道具

塊根植物・多肉の栽培道具|用土・鉢・育成ライト・棚の選び方とそろえる順番

木の縁側に並べた塊根植物の栽培道具一式(素焼き鉢、細口のじょうろ、移植ゴテ、竹串、作業手袋、用土)
AIで生成したイメージです
この記事の結論

栽培の道具は、鉢・用土・置き場所の3つがひと組になって「鉢の中が乾く速さ」を決めます。最初にそろえるのは、水はけのよい用土・底穴の大きい鉢・鉢底石・細口のじょうろ・移植ゴテ・手袋の6つで足ります。育成ライトや棚、温度計は、室内に取り込む冬を迎える前に足していくと無駄がありません。

オベサや鉄甲丸のような多肉質のユーフォルビア、パキポディウムのような塊根植物を育てはじめるとき、道具は驚くほど少なくて足ります。園芸店の売り場には大量の商品が並んでいますが、最初の一鉢に本当に要るものは6つほど。あとは、季節が一巡するあいだに「足りない」と感じた分だけ足していくのが、いちばん無駄がありません。

この記事では、まず道具どうしがどうつながっているのかという考え方を置いてから、用土・鉢・光・置き場所・手入れの順に、何を基準に選ぶかをまとめます。育て方そのものはユーフォルビアの育て方と塊根植物の育て方にまとめてあるので、ここは道具の側から見た一冊として読んでいただければと思います。

道具は「鉢の中が乾く速さ」でつながっている

道具をひとつずつ比べていくと、どれも良さそうに見えて決められなくなります。そこで先に、ひとつの物差しを置きます。乾燥地の植物を育てる道具は、そのほとんどが「鉢の中が乾く速さ」を決めるための部品だ、という見方です。

同じ「週に1回の水やり」でも、鉢の中が3日で乾く環境と、10日かかる環境では、株の受ける負担がまるで違います。そして乾く速さを決めているのは、次の4つの組み合わせです。

  • 用土:粒が大きく、粒のあいだに隙間が多いほど早く乾きます。
  • 鉢:素焼きは器そのものから水が抜け、釉薬のかかった陶器やプラスチックは抜けません。大きく深い鉢ほど乾きが遅くなります。
  • 置き場所の風:風が通れば早く乾き、閉め切った室内では遅くなります。
  • 光と気温:よく日が当たり、株が動いている季節ほど早く乾きます。

つまり、乾きにくい鉢を選んだなら用土を粗くする、風の通らない室内に置くなら鉢を小さめにする、というように足し引きで調整できるということです。どれかひとつに正解があるわけではなく、自分の置き場所に合わせて組み合わせを決めていく。この視点があると、売り場での迷いはかなり減ります。

乾いたかどうかの確かめ方そのものはオベサの水やりに竹串・重さ・肌の張りの3通りをまとめています。道具を選ぶときは、その確かめ方が使いやすくなるかどうかも判断材料になります。

最初にそろえる6つ

一鉢を迎えて、最初の植え替えまでを過ごすのに必要なものは、次の6つです。園芸店でもホームセンターでも、一度の買い物で揃います。

道具何のために使うか選ぶときに見るところ
用土植え込み材。乾く速さの土台多肉植物・サボテン用。粒が細かすぎないもの
鉢根の家。乾く速さを大きく左右する底穴が大きいこと。株の直径+2〜3cm
鉢底石底穴の詰まりを防ぎ、空気を通す軽石の中粒。ネット入りだと再利用が楽
じょうろ株元の土だけに静かに注ぐ細口・注ぎ口が長いもの
移植ゴテ鉢に土を入れる、植え替える幅が狭く、小鉢の内側に入るもの
手袋樹液と土から手を守る指先の感覚が残る薄手のもの

この6つの中で、後から取り替えが効きにくいのは鉢です。用土は次の植え替えで変えられますし、じょうろやスコップは使い勝手が合わなければ買い直せばすみます。鉢は株が入ってしまうと1〜2年動かせないので、最初に少し考える価値があります。

逆に、最初から要らないものもあります。霧吹きは、球体で光合成をするオベサのような株には出番がありません。肥料も、植え込み用土に緩効性のものが混ざっていれば最初の1年は足さずに済みます。剪定ばさみも、球形の株は基本的に切らないので、傷んだ部分を落とすとき以外は使いません。

手袋を6つに入れているのには理由があります。ユーフォルビアは茎や葉を傷つけると白い乳液状の樹液を出し、これが皮膚につくとかぶれ、目に入ると強い炎症を起こすことがあります。植え替えや折れた枝の処理では、薄手でも手袋があると安心です。

用土|水はけを最優先に、配合で乾く速さを決める

赤玉土・鹿沼土・軽石・くん炭を小皿に分けて並べ、右手前に混ぜ合わせた用土を盛った俯瞰 粒のかたちと大きさが、鉢の中の隙間の量を決めます。(AIで生成したイメージです)

市販の用土をそのまま使う

いちばん手軽なのは、市販の「多肉植物・サボテンの土」をそのまま使う方法です。多くは赤玉土や軽石を主体に配合されていて、乾燥地の植物にはそのまま通用します。観葉植物用の培養土は保水性が高く、乾くまでに時間がかかるので、単独では向きません。

市販品を選ぶときに見るのは、袋の中の粒の大きさです。細かい粉のような土が多いものは、水をやるたびに粒が崩れて隙間が詰まり、半年もすると乾きが目に見えて遅くなります。袋の外から粒がごろごろしているのが分かるものを選ぶと、その後が楽です。粉が多い袋に当たったときは、ふるいにかけて細かい分を落とすだけでも違います。

自分で配合する

自分で配合するときは、次の4つを基本の材料と考えると組みやすくなります。

  • 赤玉土(小粒):土台。適度に水を持ち、根が張る足場になります。硬質と表示されたものは崩れにくく、長く形が残ります。
  • 軽石(小粒):隙間をつくる役。増やすほど乾きが早くなります。
  • 鹿沼土(小粒):軽く、水はけと通気の両方に効きます。酸性寄りです。
  • くん炭:ごく少量で、土の中の環境を整える働きがあります。入れなくても育ちます。

配合の出発点は赤玉土4:軽石3:鹿沼土3あたり。ここから、置き場所が室内で乾きが遅いなら軽石を増やし、屋外の風通しのよい棚で乾きすぎるなら赤玉土を増やす、という調整をします。肥料分はほとんど入っていないので、緩効性肥料をひとつまみ混ぜておくと成長期に効きます。

配合するかどうかの分かれ目は、鉢の数です。数鉢なら市販品で十分で、配合の手間に見合いません。鉢が増えて、株ごとに乾き方を変えたくなってきたら、自分で混ぜる意味が出てきます。

用土の寿命

用土は消耗品です。粒が崩れて隙間が減ると、同じ水やりでも鉢の中が湿ったままになります。多肉質のユーフォルビアで2〜3年に一度、成長の早い株なら毎年、植え替えのついでに新しくします。手順はオベサの植え替えにまとめてあります。

鉢|素材・大きさ・底穴で乾き方が変わる

素焼き鉢・黒いプラスチックのスリット鉢・釉薬のかかった陶器鉢を並べ、それぞれに球形のユーフォルビアが植わっている 同じ用土・同じ水やりでも、鉢の材質で乾く速さが変わります。(AIで生成したイメージです)

素材で選ぶ

素材乾く速さ向いている場面
素焼き(テラコッタ)速い室内など風の通りにくい場所。水やりに慣れないうち
プラスチック遅い屋外の日なた。数を並べて管理する
スリット鉢やや速い根を回りにくくしたい。実生から育てる株
釉薬のかかった陶器・作家鉢遅い眺めて楽しむ。乾きの遅さを用土で補う

素焼き鉢は器の壁からも水が抜けるので、水をやりすぎても取り返しがつきます。はじめの一鉢としては素焼きがいちばん失敗しにくいのは、この余裕があるからです。反面、屋外の夏は乾きすぎて水やりが追いつかないことがあります。

作家の手による鉢は、株と合わせて眺める楽しみが大きいものです。釉薬のかかったものは水が壁から抜けないので、用土を粗めにする、ひとまわり小さい鉢にする、といった足し引きで乾く速さを戻します。鉢そのものに穴が小さいものもあるので、植える前に底を確かめておくと安心です。

大きさは「株の直径+2〜3cm」

大きい鉢に植えれば植え替えの手間が減りそうに思えますが、乾燥地の植物では逆に働きます。根の届かない土が鉢の隅に残り、そこが乾かないまま湿り続けて、根が傷む入口になります。目安は株の直径に対して、左右に1〜1.5cmずつ余裕がある程度。ひとまわり小さいかな、と感じるくらいでちょうど収まります。

深さも同じ考え方です。オベサのような球形の株は根が浅く広がるので浅めの鉢が合い、パキポディウムやディオスコレアのように地中へ伸びる根を持つ株は深さのある鉢が合います。株の根のかたちに合わせると、鉢の中に無駄な土が残りません。

底穴と鉢底石

底穴は大きいほどよい、と考えて差し支えありません。穴が小さいと水が抜けきらず、鉢の底に水がたまります。穴が大きい鉢には鉢底ネットを敷き、その上に軽石の中粒を1〜2cm。ネットに入った鉢底石を使うと、植え替えのときにそのまま取り出せて再利用できます。

光|窓辺で足りるか、育成ライトを足すか

道具の中で、買うかどうかいちばん迷うのが育成ライトです。判断の順番は、まず今の置き場所で足りているかを確かめてから。株がすでに教えてくれています。

  • 足りている:稜や節の間隔が詰まっていて、色が締まっている。新しく出てくる部分が、前の部分と同じ太さで育っている。
  • 足りていない:上へ細く伸び、色が薄くなる。稜が浅くなり、株の形がひょろりと変わっていく。

この「上へ細く伸びる」変化が徒長です。一度伸びた部分は元に戻らないので、気づいた時点で光を足すかどうかを決めます。年を経て自然に円柱状になる変化と見分けがつきにくいので、迷ったときはオベサの徒長と円柱化の見分けを参考にしてください。

屋外か、南〜東向きの窓辺に置けているなら、ライトは要りません。ライトが効いてくるのは次のような場合です。

  • 冬に室内へ取り込むが、明るい窓辺が確保できない
  • 北向きの部屋や、建物の陰になる窓しかない
  • 棚に並べていて、上段は明るいが下段に光が届かない

選ぶときに見るところは3つあります。明るさ(株に届く光の量)、光の届く範囲、そして取り付け方です。強い光を出す製品でも、株から離せば届く量は急に落ちます。20〜30cmほどまで近づけられる取り付け方ができるかどうかが、数字以上に効きます。範囲は、鉢がいくつ並ぶかで決まります。1鉢ならクリップ式で足り、棚の1段を照らすならバー型が合います。

点ける時間は1日10時間前後が目安で、タイマーで自動にしておくと管理が続きます。近づけすぎると表面が焼けることがあるので、最初は離して置き、株の様子を見ながら少しずつ寄せていきます。

植え替えの道具から整えたい方へ鉢のサイズ、根のほぐし方、植え付けたあと水をいつ与えるかまで、球形の株に絞って手順を並べています。
オベサの植え替えを見る →

冬の室内で効いてくる道具|棚・温度計・サーキュレーター

多肉質のユーフォルビアや塊根植物の多くは、最低10℃を目安に室内へ取り込みます。屋外では自然に満たされていた「光・風・温度」を、室内では道具で補うことになります。ここで効いてくるのが次の3つです。

棚

鉢が増えてくると、棚は置き場所そのものになります。選ぶときに見るのは、棚板が光と風を通すかです。板が詰まっていると、上の段の影になった下の段には光も風も届きません。メッシュやワイヤーの棚板、あるいはスノコを敷いた棚が向きます。

サイズは、育成ライトを付けるかどうかで決まります。ライトを吊るすなら、株の上に20〜30cmの余裕が要ります。段の高さが動かせる棚を選んでおくと、株が育ってからも使い続けられます。屋外に置く棚なら、雨が当たりにくい軒下で、鉢が転がらない奥行きがあるものを。

温度計

冬の管理でいちばん知りたいのは、部屋の温度ではなく、鉢を置いている場所の夜間の温度です。窓辺は昼に暖かくても、夜はガラス越しに外気並みまで冷えます。最高最低温度計をひとつ、株のすぐ横に置いておくと、朝にその晩の底値が分かります。「思っていたより冷えていた」と気づけるのが、この道具の値打ちです。

温度が読めると、水やりの判断も変わります。10℃を下回る場所では水をほとんど与えないほうが安全で、10℃以上を保てるなら月1〜2回の少量を続けたほうが春の立ち上がりがよくなります。冬の手順はオベサの冬越しにまとめてあります。

サーキュレーター

室内で不足しがちなのは風です。空気が動かないと鉢の中が乾かず、株のあいだも蒸れます。サーキュレーターは株に直接当てず、壁や天井に向けて部屋の空気をゆるく回す使い方が合います。直接当て続けると乾きすぎて株が傷むので、風が回っているのが分かる程度で十分です。

夏の高温期にも同じ道具が効きます。風が通っていれば鉢の中の温度が下がり、水やり後の蒸れも抜けます。株が柔らかくなる根腐れの多くは、湿りと高温が重なったところで起きます(見分け方と手当ては腐ったオベサの切り戻しに)。

手入れと植え替えの道具

日々の手入れで使うものは、少数です。持っていると作業が確実になるものを挙げます。

  • 竹串:土の乾き具合を確かめる、植え付けのときに根のあいだへ土を入れる。1本で両方に使えて、道具としていちばん働きます。
  • ピンセット:稜の谷に落ちた枯れ葉やごみを取る、白い綿のような虫を取り除く。先の細いものが使いやすい。
  • ブロワー(手押しのもの):株の表面のほこりを飛ばす。写真を撮る前にも使えます。
  • 刃物:傷んだ部分を落とすとき。使う前に火であぶるか、アルコールで拭いて清潔にします。切り口から樹液が出るので手袋を。
  • ふるい:用土の粉を落とす、粒の大きさを分ける。用土を自分で配合するようになったら。
  • ラベル:実生から育てる株や、交配した株の記録に。種類が増えるほど効きます。

このうち刃物とラベルは、実生から育てるようになると出番が増えます。逆に、球形の株だけを数鉢育てているあいだは、竹串と手袋があればほとんどの場面をしのげます。

道具は増やすほど楽になるものではなく、手が届く範囲に必要なものだけが置いてある状態がいちばん続きます。買い足すのは、同じ不便を3回感じてからで遅くありません。

株そのものを選ぶところから考えたいときはオベサの選び方に、迎えたあとの1年の流れはオベサの育て方にまとめています。

縁側では、実生のオベサ鉄甲を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

100円ショップの道具だけでそろえられますか?

鉢・鉢底石・移植ゴテ・ピンセット・トレイあたりは、100円ショップのもので十分に使えます。気をつけたいのは用土と鉢の底穴です。小袋で売られている土は粒が細かく保水性が高いものが多く、乾燥地の植物にはそのままだと乾きが遅すぎることがあります。軽石を足して粗くするか、用土だけは園芸店で選ぶと安心です。鉢も、底穴が小さいものは水が抜けにくいので、植える前に確かめます。

サボテン用の土は、ユーフォルビアに使えますか?

使えます。どちらも乾燥地の植物で、求める水はけはほぼ同じです。「多肉植物・サボテンの土」として売られているものは、そのまま植え込みに使えます。粒が細かいと感じたら軽石を1〜2割足すと、乾く速さが上がります。逆に、観葉植物用の培養土を単独で使うのは向きません。

育成ライトは本当に必要ですか?

屋外か、南〜東向きの明るい窓辺に置けているなら要りません。必要になるのは、冬に室内へ取り込んだときに明るい場所が確保できない場合や、北向きの部屋しかない場合です。判断は株の姿で。上へ細く伸びて色が薄くなってきたら光が足りていない合図なので、その時点で検討すれば間に合います。

鉢は大きめを買っておけば、植え替えの回数が減りますか?

減りますが、根が傷むほうが先に来ることが多いので、おすすめできません。大きい鉢では根の届かない土が鉢の隅に残り、そこが乾かないまま湿り続けます。乾燥地の植物にとって、これがいちばん起きやすい失敗です。株の直径に対して左右1〜1.5cmずつ余裕がある程度にして、2〜3年に一度、ひとまわりずつ大きくしていくほうが結果的に早く育ちます。

剪定ばさみは買っておいたほうがいいですか?

球形や塊状の株だけを育てているあいだは、急ぎません。オベサや鉄甲丸のような多肉質のタイプは基本的に切らず、刃を入れるのは傷んだ部分を落とすときだけです。枝を伸ばすハナキリンやミルクブッシュのようなタイプを育てはじめたら、そこで用意します。使うときは刃を清潔にして、切り口から出る白い樹液に触れないよう手袋をつけます。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。