育て方

奇想天外の育て方|ウェルウィッチアの深鉢と水やり、冬の温度と種まき

細長い素焼きの深鉢に植えた奇想天外(ウェルウィッチア)の若い株。短い木質の茎から平たい帯のような葉が2枚だけ左右に伸び、葉先が茶色く裂けている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

奇想天外(ウェルウィッチア)は、一生に2枚の葉だけを根元から伸ばし続けるナミブ砂漠の植物です。育て方の要は3つ。まっすぐ下へ伸びる直根のために深い鉢を使い、根をできるだけ切らないこと。乾燥地の植物でも鉢の下のほうまで乾かしきらないこと。そして一年を通して暖かく、冬も10℃前後を保つことです。日当たりと風通しがよければ、成長はゆっくりでも長く付き合える植物です。

奇想天外(きそうてんがい)は、アフリカ南西部のナミブ砂漠に育つウェルウィッチア・ミラビリス(Welwitschia mirabilis)の和名です。低い木質の茎から、幅の広い帯のような葉が2枚だけ伸び、その2枚が一生伸び続ける。そんな他に似たもののない姿から、この名で呼ばれています。乾いた砂漠の植物と聞くと水を控えるイメージを持ちますが、鉢植えでは水を切らしすぎないことと根を深く伸ばせることのほうが大切です。この記事では、植物の性質から、鉢と用土、水やり、置き場所と温度、植え替え、種まきまでを順にまとめます。塊根植物というくくり全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。

奇想天外とは|2枚の葉を伸ばし続ける、ナミブ砂漠の植物

ウェルウィッチアは、ウェルウィッチア科ウェルウィッチア属にただ1種だけが属する植物です。花を咲かせる被子植物ではなく、マツやソテツと同じ裸子植物の仲間で、雄株と雌株に分かれ、それぞれ球果(毬果)をつけます。自生地はナミビアからアンゴラ南部にかけての海岸沿いの砂漠で、雨はほとんど降らず、海から流れ込む霧と、地下深くの水分に支えられて育ちます。

いちばんの特徴は葉です。発芽してまず細長い子葉が2枚出て、そのあとに出る本葉2枚が、生涯ずっと根元から伸び続けます。新しい葉が次々に出るのではなく、同じ2枚が根元で伸び、先のほうは乾いて枯れ、風に裂けていきます。自生地の大きな株では、葉が何本にも裂けて、葉がたくさんあるように見えますが、もとは2枚です。

成長はとてもゆっくりで、自生地には千年を超えると推定される株もあります。鉢植えでも、何年もかけて茎が太り、葉が長くなっていく変化を楽しむ植物です。

鉢植えでの一年は、おおよそ次のように進みます。休眠ではっきり葉を落とす塊根植物とは違い、冬も葉を残したまま、成長がゆっくりになるだけです。

時期株の様子管理の中心
4〜5月気温が上がり、葉の伸びが戻る外の日なたへ慣らす、植え替えの適期
6〜9月よく伸びる日なたで、表面が乾いたらたっぷり
10月伸びが落ち着く水の間隔を少しずつあける
11〜3月ほとんど伸びない室内の明るい場所で10℃前後を保ち、水は控えめに続ける

鉢と用土|まっすぐ下へ伸びる直根のために

奇想天外は、太い根が1本まっすぐ下へ伸びる直根性です。自生地では地下深くの水分まで根を下ろしていて、鉢植えでも、苗のうちから根は横へ広がるより先に下へ伸びます。そのため、鉢は口径より深さを優先します。

  • 鉢の形:ロングポットや、深さのある細長い鉢。苗なら直径7〜9cmで深さ15cmほどのものからはじめ、株の成長に合わせて深い鉢へ移します。
  • 素材:プラスチックの深鉢は乾きがゆるやかで、水を切らしにくい側です。素焼きの深鉢は乾きやすいので、夏は水の間隔が短くなります。置き場所の風通しと合わせて選びます。
  • 用土:水はけのよさは保ちつつ、下のほうに適度に湿り気が残る配合にします。軽石や日向土などの硬い粒を中心に、赤玉土を多めに混ぜると、通気と保水の釣り合いがとれます。有機質はごく控えめにします。

浅い鉢に植えると、根が底に当たって曲がり、伸びが止まりやすくなります。鉢の号数と深さの考え方は塊根植物の鉢のサイズに、用土の配合は塊根植物の用土配合にまとめています。

ロングポットから抜いた奇想天外の苗。2枚の葉の下に、白っぽい太い直根が1本まっすぐ長く伸びている 苗のうちから、根は横よりも下へ長く伸びます。鉢は深さを優先して選びます。(AIで生成したイメージです)

水やり|乾燥地の植物でも、鉢の下までは乾かしきらない

水やりは、暖かい時期は土の表面が乾いたらたっぷりが基本です。鉢底から流れ出るまで与え、受け皿の水は捨てます。多くの塊根植物のように「中までしっかり乾いてから」と待つより、少し早めの間隔になります。

これは、奇想天外が自生地で雨ではなく、地下深くの水と霧の水分で育っていることに由来します。鉢の中でいえば、表面は乾いても、根の先がある下のほうには湿り気が残っている状態が近い環境です。鉢の下まで乾ききる状態が続くと、葉の伸びが止まり、葉先の枯れ込みが早く進みます。

季節ごとの加減は次のとおりです。

  1. 春(4〜5月):葉の伸びが戻ってきたら、間隔を縮めて表面が乾いたらたっぷりへ。
  2. 夏(6〜9月):よく伸びる時期です。気温が高い日は乾きも早いので、表面の乾き具合を見て与えます。真夏の昼に与えると鉢の中が蒸れるので、朝か夕方に。
  3. 秋(10月):伸びが落ち着いてきたら、間隔を少しずつあけます。
  4. 冬(11〜3月):表面が乾いてから数日おいて、鉢の半分ほどが湿る量を与える程度に控えます。ただし、断水はしません。冬も葉は生きていて、根が乾ききると傷みます。

とはいえ、土がいつも水浸しでは根が呼吸できず、株元が傷みます。乾きの具合は、鉢を持ち上げた重さか、鉢の縁から深く挿した竹串の湿り気で確かめます。表面だけでなく、竹串の先のほうが湿っているかどうかを見ると、下の様子がつかめます。塊根植物全体での水やりの考え方は塊根植物の水やりにまとめています。

置き場所と温度|一年を通して日なた、冬は10℃前後を保つ

日当たりと風通しのよい場所が基本です。光が足りないと、葉が薄く細くなり、色も淡くなります。春から秋は、雨の当たらない屋外の日なたや、日がよく入る窓辺に置きます。屋外に出すときは、いきなり真夏の直射に当てず、春のうちから少しずつ慣らすと葉焼けを防げます。

温度は、暖かさを好む植物として扱います。

  • 夏:高温には強い側です。風が止まる場所や、閉め切った室内で熱がこもる場所は避けます。
  • 冬:最低10℃前後を保つのが目安です。5℃近くまで耐えるとも言われますが、寒さにあたると根や葉を傷めやすく、冬でも水を続ける植物なので、低温と湿りが重なるのを避けたいところです。夜は室内の明るい場所に取り込み、窓ガラスのすぐそばは夜に冷えるので、部屋の内側へ寄せます。

冬の室内で日照が足りないときは、植物育成ライトで補うと、葉の色と張りを保ちやすくなります。冬越しの温度の考え方は、ほかの塊根植物との比較も含めて塊根植物の冬越しにまとめています。

植え替え|根を切らずに、ひとまわり深い鉢へ

奇想天外は根をいじられるのを嫌う植物です。とくに若い苗の直根は、先端を傷めるとそこで伸びが止まり、株全体が弱ることがあります。植え替えは頻繁には行わず、根が鉢底に回ったときに、気温が上がる4〜6月に、根鉢を崩さずひとまわり深い鉢へ移すのが基本です。

  1. 植え替えの数日前は水を控え、土を少し乾かしておきます。
  2. 鉢を逆さにせず、横に寝かせて鉢の側面を軽くたたき、根鉢ごとそっと抜きます。ロングポットなら、鉢を切り開いて抜くと根を傷めません。
  3. 根鉢の土は落とさず、そのまま一回り深い鉢に据え、周りに新しい用土を入れます。
  4. 根を切っていなければ、植え付けた当日か翌日に水を与えてかまいません。根を傷めたときは、数日おいてから与えます。

根鉢を崩さないので、古い土が残ることになりますが、それで問題はありません。この植物では、土を新しくすることより、根を守ることのほうが大事です。植え替えの時期と夏型・冬型の考え方は塊根植物の植え替え時期にまとめています。

種まきと苗の管理|種皮をむいて、暖かいうちに

奇想天外は、種から育てるのが一般的な入手と増やし方です。挿し木や株分けはできません。

種まきは、気温が25〜30℃になる時期が向いています。種は、紙のような薄い翼に包まれています。この外側の皮をむいて、中の種だけをまくと、発芽がそろいやすくなります。もうひとつ気をつけたいのがカビです。ウェルウィッチアの種は菌がついていることが多く、発芽前後の苗がカビで倒れる原因になります。種は殺菌剤に浸してからまき、用土は新しい清潔なものを使います。

まき方は、1粒ずつ深いポットに直接まくのが安全です。発芽してから小さなポットへ移すと、その時点で根の先を傷めやすいからです。種は土に軽く押し込む程度にし、鉢底から水を吸わせる腰水で湿り気を保ちます。暖かければ、発芽までは数日から2週間ほどです。

発芽後の苗は、次の点に気をつけて管理します。

  • 腰水は長く続けない:発芽がそろったら腰水を外し、表面が乾きかけたら与える管理に移ります。ずっと湿ったままだとカビや根腐れの原因になります。
  • 風を通す:苗の時期は蒸れに弱いので、ポットを詰めて並べすぎず、風の通る明るい場所に置きます。
  • 葉を傷めない:苗の本葉2枚は、この先ずっと伸び続ける葉です。折ったり、根元を傷めたりしないように扱います。
  • 最初の冬はとくに暖かく:小さな苗は寒さに弱いので、最初の冬は15℃前後を目安に暖かく保つと安心です。

細長い子葉はしばらくすると役目を終えて枯れ、本葉2枚だけの姿になっていきます。花(球果)がつくまでには、鉢植えでも何年もかかります。

細長いポットに1本ずつ植えた奇想天外の実生苗。細長い子葉2枚の間から小さな本葉が出はじめ、浅いトレーの腰水に並んでいる 種は1粒ずつ深いポットにまくと、根を傷めずにそのまま育てられます。(AIで生成したイメージです)

種から迎える株と、輸入株の違い奇想天外は種から育てた株が主に流通しています。種から育った株と、現地から輸入された株では、根の状態や慣れやすさが違います。
実生株と現地球の違いを見る →

調子を崩したときのサイン

奇想天外の不調は、葉と株元に出ます。

  • 葉先が茶色く枯れて裂ける:伸び続ける葉の古い部分が枯れていく、自然な変化です。根元の葉が緑で張りがあれば心配はいりません。見た目が気になる場合は、枯れた部分だけを緑の手前で切りそろえます。緑の部分まで切らないようにします。
  • 葉先の枯れが急に早く進む:水切れか、根が鉢の下で乾ききっている状態です。竹串で下のほうの湿り気を確かめ、間隔を見直します。
  • 葉が細く、色が淡くなる:光が足りていません。より明るい場所へ寄せるか、育成ライトで補います。
  • 葉が黄ばんで、伸びが止まる:冬の寒さや、根の傷みが考えられます。最低温度を確かめ、植え替えの直後なら根を傷めていないか振り返ります。
  • 株元や葉の根元が柔らかい、黒ずむ:腐りです。多くは低温と湿りが重なったときや、苗の時期のカビで起きます。水を止めて風を通し、傷みが広がらないか見守ります。葉が伸びる根元が傷むと回復は難しいので、冬の温度と苗の時期の風通しで予防することがいちばんの対策です。

どのサインも、光・水・温度のどれかが足りないか、根が傷んだときに出ます。深い鉢で根を守り、暖かく、乾かしきらない。この3つがそろえば、奇想天外は成長はゆっくりでも、長く付き合える植物です。塊根植物をはじめて迎えるときの選び方は塊根植物の初心者におすすめの種類にまとめています。

縁側では、ユーフォルビアのオベサ鉄甲を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

葉先が枯れてきました。切ったほうがよいですか?

奇想天外の葉は根元で伸び続け、先の古い部分から枯れていくので、葉先が茶色くなるのは自然な変化です。根元の葉が緑で張りがあれば問題ありません。見た目が気になる場合は、枯れた部分だけを緑の手前で切りそろえます。緑の部分を切ると、その切り口からまた枯れ込むことがあるので、切るのは枯れた部分までにします。

冬は水やりを止めたほうがよいですか?

断水はしません。奇想天外は冬も葉を残したまま、成長がゆっくりになるだけです。根が乾ききると傷むので、冬は表面が乾いてから数日おいて、鉢の半分ほどが湿る量を与える程度に控えながら続けます。そのぶん、最低10℃前後を保ち、低温と湿りが重ならないようにします。

葉は2枚以外に増えないのですか?

増えません。発芽後の子葉2枚が枯れたあとは、本葉2枚だけが生涯伸び続けます。大きな株で葉がたくさんあるように見えるのは、2枚の葉が長くなる途中で縦に裂けたものです。この2枚の葉が伸びる根元を傷めると回復が難しいので、植え替えや移動のときは株元と葉の付け根に触れないように扱います。

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