オベサの受粉|雄株と雌株の見分け、花粉の付け方、結実から採種までの手順

オベサは雌雄異株なので、種を採るには咲いている雄株と雌株の2つが要ります。作業そのものは難しくなく、雄花から筆や綿棒で黄色い花粉を取り、雌花の3つに分かれた柱頭になでるようにつけるだけ。うまくいけば3〜4日から1週間で柱頭の下がふくらみ、3つの部屋に分かれた果実になります。いちばんの山場は受粉ではなく、熟した果実が弾けて種を飛ばす前に覆いをかけるところです。
オベサの頭に小さな花が咲いて、そろそろ種を採ってみようと思ったところで止まる。オベサは雌雄異株で、片方の株だけでは種ができないからです。この記事では、雄株と雌株をそろえるところから、花粉の取り方と付け方、受粉できたかどうかの確かめ方、そして弾ける前に種を受け止めるところまでを、手を動かす順にまとめます。花そのものの咲き方や咲かない年の見方はオベサの花に、採れた種のまき方はオベサの実生にまとめています。
オベサの受粉に要るもの|咲いている2株と、細い筆が1本
はじめに押さえておきたいのは、オベサが雌雄異株だということです。雄花だけをつける株と、雌花だけをつける株が別々にあり、1株では自分の花粉で種を結ぶことができません。しかも咲くまで外見では見分けがつかないので、「種を採るために雌株を買う」という選び方もできません。花が咲いてはじめて、その株がどちらなのかが分かります。
そのため、種を採ることを見据えるなら、苗を数株そろえて育てるところから始めるのが結局いちばん近道になります。1株ずつ買い足していくと、数年かけて咲いた結果が全部同じ性別だった、ということが起こります。
咲き始める大きさは、直径3cmほどの小さな株からです。花は初夏から夏(おおむね5月から8月)が中心ですが、暖かい環境では季節を問わずぽつぽつ上がることもあります。球の頂部から新しい花が見えてから開くまでは数週間ほどで、頂部の花が順に開いていくので、株としては夏のあいだずっと「咲いている状態」が続きます。
道具は、園芸店で買いそろえるようなものはほとんど要りません。
| もの | 使いどころ |
|---|---|
| 細い筆、または綿棒 | 雄花の花粉を取り、雌花の柱頭につける |
| ピンセット | 雄花ごと外して直接当てる。熟した果実をつまむ |
| 茶こし袋・お茶パック・排水口ネット | 果実が弾ける前にかぶせて種を受け止める |
| ラベルと鉛筆 | どの花に、いつ、どの株の花粉を付けたかを残す |
筆は水彩用の細いもので十分です。花の直径が数ミリしかないので、穂先が広いと隣の花にまで触れてしまいます。ラベルは省きたくなるところですが、複数の組み合わせを試す年には、あとで「どの実がどの掛け合わせだったか」がまるごと分からなくなります。
雄花と雌花を見分ける|付けるタイミングも花に出る
真上から花を覗き込めば、雌雄はすぐに分かります。
- 雄株:花の中から、黄色い花粉をつけた小さな雄しべが房になって立ち上がります。咲き進むと花全体が黄色っぽく見え、そっと触れると指に黄色い粉が付きます。
- 雌株:花の中央から、先が3つに分かれた柱頭が突き出します。船のいかりのような、小さな三つ又のような形です。触れても花粉は付きません。
ひとつの株に咲く花は、すべて同じ性別です。頂部の花をひとつ確かめれば、その株の答えはそれで出ます。花のつくり(花びらを持たない杯状花序というかたち)そのものはユーフォルビアの花にまとめています。
見分けに加えて、受粉に向いている状態かどうかも花を見れば読めます。ここが分かると、成功する割合がはっきり変わります。
| 見るところ | 付けごろ | 早い・遅い |
|---|---|---|
| 雄花 | 雄しべが立ち上がり、黄色い粉を吹いて見える | 開いたばかりは粉が出ていない。色あせたものは粉が落ちきっている |
| 雌花 | 3本の先が左右に開き、表面がしっとりして粘る | 閉じたままは受け付けない。茶色く乾いたものは終わっている |
雌花の柱頭には粘りがあり、この粘りが出ているあいだは花粉がよく付きます。指で触れて確かめる必要はなく、3本の先が開いて、つやが乗って見えるかで判断がつきます。
受粉のやり方|花粉を取って、柱頭になでるようにつける
作業そのものは1分もかかりません。
1. 雄花から花粉を取る。 筆の穂先か綿棒の先で、雄しべの房をそっとなでます。穂先に黄色い粉が乗れば十分です。強くこすると花を潰してしまうので、表面を撫でる程度で足ります。
2. 雌花の柱頭につける。 3つに分かれた先に、同じようになでるようにして触れさせます。3本すべてに触れておくと、果実の3つの部屋がそろって実りやすくなります。粘りのある柱頭なので、軽く当てるだけで粉は移ります。
花粉の量が少ないときや、筆に乗っているか確信が持てないときは、雄花をピンセットで丸ごと外して、雌花の柱頭に直接当てるほうが確実です。花ごと持っていけば、穂先に付いたかどうかを気にせずに済みます。
**回数は、1回でも決まることがあります。**ただし雌花は数日にわたって開いているので、翌日・翌々日と2〜3回重ねておくと取りこぼしが減ります。作業しやすいのは、花粉が乾いている晴れた日の午前中です。雨の日や、上から水をかけた直後は花粉が湿って筆に乗りません。
いくつかの組み合わせを試す年は、株ごとに筆を分けるか、使うたびに穂先を拭きます。同じ筆を使い回すと、前に取った花粉が残って、どちらの花粉で実ったのか分からなくなります。
オベサの白い樹液は皮膚や目に触れると刺激があるので、花や肌を傷つけないよう、道具も指も軽く当てるだけにとどめます。作業のあとは手を洗ってから他の作業に移ると安心です。
咲く時期がずれたとき|待つ、取り置く、その年は見送る
実際に取りかかると、いちばん多いつまずきは「手順が分からない」ことではなく、雄株と雌株の花が同じ日に咲いていないことです。オベサの花は頂部から順に開くので、数日待てば重なることが多いのですが、株どうしで数週間ずれる年もあります。
対処は3つです。
1. 数日から1週間、待つ。 片方の株に次のつぼみが見えているなら、たいていはそれで足ります。オベサは夏のあいだ順に咲き続けるので、1シーズンのうちに何度か機会が来ます。咲いているほうの花はそのまま置いておけば、しばらくは待ってくれます。
2. 花粉を取り置く。 雄花をピンセットで外し、小さな容器やたたんだ紙に入れて、乾燥剤と一緒に冷蔵庫へ置く方法があります。新鮮な花粉ほど確実に付くので、これは何か月も保存する手段というより、数日から数週間の橋渡しとして使うものだと考えておくのが安全です。取り置いた花粉で実らなかったとしても、株に問題があるわけではありません。
3. 開花の時期を散らす。 鉢を置く場所の温度が違うと、咲き始めが数日から1週間ほどずれます。日当たりのよい棚と、半日だけ日の入る棚に分けて置いておくと、そのずれが重なりを生むことがあります。株数が増えるほど、どれかとどれかで時期が合う確率は上がります。
そして、その年は見送るという選択もふつうにあります。オベサは毎年咲きます。無理に時期を合わせようとして株を動かすより、翌年に持ち越したほうが結果は良いことが多いです。
受粉できたかを確かめる|3〜4日後の子房を見る
うまくいったかどうかは、すぐ分かります。**受粉から3〜4日、遅くとも1週間ほどで、柱頭のすぐ下にある子房がふくらみ始めます。**丸く盛り上がり、やがて3つの部屋に分かれた輪郭が浮かんできます。この段階まで来れば、あとは熟すのを待つだけです。
受粉が決まると、柱頭の下が3つの部屋に分かれた丸い果実にふくらみます。(AIで生成したイメージです)
決まらなかった場合は、ふくらまないまま花柄ごと色あせて、そのうち落ちます。しぼんだ花がぽろりと取れていたら、その花は終わりです。原因のほとんどは花粉の状態か、柱頭のタイミングで、株の調子とは関係ありません。同じ株の次の花で、あらためて試せば済みます。
ふくらみ始めてからは、特別なことは何もしません。水やりも置き場所も成長期のとおりで構いません(オベサの水やり)。実っているからと肥料を足すと、株の姿が緩む方向に働きます。
結実から採種まで|弾ける前に覆いをかける
この記事でいちばん取りこぼしが出るのがここです。オベサの果実は、熟すと弾けて種を飛ばします。飛距離は1m以上になることもあり、気づいたときには鉢の外どころか棚の下まで散っています。しかも濡れると弾けるのが早まるので、雨に当てたり上から水をかけたりした日に、一気に持っていかれることがあります。
進み方の目安は次のとおりです。
| 段階 | 見えるもの | このときすること |
|---|---|---|
| ふくらみ始め | 柱頭の下が丸く盛り上がる | そのまま。水やりはいつもどおり |
| 肥大 | 3つの部屋の輪郭がはっきりする | 覆いの用意をしておく |
| 色づき | 緑からうっすら茶色へ | 覆いをかける。ここが期限 |
| 成熟 | 全体が茶色くなり、乾いて見える | 弾ける。または早めに外して取る |
ふくらみ始めてから弾けるまでは、おおむね3週間前後です。日数を数えるより、色が緑から薄い茶色に変わったところを合図にするほうが確実です。
色づきはじめたら、通気のある袋をふわりとかぶせておくと種を受け止められます。(AIで生成したイメージです)
覆いに使うのは、茶こし袋、お茶パック、排水口用のネットのような、空気が通るものです。頂部にふわりとかぶせて、麻ひもや細いモールで軽く留めます。稜を締め付けないよう、ゆるく巻くだけで足ります。ビニール袋やラップは中が蒸れて、果実ごと傷みます。
覆いをかけそびれそうなときは、弾ける前に外してしまう手もあります。果実が茶色く色づき、つまんでも白い液が出なくなったころなら、中の種はもう充実しています。ピンセットで軽くつまんで引けば、そのまま外れます。外した果実は、ふたのある通気性のよい容器に入れて置いておけば、中で自然に弾けて種と殻が分かれます。密閉容器に入れると湿気がこもってカビるので、紙箱や穴を開けた容器を使います。
ひとつの果実から採れる種は、3つの部屋にひと粒ずつで3粒です。ひと株から何十粒も採れる植物ではないので、ひとつの実も落としたくないところです。
採った種をどうするか|まく、または乾かして保存する
オベサの種は採りたてがいちばんよく発芽し、時間が経つほど発芽率が落ちていきます。まける時期(気温20〜25℃くらいの春から初夏)に採れたのなら、支度を整えて早めにまいてしまうのがいちばん確実です。
すぐにまけない場合は、殻や果実の破片を取り除いてよく乾かし、紙の袋か通気のある容器に入れて、涼しく乾いた場所に置きます。湿ったまま密閉容器に入れるとカビます。
もうひとつ、覚えておくと株に無理をさせずに済むことがあります。**結実には、花を咲かせるよりも株の体力を使います。**大株ならそれほど気にすることはありませんが、まだ小さい株で毎年続けて実らせると、その年の肥大が鈍ります。採った年の翌年は受粉させずに休ませる、という付き合い方をしている育て手もいます。
鉄甲丸と掛け合わせる|オベサ鉄甲をつくるときに変わること
同じ属どうしなら、種類をまたいだ交配もできます。縁側が扱っているオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)は、オベサと鉄甲丸を掛け合わせた交配種で、オベサを母株(種をつける側)、鉄甲丸を花粉親にした組み合わせがよく知られています。
手つきは、ここまでと変わりません。鉄甲丸も雌雄異株で、雄株の花には黄色い花粉をつけた雄しべが目立ち、雌株の花には3つに分かれた柱頭が出ます。鉄甲丸の雄花から花粉を取り、オベサの雌花の柱頭につける、という手順そのものは同じです。
変わるのは花の時期です。鉄甲丸は早春(2〜3月)、新しい葉が動き出すのと同じころに咲きます。いっぽうオベサは初夏から夏。そのままでは、両方が同時に咲いている日がほとんどありません。ここで効いてくるのが、ひとつ前で触れた花粉の取り置きと、株数をそろえて置き場所を分けるやり方です。それでも重ならない年はあるので、種が採れるまでに何シーズンかかかるのがふつうだと思っておくと気が楽になります。
手間のわりに、結果は毎回違います。同じ交配から採れた兄弟でも、突起の強さ、葉の量、球の丸みは1株ずつ違う。オベサそのものに見える個体から、鉄甲丸寄りの顔まで幅があります。親2種の見分けどころはオベサと鉄甲丸の違いに、育った株の姿の幅はオベサ鉄甲とはにまとめました。年間の管理の全体像はオベサの育て方にあります。
縁側では、オベサ鉄甲の個体を1株ずつ紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
オベサは1株だけで種が採れますか?
採れません。オベサは雌雄異株で、雄花だけをつける株と雌花だけをつける株が別々にあります。1株では自分の花粉で種を結ぶことができないため、咲いている雄株と雌株の2つが要ります。そして咲くまで雌雄は見分けられないので、種を採るつもりなら、苗を数株そろえて育てておくのが近道です。開花そのものは1株でも起こるので、咲いた花を見てはじめてその株がどちらなのかが分かります。
受粉させたのに、ふくらまないまま落ちてしまいました。株が悪いのでしょうか?
株の調子とは関係ありません。決まらなかった場合は、3〜4日たっても子房がふくらまず、そのうち花柄ごと色あせて落ちます。多いのは花粉が古かった、柱頭がまだ開いていなかった、あるいは終わりかけていた、のどれかです。雌花は数日開いているので、翌日・翌々日と重ねて付けておくと取りこぼしが減ります。頂部の花は順に開くので、次の花であらためて試せます。
種が弾けて飛んでしまいました。覆いはいつかけるのがよいですか?
果実の色が緑からうっすら茶色に変わったころが期限です。ふくらみ始めてからおおむね3週間前後で弾け、種は1m以上飛ぶこともあります。濡れると弾けるのが早まるので、雨や上からの水やりにも気をつけておきます。茶こし袋やお茶パック、排水口用のネットのような通気のあるものを、頂部にふわりとかぶせて軽く留めておくと受け止められます。ビニールは蒸れるので向きません。
雄株と雌株の花が、同じ時期に咲きません。
待ち方は3つあります。まず数日から1週間待つこと。オベサの花は頂部から順に開くので、次のつぼみが見えていればそれで重なることが多いです。次に、雄花をピンセットで外して乾燥剤と一緒に冷蔵庫へ置き、花粉を取り置く方法。ただし新鮮な花粉ほど確実に付くので、数日から数週間の橋渡しと考えておくほうが安全です。最後に、その年は見送ること。オベサは毎年咲くので、翌年に持ち越しても失うものはありません。
ひとつの実から何粒くらい採れますか?
3粒です。オベサの果実は3つの部屋に分かれていて、それぞれにひと粒ずつ入っています。ひと株から何十粒も採れる植物ではないので、受粉した花はできるだけ実らせて、弾ける前に受け止めたいところです。採りたての種がいちばんよく発芽するので、まける時期に採れたなら、用土と容器を用意して早めにまいてしまうのが確実です。