アデニウム アラビカムを太らせる方法|幹を低く横に太くする光・水・鉢と根の手入れ

アデニウム アラビカムの幹は、葉で作った養分をためた分だけ太ります。太らせる本体は、生育期(5〜9月ごろ)にいちばん日の当たる場所で、乾いたらたっぷりの水と少しの肥料を回し、葉のある期間を長く保つことです。そのうえで、苗のうちに主根の先を切って浅い鉢で根を横へ広げると、アラビカムらしい低く平たい幹になりやすくなります。数年は土に埋めて太らせ、太さが出てから少しずつ根上げしていくのが順番です。
アデニウム アラビカム(Adenium arabicum)は、上へ伸びるより先に横へ太り、地際から岩のような塊になっていく種類です。手元の株を「もっとずんぐりさせたい」と思ったとき、効くことと効かないことははっきり分かれます。先に結論を言うと、幹を太らせるのは葉のある季節にどれだけ育てたかで、鉢や仕立ての工夫はその太り方の「向き」を決める手入れです。この記事では、太る仕組み、生育期の回し方、苗のうちの根の手入れ、根上げの順番、太らないときの見直し方を順に見ていきます。
置き場所や冬越しを含めた一年の育て方はアデニウムの育て方に、オベスムとの見分け方はアデニウムの種類にまとめています。
アラビカムの幹が太る仕組み|葉で作った分だけ、幹と根にたまる
アデニウムの膨らんだ幹は、雨の降らない季節をしのぐための貯蔵庫です。葉が光合成で作った養分と水を、幹と太い根にためていきます。つまり幹が太る量は、葉が働いた量とほぼ比例します。
この仕組みから、太らせる手順は次の3つに整理できます。
- 成長量を増やす:生育期に光・水・肥料・温度をそろえ、葉をたくさん、長く働かせる
- ためる場所を作る:根を横へ広げ、太れる根の量を増やす
- 見せ方を整える:太った根を少しずつ土の上に出し、低く広がった姿に仕立てる
1が本体で、2と3は姿の方向づけです。切る・上げるといった手入れだけでは幹は太らず、むしろ1が足りないまま手を入れると、株は回復に養分を使って止まります。
アラビカムが「横に太る」のは種類の性質で、同じ年数ならオベスムより幹の量感が出やすいとされます。ただし同じアラビカムでも、太りやすい系統と細めに育つ系統があり、タイで選抜された「タイソコトラナム」などの流通名の株は、とくに幹が太く低くまとまる傾向があります。どこまで太るかの上限は、株の血筋でもある程度決まっています。
生育期の回し方|光・水・肥料・温度をそろえる
太らせる時期は、葉が茂っている5〜9月ごろ(関東の平地で、最低気温が15℃を超えてから秋に葉が黄ばむまで)です。この期間の回し方が、その年の太り方をほぼ決めます。
| 要素 | 太らせる回し方 | 足りないと |
|---|---|---|
| 光 | 屋外の直射日光。雨の当たらない軒下や棚 | 枝が間延びし、幹より枝に養分が回る |
| 水 | 土が中まで乾いたら、鉢底から流れるまで | 葉を落として止まる。過湿なら根が傷む |
| 肥料 | 薄めの液肥を2週に1回ほど、または緩効性を少量 | 葉色が薄く、葉数が増えない |
| 温度 | 20〜30℃前後で最もよく育つ | 15℃を切ると成長が鈍る |
| 期間 | 春は早めに動かし、秋は葉を長く残す | 葉のある期間が短いほど太る量が減る |
光|いちばん効くのは日照時間
アラビカムは強い光を好み、日照が足りると枝の節が詰まり、葉が厚くなって幹へ養分が回ります。室内の窓辺だけだと、どうしても枝が細く伸びて、幹より枝の長さに成長が使われます。春から秋は屋外の日なたに出すのが、太らせるうえでの最大の近道です。屋外に出せない場合は、植物育成ライトで光を足すと、締まった育ち方に近づけられます。
水|乾いたらたっぷり、を繰り返す
生育期の水は、控えるほど太るわけではありません。乾かしすぎると葉を落として成長が止まり、その間は幹も太りません。土が中まで乾いたのを確かめてから、鉢底から流れ出るまでたっぷり与える。このリズムを崩さないことが、そのまま成長量になります。真夏の屋外で鉢が小さければ、数日に1回になることもあります。
肥料|葉を増やすための少量を、生育期だけ
肥料は幹を直接太らせるものではなく、葉を増やして光合成の量を底上げするものです。新芽が動いてから秋に葉が黄ばむまでのあいだだけ、袋の表示より薄めの液肥を2週に1回ほど、または緩効性の肥料を少量置きます。窒素が多すぎると枝葉ばかりが伸びて姿が崩れやすいので、リン酸・カリが同じくらいか多めのものが扱いやすい選択です。選び方は塊根植物の肥料に詳しくまとめています。
期間|葉のある季節を長くする
日本の鉢植えでは、生育期が自生地より短くなりがちです。春は最低気温が15℃を超えたら早めに屋外へ慣らし、秋は気温が下がっても葉が元気なうちは日なたに置いて、葉を長く働かせると、その分だけ太る量が増えます。冬も15℃以上の部屋と育成ライトを用意できるなら、落葉させずに育て続ける道もあります。冬越しの選び方は塊根植物の冬越しを参照してください。
苗のうちの根の手入れ|主根を切って、横に広げる
アラビカムの低く平たい幹は、根の張り方で形が決まります。実生の苗は、まっすぐ下へ伸びる太い主根を1本持っていて、そのまま育てると幹は縦長の大根のような形になりやすい。そこで、苗が若いうちの植え替えで主根の先を切り、側根を横へ広げて植える手入れがよく行われます。アデニウムの生産が盛んなタイで広まった仕立て方のひとつです。
主根の先を切ると、側根が横へ伸びて、幹の下が平たく広がる方向に育ちます。(AIで生成したイメージです)
進め方は次のとおりです。
- 時期は生育期の前半(5〜7月)。新芽が動いて株に勢いがある時期に行うと、切り口からの回復が早くなります
- 根元が膨らみはじめた苗が目安。発芽から数か月〜1年ほどの、主根がまだ細いうちのほうが負担が少なくすみます
- 主根の先を、根元の膨らみの下で切る。切り口を数日乾かしてから植えます。アデニウムの白い乳液は肌に付くとかぶれることがあるので、手袋をしておくと安心です
- 側根を放射状に広げて、浅い鉢に植える。根が下へ潜らず、横へ伸びる環境を作ります
- 植えたあとは1週間ほど水を控え、明るい日陰で落ち着かせてから日なたへ戻します
主根を切らずに、鉢の底近くに平たい板やタイルを敷いて、根を横に曲げて伸ばす方法もあります。どちらも狙いは同じで、「根を下でなく横へ」です。
この手入れは、根を切ったぶん一時的に成長が止まります。体力のない苗や、葉の少ない株には急がずに、まず一年しっかり育ててからにするほうが結果的に早く太ります。挿し木や接ぎ木の株は主根を持たないため、この方法の対象は実生株です。実生の苗の育て方は実生(種から育てる)でも扱っています。
鉢と植え方|埋めて太らせ、太ってから上げる
鉢は浅く広く、大きすぎない
横へ広げたい株には、深い鉢より浅く口の広い鉢が向いています。根が横へ伸び、土の量に対して乾きも早くなるので、乾いたらたっぷりのリズムを保ちやすくなります。ただし、太らせたいからといって一気に大きな鉢へ植えると、土が乾かずに根を傷める側に働くことがあります。根が鉢に回ってきたら一回りずつ上げていくのが、乾き方を保ったまま根の量を増やす方法です。サイズの考え方は塊根植物の鉢のサイズにまとめています。
用土は水はけを優先し、多肉植物用の土に軽石などを足した配合が扱いやすい組み合わせです。配合の考え方は塊根植物の土を参照してください。
根上げは「太ってから」
太った根の上部を土の上に出していく「根上げ」は、アラビカムの姿を見せる仕立てとして定番です。ただ、土の上に出た部分は、埋まっていたときより太る速さが落ちるのが一般的です。そのため順番としては、
- 数年は、太い根を土に埋めたまま育てて太さを稼ぐ
- 太さが出てきたら、植え替えのたびに1〜3cmずつ上げていく
という進め方が組みやすくなります。若いうちから大きく根を出すと、姿は早くできても太さが伸び悩みます。具体的な手順はアデニウムの育て方の根上げの節に、植え替えの時期の見極めは塊根植物の植え替え時期にあります。
剪定は枝数を増やす手入れ
枝先を切ると、切り口の下から複数の枝が出て、葉の量が増えます。葉が増えれば翌年以降の成長量が増えるので、間接的に幹の太りを助けます。ただし切った直後は、その枝を伸ばし直すために養分を使うので、切ること自体が幹を太らせるわけではありません。剪定は生育期の前半に、株に勢いがあるときに行います。
太らないときに見直すところ
「育てているのに幹が太らない」ときは、次の順にたどると原因を絞りやすくなります。
| 見直すところ | 見分け方 | 見直し方 |
|---|---|---|
| 株の出自 | 根元が細く、根がひげ状に均一(挿し木)/幹に段差(接ぎ木) | 管理の失敗ではない。枝ぶりと花を楽しむ方向へ |
| 日照 | 枝が細く長く、節の間があいている | 春〜秋は屋外の日なたへ。室内なら光を足す |
| 葉のある期間 | 夏の途中で葉を落とす、秋に早く落葉する | 水切れと低温を避け、葉を長く保つ |
| 根の状態 | 鉢底から根が出ている/土が何日も乾かない | 窮屈なら一回り上げる。乾かないなら鉢と土を見直す |
| 冬の傷み | 春に幹の一部がやわらかい・しぼむ | 冬は10℃を切らない場所へ。休眠中は水を止める |
いちばん多いのは、日照と葉のある期間の不足です。葉が茂って枝が締まっていれば、成長量は確保できています。そのうえで太りが遅いと感じるなら、株の血筋や出自による差と考えて、年数で見ていくのが自然です。
どのくらいで太るか|年単位で見る
アラビカムは、実生から根元の膨らみがはっきりしてくるまでに数年、見ごたえのある幹になるまでにはさらに年数がかかる種類です。太り方は、日照・生育期の長さ・鉢の大きさで大きく変わり、同じ年数の株でも倍以上の差がつくことがあります。
月単位では変化が見えにくいので、春の植え替えのたびに幹のいちばん太いところの直径を測っておくと、一年ごとの太りがはっきり分かります。前の年より太っていれば、その年の回し方が合っていたということです。幹の太さが育った年数そのものを表すことは、砂漠のバラ(アデニウム)の値段で、株の値段を分ける要素としても紹介しています。
塊根植物というくくり全体の考え方は塊根植物(コーデックス)とはにあります。縁側では、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)の個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
大きい鉢に植えれば、アラビカムは早く太りますか?
日差しと風の十分な屋外なら、根が広がるぶん生育はよくなります。ただし土が乾きにくくなるので、室内や風の弱い場所では根を傷める側に働くことがあります。根が鉢に回ったら一回りずつ上げていくほうが、乾き方を保ったまま根の量を増やせます。横へ太らせたい株には、深い鉢より浅く口の広い鉢が向いています。
水を控えたほうが幹は締まって太りますか?
生育期に水を控えると、葉を落として成長が止まり、その間は幹も太りません。太らせたいときは、土が中まで乾いたのを確かめてから、鉢底から流れるまでたっぷり与えるリズムを続けます。水を減らすのは、秋に葉が黄ばみはじめてからです。
挿し木や接ぎ木のアラビカムでも太りますか?
挿し木の株は根が後から出るため、根元が太りにくく棒状に育ちやすい性質があります。接ぎ木の株は台木の部分が太り、接ぎ口から上はあまり太りません。どちらも管理で実生株のような平たい幹にするのは難しいので、幹の姿を育てたいなら実生株から選ぶのが近道です。