アデニウムの種類|オベスム・アラビカムなど原種の見分け方と園芸品種の選び方

アデニウムは、アフリカからアラビア半島にかけて分布する、10種に満たない小さな仲間です。国内で出会う株の大半は、壺形の幹から上へ枝を伸ばすオベスムと、低く横に幅広く太るアラビカム、そしてタイで作られた花の園芸品種です。見分けるときは「幹が上へ伸びるか、横へ広がるか」と「葉の幅と厚み」を見ると整理しやすく、はじめての1鉢にはオベスムかアラビカムが選びやすい種類です。南部アフリカのマルチフロルムなどは休眠の扱いが変わります。
アデニウム(Adenium)は、膨らんだ幹の先に枝を伸ばし、ラッパ形の花を咲かせる塊根植物です。「砂漠のバラ」の名で売られている株の多くはオベスムやその園芸品種ですが、同じ属のなかには、幹が低く横に太る種類、細い柱のように伸びる種類、地中の丸い塊根から細い枝を出す種類まで含まれます。この記事では、主な原種を一覧にしたうえで、幹の形と葉・花を手がかりにした見分け方、園芸品種の見どころ、名前のまぎらわしいところ、育てやすさの違いを順にまとめます。育て方そのものはアデニウムの育て方に、塊根植物全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。
アデニウムは何種類ある?|アフリカとアラビア半島の小さな仲間
アデニウムはキョウチクトウ科アデニウム属の植物で、属としては小さく、数え方によって5種から10種ほどとされます。ひとつの種(オベスム)に多くを含め、ほかを亜種として扱う見方と、それぞれを独立した種として扱う見方があり、資料によって数が変わります。園芸の世界では、それぞれを種として呼び分けるのが一般的です。
分布は大きく3つの地域に分けると整理しやすくなります。
- アフリカ東部〜アラビア半島:オベスム、アラビカム、ソマレンセ、ソコトラナムなど。国内で見かける株の大半がこの地域の種類です。雨季と乾季のはっきりした暑い乾燥地の出身で、夏に育って冬に休むリズムを持ちます。
- 南部アフリカ:マルチフロルム、オレイフォリウム、スワジカム、ボエミアナムなど。冬の乾季にしっかり休む性質が強く、葉の落ちた枝に花を咲かせる種類もあります。
- 島:ソコトラナムはイエメン沖のソコトラ島だけに自生します。ほかの種類と離れた場所で育ってきたぶん、姿も成長の速さも独特です。
主な種類の一覧|自生地・幹の姿・花
国内で名前を見かけることがある原種を並べると、次のようになります。流通の多いものから順に書いています。
| 種類(流通名) | 学名 | 自生地 | 幹の姿 | 花 |
|---|---|---|---|---|
| オベスム | A. obesum | アフリカ東部〜アラビア半島 | 壺形、上へ枝を伸ばす | ピンク〜赤、品種で多色 |
| アラビカム | A. arabicum | アラビア半島南西部 | 低く横に幅広く太る | ピンク |
| ソマレンセ | A. somalense | ソマリアなどアフリカ東部 | 細く高い円錐形 | ピンク、筋が入る |
| クリスパム | A. somalense var. crispum | タンザニアなど | 地中の丸い塊根から細い枝 | 白〜淡いピンク、喉に赤い筋 |
| ソコトラナム | A. socotranum | ソコトラ島 | 太い柱状、成長がきわめて遅い | ピンク |
| マルチフロルム | A. multiflorum | 南部アフリカ | 低い幹から枝を広げる | 白に赤い縁取り |
| オレイフォリウム | A. oleifolium | 南部アフリカ(カラハリ周辺) | 地中の塊根から細い枝 | ピンク |
| スワジカム | A. swazicum | エスワティニなど | 地際の塊根から低く茂る | 濃いピンク〜赤紫 |
| ボエミアナム | A. boehmianum | ナミビア・アンゴラ | 低い幹、枝先に幅広の葉 | 淡い赤紫 |
国内の売り場で出会う機会が多いのは、表の上の3つ、とくにオベスムとアラビカムです。クリスパムやマルチフロルム以下の種類は、専門店や愛好家のあいだで扱われることが中心になります。
幹の形で見分ける|上へ伸びる・横へ広がる・柱状・地中の塊根
葉が落ちている冬でも見分けやすいのが、幹の形です。おおまかに4つの型に分けると、手元の株がどのあたりの種類か見当がつきます。
左が上へ伸びる壺形の幹、右が低く横へ広がる幹。同じアデニウムでも、幹の太り方で印象が大きく変わります。(AIで生成したイメージです)
- 壺形で上へ伸びる型:オベスム。根元が壺や徳利のように膨らみ、そこから枝を上へ伸ばします。剪定や根上げで形を作りやすく、仕立て方の情報もいちばん多い型です。
- 低く横へ広がる型:アラビカム。幹が上へ伸びるより先に横へ太り、地際から何本も枝を出して、岩のような塊になります。同じ年数ならオベスムより幹の量感が出やすいのが特徴です。
- 細い柱状に伸びる型:ソマレンセとソコトラナム。ソマレンセは円錐形の細い幹が高く伸び、ソコトラナムは太い幹がゆっくりと柱のように立ち上がります。
- 地中の塊根から枝を出す型:クリスパム、オレイフォリウム、スワジカム。地中や地際に丸い塊根を持ち、地上には細い枝が茂ります。鉢で育てるときは、塊根を少しずつ持ち上げて見せる仕立てがよく行われます。
オベスムとアラビカムは、若い苗のうちは姿が似ていて迷いやすい組み合わせです。見分けるときは葉を見ます。アラビカムの葉は幅広で厚く、表面に細かな毛があって、手触りがややざらつきます。オベスムの葉は細めの楕円形で、つやのある緑です。
葉と花で見分ける|葉の幅・縁の波・花の模様
幹の形とあわせて、葉と花を見ると種類がしぼり込めます。
- 葉が幅広で厚い:アラビカム、ボエミアナム。ボエミアナムは枝先に大きな葉を集め、株全体が低くまとまります。
- 葉が細い:ソマレンセ、オレイフォリウム。オレイフォリウムは名前のとおりオリーブのような細長い葉をつけます。
- 葉の縁が波打つ:クリスパム。細い葉の縁が細かく縮れるのが目印で、名前の「crispum」も縮れた様子に由来します。
- 花に筋が入る:ソマレンセとクリスパムは、花の喉の部分に赤い筋が目立ちます。マルチフロルムは白い花びらの縁が赤く色づき、すっきりとした印象になります。
花の色だけで種類を決めるのは難しいところがあります。オベスムを中心にした園芸品種が、赤、ピンク、白、濃い赤紫、覆輪(花びらの縁だけ色が違うもの)と幅広い色を持っているためです。花で見分けるのは、幹と葉で候補をしぼってからにすると確実です。
園芸品種の見どころ|八重咲き・花色・斑入り
流通しているアデニウムの多くは、原種そのものではなく、タイなどで作られた園芸品種です。とくにタイでは交配が盛んで、花の形や色を楽しむための品種が数多く出回っています。
一重の濃いピンク、覆輪、八重咲き。園芸品種は花の形と色の組み合わせで選び分けます。(AIで生成したイメージです)
園芸品種を見るときの軸は、おもに次の3つです。
- 花の形:5枚の花びらが開く一重咲きのほか、花びらが重なる八重咲き、さらに重なりの多いものまであります。八重咲きは1輪の見ごたえがあり、一重咲きは花数が多く軽やかな印象になります。
- 花の色と模様:赤やピンクの濃淡、白、覆輪、花びらに筋や斑点が入るものなど。濃い赤紫を「黒」と呼ぶ品種名もあります。
- 葉の斑:葉に白や黄の斑が入る品種もあります。斑の部分は光合成をしにくいため、緑の葉の株より成長がゆっくりになります。
花色を確実に引き継ぐため、園芸品種の多くは接ぎ木か挿し木で増やされています。接ぎ木株は台木の部分だけが太り、接ぎ口から上はあまり太りません。幹の姿よりも花を楽しむ株と考えると、選ぶときにずれにくくなります。実生と接ぎ木・挿し木で幹の育ち方がどう変わるかはアデニウムの育て方の前半でも触れています。
名前のまぎらわしいところ|タイソコトラナム・亜種・表記ゆれ
アデニウムは、売り場の札と植物学上の名前がずれていることがよくあります。迷いやすい点をまとめておきます。
- タイソコトラナムはソコトラナムではない:「タイソコトラナム」の名で流通している株は、ソコトラ島のソコトラナムではなく、タイで選抜されたアラビカム系の株を指すことが多い名前です。幹が太く低く育つ姿がソコトラナムを思わせることから呼ばれるようになりました。本物のソコトラナムは流通がきわめて少なく、成長もずっと遅い種類です。
- クリスパムはソマレンセの仲間:クリスパムはソマレンセの変種として扱われることが多く、札に「ソマレンセ var. クリスパム」と書かれることもあります。地中に丸い塊根を作る性質は、ソマレンセ本体とは大きく違います。
- 亜種として書かれることがある:オベスムに多くの種類を含める見方では、アラビカムやソマレンセが「オベスムの亜種」と書かれます。札に「subsp.」とあっても、別の植物という意味ではありません。
- カタカナ表記の揺れ:「オベスム/オベサム」「アラビカム/アラビクム」「マルチフロルム/マルチフローラム」のように表記が分かれます。迷ったときは学名で確かめると確実です。
- 「砂漠のバラ」の範囲:もともとはオベスムを指す呼び名ですが、売り場ではアデニウム全体、とくに花の園芸品種を広く指して使われています。
育てやすい種類と、扱いが変わる種類
アデニウムの育て方の基本(日によく当てる、葉がある季節は乾いたらたっぷり、冬は10℃を目安に室内で休ませる)は、どの種類にも共通します。そのうえで、種類ごとに気をつける点が少しずつ違います。
| 種類 | 育てやすさ | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| オベスム | 育てやすい | 日照が足りないと枝が間延びし、花が減る |
| アラビカム | 育てやすい | 幹が太るぶん鉢が窮屈になりやすい。植え替えで浅植えに |
| ソマレンセ | ふつう | 背が伸びるので、置き場所の高さを見ておく |
| クリスパム | ややコツがいる | 塊根が湿ったままだと傷みやすい。水はけを最優先に |
| マルチフロルム | ややコツがいる | 冬の休眠中はしっかり乾かす。成長はゆっくり |
| ソコトラナム | 難しい | 寒さと過湿に弱く、成長がきわめて遅い |
はじめての1鉢には、オベスムかアラビカムが選びやすい種類です。オベスムは丈夫で花もよく咲き、育っていく手応えを感じやすい種類です。アラビカムは幹の姿を楽しみたい人に向いていて、日に当てて育てるほど低く締まった株になります。
クリスパムや南部アフリカの種類は、地中の塊根や幹に水がたまりやすく、冬の休眠を乾かし気味に過ごさせるのが大切です。種類ごとの冬の温度の考え方は塊根植物の冬越しに、はじめての塊根植物の選び方は塊根植物の初心者におすすめの種類にまとめています。
種類を選ぶときに見ておきたいこと
同じ種類でも、株の来歴によって育ち方は大きく変わります。種類を決めたら、次の点もあわせて見ておくと選びやすくなります。
- 実生か、接ぎ木・挿し木か:種から育った実生株は、根元がそのまま太って幹になります。幹の姿を楽しみたいなら実生株、花色を確実に楽しみたいなら接ぎ木や挿し木の株と、目的で選び分けると迷いません。
- 幹と葉のバランス:アラビカムなら幹が低く締まっているか、オベスムなら枝が間延びしていないか。日照の足りない環境で育った株は枝が細く長くなり、取り戻すのに時間がかかります。
- 札の名前と姿が合っているか:前の節で触れたように、名前と実際の種類がずれていることがあります。幹の形と葉の特徴が、札の種類と合っているかを見ておくと安心です。
値段の幅と、実生か接ぎ木か・種類の違いで値段がどう変わるかは砂漠のバラ(アデニウム)の値段にまとめています。実生株と輸入株の違いの考え方は、オベサを例にした実生株と輸入株の違いも参考になります。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。ほかの塊根植物の種類はパキポディウムの種類でも紹介しています。
よくある質問
アデニウムは全部で何種類ありますか?
5種から10種ほどです。オベスムにほかの多くを亜種として含める見方と、アラビカムやソマレンセなどをそれぞれ独立した種とする見方があり、資料によって数が変わります。園芸の世界では、オベスム、アラビカム、ソマレンセ、ソコトラナム、マルチフロルムなどを種類として呼び分けるのが一般的です。
オベスムとアラビカムはどう見分けますか?
幹と葉で見分けます。オベスムは壺形の幹から枝を上へ伸ばし、葉は細めでつやがあります。アラビカムは幹が低く横に幅広く太り、葉は幅広で厚く、表面に細かな毛があります。若い苗のうちは姿が似ているので、葉の幅と手触りを見ると確実です。
タイソコトラナムとソコトラナムは同じ植物ですか?
別の植物として考えるのが一般的です。タイソコトラナムは、タイで選抜されたアラビカム系の株を指す流通名で、幹が太く低く育つ姿からこう呼ばれています。ソコトラナムはソコトラ島だけに自生する種類で、流通がきわめて少なく、成長もずっと遅い種類です。