蒼角殿(ボウィエア・ボルビリス)の育て方|水やり・休眠・冬越しと増やし方

蒼角殿(ボウィエア・ボルビリス)は、緑色の球根から糸のように細かく枝分かれするつるを伸ばす、南アフリカ原産の球根植物です。葉の代わりに緑のつるで光合成をするので、つるが伸びている間が生育期、つるが枯れたら休眠と、季節より株の様子で水やりを切り替えます。球根は土の上に出して植え、上から水をかけずに株元の土へ。冬は5℃を下回らない明るい場所に置き、休眠中は断水します。
蒼角殿(そうかくでん/Bowiea volubilis/ボウィエア・ボルビリス)は、鮮やかな緑の丸い球根から、糸のように細かく枝分かれするつるを伸ばす球根植物です。塊根植物の棚に一緒に並ぶことが多いものの、太っているのは根ではなく**玉ねぎと同じ鱗茎(りんけい)**で、葉もほとんど出しません。育て方のつまずきは、「いつ水をやればいいのか分からない」と「球根が柔らかくなった」の2つに集まります。この記事では、季節ではなくつるの様子で一年を読む考え方から、置き場所と水やり、植え方と植え替え、冬越し、花と種、増やし方、調子を崩したときのサインまでを順に並べます。塊根植物というくくり全体の考え方は塊根植物・コーデックス入門にまとめています。
蒼角殿(ボウィエア・ボルビリス)とは|葉の代わりに、つるで光合成をする球根
ボウィエアはキジカクシ科(かつてはユリ科やヒアシンス科に分けられていた仲間)の植物で、南アフリカから東アフリカにかけての、岩場や低木の茂みの縁に自生します。「蒼角殿」は日本の園芸での名前で、ラベルには「ボウィエア」「ボウイエア」「ボルビリス」「ウォルビリス」など表記の揺れがありますが、指している植物は同じです。英語圏では「クライミング・オニオン(つる性の玉ねぎ)」とも呼ばれます。
姿の特徴は次の3つです。
- 球根は地上に出ている:直径は数センチから、年数を重ねると10〜20cmほどに。表面は緑色で、球根そのものも光合成をします。古くなった外側の鱗片は、茶色い紙のような薄皮になって球根を包みます。
- つるが葉の役目をする:生育期に頂点からつるを伸ばし、細かく枝分かれして、条件がよければ数メートルにもなります。本当の葉は芽生えたばかりの若い苗に出る程度で、大きな株ではほとんど見られません。
- つるは一季ごとに枯れる:一回の生育期が終わるとつるは枯れ、球根だけで休みます。次の生育期には、また頂点から新しいつるが出ます。
茶色い薄皮は剥がさずに残します。 見た目を整えたくて剥がしたくなりますが、強い日差しや乾燥から球根を守っている層です。自然に浮いて取れるものだけを外す程度にとどめます。
もうひとつ知っておきたいのが、植物全体に毒性があることです。球根やつるには強心配糖体と呼ばれる成分が含まれ、口に入れると危険とされています。植え替えや鱗片を外す作業のときは手袋をし、作業後は手を洗い、子どもやペットの手が届かない場所に置きます。触れて肌がかぶれる人もいるので、汁が付いたら洗い流します。
一年の流れ|季節ではなく、つるの様子で読む
蒼角殿でいちばん迷うのが、生育期がいつなのかという点です。自生地には冬に雨が降る地域の系統も夏に雨が降る地域の系統もあり、日本の鉢植えでは秋から春に育ち夏に休む株が多いものの、夏に動く株や、一年に2回つるを出す株もあります。カレンダーで決めるより、つるが伸びているあいだが生育期、つるが枯れたら休眠と読むのが確実です。
| 株の様子 | 状態 | 水やり |
|---|---|---|
| 頂点から新しい芽が見えた | 生育期のはじまり | 少量から再開 |
| つるが伸び、緑が濃い | 生育期 | 土が乾いたらたっぷり |
| つるの先が黄ばみはじめた | 休眠に向かう | 間隔を空けて減らす |
| つるが茶色く枯れた | 休眠 | 断水(ごく軽く湿らす程度まで) |
秋から春に育つ株の、日本でのおおよその一年は次のとおりです。
- 秋(9〜11月):涼しくなると頂点から芽が出て、つるが伸びはじめる。水を再開する。
- 冬〜春(12〜5月):つるを伸ばして育つ時期。明るい場所に置き、乾いたらたっぷり。
- 初夏(5〜6月):気温が上がるとつるが黄ばみ、枯れていく。水を減らす。
- 夏(7〜8月):球根だけで休む。風の通る明るい日陰で断水。
同じように秋から春に育つ仲間には、亀甲竜(ディオスコレア・エレファンティペス)やオトンナ、チレコドンがあり、並べて育てると水やりのリズムをそろえやすくなります。
置き場所|生育期は明るく、休眠中は涼しく風の通る場所に
生育期のつるは光をよく使います。つるが伸びているあいだは、できるだけ明るい場所に置きます。光が足りないと、つるが細く白っぽく間延びし、球根の緑も淡くなります。
- 秋・春の生育期:屋外の日なたか、室内なら南向きの窓辺。雨に長く当て続けない場所を選びます。
- 冬の生育期:日当たりのよい室内の窓辺。最低温度は後の冬越しの節で。
- 真夏の休眠期:直射を避けた、風の通る明るい日陰。鉢の中が蒸れると球根が傷みやすくなるので、地面に直置きせず棚に上げます。
- 夏も動いている株:真夏の西日だけ避け、午前の光が当たる場所へ。
緑色の球根は、急に強い直射に当てると表面が日焼けして白や茶色に抜けることがあります。室内で過ごした株を外に出すときは、数日かけて半日陰から慣らします。
つるの仕立ては、芽が伸びはじめた時点で輪にした針金やリング支柱を鉢に挿しておくのが手軽です。伸びたつるはそのまま絡みついていき、隣の鉢に渡るのを防げます。つるは細く折れやすいので、伸びてから無理にほどき直さず、伸びる先を支柱へ導く程度にします。
水やり|つるがあるうちはたっぷり、枯れたら断水
水やりの基本は、つるが伸びているあいだは、土が中まで乾いたら鉢底から流れ出るまでたっぷり。乾いたかどうかは、鉢を持ち上げたときの軽さか、鉢の縁から挿した竹串の湿り気で分かります。
- 芽が出たら:最初の1〜2回は土が軽く湿る程度にとどめ、つるが伸びはじめてから通常量へ。
- 生育期:土が乾いたらたっぷり。気温と光によりますが、1週間前後の間隔になることが多くなります。受け皿の水は捨てます。
- つるが黄ばみはじめたら:間隔を空けて量も減らしていきます。
- つるが枯れたら:断水。夏の休眠中にどうしても乾きすぎが気になるときは、月に1回、鉢の縁から土の表面を湿らせる程度にとどめます。
水は球根の上からかけず、株元の土に注ぎます。 球根の頂点やつるの付け根、薄皮のすき間に水が溜まると、そこから傷みが始まります。鉢の縁に沿って注ぐか、細口のジョウロを使うと安全です。
ほかの塊根植物と並べたときの間隔の違いは塊根植物の水やりで表にしています。迷ったときは待つほうが安全で、球根に蓄えがあるぶん、乾きすぎですぐに枯れることはまずありません。
肥料は生育期に、緩効性の置き肥を規定量より少なめに一度置くか、薄めた液体肥料を月に1〜2回で十分です。休眠中は与えません。
植え方と植え替え|球根は土の上に出す
用土と鉢
用土は水はけを最優先にします。市販の多肉植物・サボテン用の土に軽石を足すだけでも育ちます。自分で配合するなら、赤玉土小粒を3〜4割、日向土や軽石を4〜5割、残りを鹿沼土やくん炭にして、有機質はごく少量に。考え方は用土と鉢の選び方にまとめています。
鉢は、球根の直径より一回り大きい程度の素焼き鉢やスリット鉢が合います。大きすぎる鉢は土が乾きにくく、球根の傷みにつながります。
球根の位置
球根は下の3分の1ほどだけを土に埋め、残りは地上に出して植えます。 自生地でも球根は地表に座るように育ち、地上に出ている部分も光合成をしています。深く埋めると、球根の表面が常に湿った土に触れて腐りやすくなります。根は球根の底から下に向かって伸びるので、底がしっかり用土に接していれば十分です。
植え替え
1〜2年に1回、休眠の終わりごろ、芽が動き出す少し前に行います。秋から春に育つ株なら8月下旬〜9月ごろ、春に動く株なら3月ごろです。
- 鉢から抜き、古い土を軽く落とす。
- 黒く柔らかくなった根や、ぶよぶよした鱗片があれば取り除く。
- 乾いた新しい用土に、球根の下3分の1が埋まる高さで植え付ける。
- 1週間ほどは水を与えず、根の傷を乾かしてから水やりを始める。
球根が鉢の縁に当たっている、鉢底から根が出ている、水がしみ込みにくくなった、といった様子が見えたら、一回り大きな鉢へ移す合図です。夏型・冬型ごとの時期の見極め方は塊根植物の植え替え時期にまとめています。
つるが茶色く枯れたら根元で切り取り、球根だけで休ませます。(AIで生成したイメージです)
冬越し|最低5℃を目安に、育っている株は光を切らさない
蒼角殿は寒さに極端に弱い植物ではありませんが、霜や凍結には耐えません。**最低温度の目安は5℃**で、これを下回る地域では冬は室内に取り込みます。種類ごとの最低温度の目安を並べて見たいときは塊根植物の冬越しが参考になります。
冬の過ごし方は、そのとき株が動いているかどうかで変わります。
- 冬につるが伸びている株:日当たりのよい窓辺に置き、土が乾いたら晴れた日の午前中に水を与えます。光が足りないとつるが間延びするので、窓辺から離さないのが要点です。
- 冬に休んでいる株:断水し、光より温度の安定を優先します。球根が硬ければ、つるがなくても何も起きていません。
窓ガラスのすぐそばは、夜間に室温より数℃下がります。日中は窓辺、夜は部屋の内側へ寄せるか、厚手のカーテンを一枚引くだけでも違います。暖房の温風が直接当たる場所は、つるも土も一気に乾くので外します。
花と種|つるの先に咲く、緑白色の小さな星形の花
つるがよく伸びた株は、枝分かれした細いつるのあちこちに、直径1cmほどの緑白色の星形の花を咲かせます。花びらは6枚で、目立つ色ではありませんが、細いつるに点々と付く姿は近くで見るとよく分かります。開花は生育期の後半に重なることが多く、秋から春に育つ株なら春先、つるが充実したころです。
花のあとには小さな実ができ、熟すと薄い黒い種がこぼれます。1株でも種が付くことがあり、これがいちばん手軽な増やし方の入口になります。花が咲いても株の負担になるほどではないので、つるはそのまま伸ばして構いません。
増やし方|種、鱗片、分球の3通り
蒼角殿は球根植物のなかでも増やしやすい部類です。目的に合わせて選びます。
種から育てる(実生):採れた種や手に入れた種は、新しいうちにまくほうが発芽がそろいます。
- 水はけのよい細かめの用土を浅い鉢に入れ、あらかじめ湿らせておく。
- 種を重ならないように並べ、ごく薄く土をかぶせる。
- 鉢ごと浅い水に浸ける腰水で表面を乾かさないようにし、明るい日陰に置く。
- 芽がそろったら腰水をやめ、少しずつ光に慣らしていく。
芽生えたばかりの苗は細い葉を出し、根元に小さな球根を作りはじめます。最初の1〜2年は休眠に入らせず、明るい場所で育て続けると球根が太りやすくなります。
鱗片を外して増やす(鱗片挿し):球根の外側にある、まだ緑で肉厚の鱗片を、付け根から1〜2枚はがし取ります。数日乾かしてから、乾いた用土の上に寝かせるか、付け根を浅く挿しておくと、付け根に小さな子球と根ができてきます。生育期のはじめに行うと進みが早く、親株の負担も少なくて済みます。外すのは外側の数枚までにとどめます。
分球:大きく育った株は、球根が自然に2つ、3つに分かれることがあります。植え替えのときに、それぞれに根が付いていることを確かめて手で分け、切り口を乾かしてから別々の鉢に植えます。
外した鱗片の付け根には、しばらくすると小さな子球と根ができます。(AIで生成したイメージです)
蒼角殿と同じように冬の温度で選べるほかの種類は、塊根植物の初心者におすすめの種類で並べています。
迎えるときに見るところと、調子を崩したときのサイン
選ぶときに見るところは、次のあたりです。
- 硬さ:球根全体が硬く締まっているもの。指が沈む場所があれば避けます。
- 重さ:大きさのわりに重いもの。
- 底と付け根:球根の底やつるの付け根に、黒ずみや湿った傷みがないもの。
- 色:見えている部分の緑がはっきりしているもの。茶色い薄皮が付いているのは自然な状態です。
国内で種から育てられた株と、輸入株の違いは実生株と現地球(輸入株)の違いにまとめています。
調子の変化は、つると球根の硬さに出ます。
- つるが黄ばんで枯れてくる:休眠入りのサインであることがほとんどです。球根が硬ければ正常なので、水を減らして枯れきるのを待ち、根元で切ります。
- つるが細く白っぽく、間延びする:光が足りていません。明るい場所へ寄せます。
- 球根が柔らかい、押すとへこむ、底や頂点が黒ずむ:腐りです。過湿や、球根の上に溜まった水がきっかけになります。水を止めて鉢から出し、傷んだ鱗片を外側から外して、硬い組織が出るまで取り除きます。数日乾かしてから乾いた用土に置き直します。
- 休眠中に球根が少し痩せる・外側の鱗片が乾く:蓄えを使っているだけで、硬ければ正常です。乾いた鱗片はそのまま新しい薄皮になります。
- 球根の表面が白や茶色に抜ける:急に強い直射に当たった日焼けです。少し光を和らげた場所へ移します。
- つるの付け根に白い綿のようなかたまり:カイガラムシの類。数が少ないうちに綿棒などで取り除きます。
- 時期になっても芽が出ない:硬くて重いうちは待ちます。株によっては半年近く休むこともあります。
どのサインも、光と水と温度のどれかが偏ったときに出ます。蒼角殿は球根に蓄えがあるぶん、多少崩れても立て直しが利く植物です。つるの様子を見て水を合わせることさえ押さえれば、季節がずれて動く株とも無理なく付き合えます。
縁側では、ユーフォルビアのオベサ鉄甲を中心に、個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。同じく秋から春につるを伸ばす亀甲竜(ディオスコレア・エレファンティペス)や、冬に育つオトンナもあわせてどうぞ。
よくある質問
蒼角殿は夏型ですか、冬型ですか?
どちらとも言い切れない植物です。自生地には冬に雨が降る地域と夏に雨が降る地域の両方の系統があり、日本の鉢植えでは秋から春に育って夏に休む株が多いものの、夏に動く株や年に2回つるを出す株もあります。季節で決めず、つるが伸びているあいだは乾いたらたっぷり水を与え、つるが枯れたら断水する、と株の様子に合わせるのがいちばん確実です。
つるが全部枯れてしまいました。枯死したのでしょうか?
多くの場合は休眠に入っただけです。蒼角殿のつるは一回の生育期ごとに枯れ、球根だけで休みます。球根を指で押して硬く締まり、持ったときに大きさのわりに重ければ生きています。枯れたつるは根元で切り、水を止めて休ませると、次の生育期に頂点から新しい芽が出ます。球根が柔らかい、黒ずんでいる場合は腐りなので、鉢から出して傷んだ部分を取り除きます。
球根の茶色い皮は剥がしたほうがよいですか?
剥がさずに残します。茶色い薄皮は古くなった外側の鱗片が乾いたもので、強い日差しや乾燥から球根を守っています。自然に浮いて取れかけているものを外す程度は構いませんが、緑の部分を見せるために無理に剥がすと、表面が日焼けしたり傷んだりしやすくなります。
蒼角殿に毒はありますか?
あります。球根やつるには強心配糖体と呼ばれる成分が含まれ、口に入れると危険とされています。植え替えや鱗片を外す作業のときは手袋をし、作業後は手を洗います。汁で肌がかぶれる人もいるので、付いたら洗い流してください。子どもやペットの手が届かない場所に置くと安心です。
いちばん簡単な増やし方はどれですか?
種が採れているなら実生、採れていなければ鱗片挿しが手軽です。鱗片挿しは、球根の外側にある緑で肉厚の鱗片を付け根から1〜2枚はがし、数日乾かしてから乾いた用土に寝かせておくと、付け根に小さな子球と根ができます。生育期のはじめに行うと進みが早くなります。大きな株が自然に分かれていれば、植え替えのときに根の付いた単位で分ける分球もできます。