では、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に扱っています。個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。棘や幹の姿の違いはユーフォルビアの種類、同じキョウチクトウ科で花も楽しめるアデニウムの育て方、葉の出入りで水を切り替える鉄甲丸の育て方でも紹介しています。

よくある質問

パキポディウムは夏型ですか、冬型ですか?

流通しているもののほとんどは夏型で、春から秋に葉を広げて育ち、冬に落葉して休みます。グラキリス、ラメリー、恵比寿笑い、白馬城はいずれも夏型です。例外は南アフリカ西部が原産の光堂(ナマクアナム)で、こちらは秋から春に動く冬型です。種名が分からないときは、買ったときに葉が茂っていた季節がその株の生育期だと考えると、大きく外しません。

冬に葉が全部落ちました。枯れたのでしょうか?

気温が下がる時期に葉が黄ばんで落ちたのなら、正常な休眠です。幹を軽く押して硬く、株元に黒ずみがなければ生きています。水を止めて明るい室内で10℃以上を保ち、春に最低気温が15℃を超えて新芽が動いてから、少量ずつ水を戻します。幹が柔らかい、押すとへこむ場合だけ、根腐れを疑って鉢から抜いて根を確かめます。

葉が出てきたので、発根したと考えていいですか?

葉が出たことは、根が張った証拠にはなりません。パキポディウムは幹に水を蓄えているので、根がない状態でも蓄えを使って葉を出すことがあります。確かめ方は、株を指で軽く押してぐらつかないかどうか。鉢のなかで固定されているように感じれば根が働いています。ぐらつくうちは、まだ発根待ちとして扱い、通常の水やりには移しません。

幹を太らせるには、どうすればよいですか?

幹が太るのは、光合成でつくったぶんを蓄えた結果です。近道はなく、生育期にしっかり日に当て、土が乾いてからたっぷり水を与え、薄い肥料を回す。この積み重ねがそのまま太さになります。逆に光が足りないまま水と肥料だけを増やすと、枝が伸びて幹とのつり合いが崩れます。成長はゆっくりで、目に見える変化には数年かかります。

パキポディウムは種から育てられますか?

育てられます。増やし方としては種まきがいちばん素直で、気温が25℃前後まで上がる5〜8月にまきます。清潔な用土の表面に種を置いてごく薄く覆土し、腰水で湿らせて明るい日陰に置くと、数日から2週間ほどで発芽します。発芽したあとは小さいうちから明るい場所に慣らし、1年目は完全に乾かしきらないよう少量の水を続けます。枝を挿して増やす方法もありますが、挿し木の株は地際が丸く膨らみにくいので、太った幹を楽しみたい場合は種からのほうが向いています。

室内だけで育てられますか?

育てられますが、いちばんの条件は光です。室内なら南向きなど一日を通して明るい窓辺に置き、それでも足りない場合は植物育成用のライトで補う方法がよく使われます。光が足りているかは、棘と棘の間隔で確かめられます。間隔が広がって枝が細く伸びてきたら光不足の合図です。風が動かない部屋では蒸れやすいので、生育期はサーキュレーターで空気を回し、春から秋だけでも屋外の軒下に出せると育ちが締まります。

棘が刺さらないように、どう持てばよいですか?

厚手の手袋をつけるか、新聞紙を数枚ひと巻きして幹を包んで持ちます。軍手は棘が通るので、革や厚いゴムのものが確実です。植え替えのときは、幹を握るより、鉢ごと傾けて株の重みで抜くほうが安全です。棘は深く刺さるので、素手で株を抱えるのは避けます。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。