ボスウェリア・ネグレクタの実生|実生株と現地球の違い、種まきの手順、苗の冬越し

ボスウェリア・ネグレクタの実生株は、種から国内で育てられ、鉢のなかで根が働いている株です。現地球のような太い幹と剥がれる樹皮の迫力はまだありませんが、根を出させる工程がいらず、迎えたその日から普通の管理が始められます。種から始めるなら、沈む種を選んで5〜8月に無肥料の用土へまき、25〜30℃で表面を乾かさずに待つのが基本です。発芽そのものより難しいのは最初の冬で、寒さに弱い苗を10℃以上の明るい場所で、乾かしきらずに越させることが分かれ目になります。
ボスウェリア・ネグレクタは、東アフリカの乾いた土地に育つカンラン科の木で、黒っぽい樹脂を出すことから「ブラックフランキンセンス」とも呼ばれます。薄く剥がれる樹皮と、縮れた小さな葉が並ぶ枝ぶりが人気の塊根植物です。売り場では輸入された現地球のほかに、種から育てられた実生株も見かけるようになりました。実生(みしょう)は、種から育てること、または種から育った株を指す言葉です。
この記事では、ネグレクタの実生株が現地球とどう違うのか、迎えるときに何を見るか、種から始める場合の手順、そしていちばんのつまずきどころになる最初の冬の越し方を順にまとめます。種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。
ネグレクタの実生株とは|現地球と何が違うか
売り場のネグレクタは、種から国内で育てられた実生株と、自生地から運ばれてきた現地球(輸入株)に分かれます。現地球には、根を出させてから売られる発根済みの株と、根を落とした状態のまま並ぶ未発根の株があります。違いが大きいのは、根が働いた状態で手元に来るかどうかと、幹の姿です。
| 実生株 | 現地球(輸入株) | |
|---|---|---|
| 育ってきた場所 | 国内の鉢のなか | 東アフリカの乾燥地 |
| 根の状態 | 最初から鉢のなかで張っている | 根を落として運ばれる |
| 幹の姿 | 細めで素直に立ち上がる | 太く低く、樹皮の剥がれや枝の癖が出ている |
| 迎えてからの手間 | 普通の管理からすぐ始められる | 未発根なら根を出させる工程が要る |
| 姿の変わり方 | 年ごとに太り、樹皮ができていく | 姿はほぼできあがっている |
ネグレクタの現地球は、未発根のまま迎えると根が出ずに終わることも少なくありません。実生株は日本の季節のなかで育ってきているため、置き場所や水やりのリズムになじみやすいのが利点です。その一方で、若いうちは幹が細く、枝が上へ伸びやすいので、現地球のずんぐりした姿とは印象がかなり違います。
どちらが良いということはなく、できあがった姿を迎えるか、姿ができていく過程を見るかの違いです。札の意味や迎えたあとの手間の差は、実生株と輸入株の違いでオベサを例に整理していて、考え方はそのまま重なります。現地球の根の出させ方は塊根植物の発根管理にまとめました。
実生株を選ぶときに見るところ
実生株は根が張っているぶん、確かめることは多くありません。次の4つを見ておくと安心です。
- 幹の硬さ:根元を指で軽く押して、張りがあるか。柔らかく沈む株は、根か幹が傷んでいることがあります。
- ぐらつき:幹を軽く揺すって、鉢のなかで固定されているか。根が働いている株は動きません。
- 葉や芽の動き:生育期なら、枝先に新しい葉が展開しているか。秋から冬は落葉していても問題ありません。
- 根元のふくらみ:同じ年数でも、根元がふくらみはじめている株と、枝のように細いままの株があります。将来の姿を楽しみたいなら、根元に量感が出はじめた株が目安になります。
冬の売り場では、葉のない実生株が並ぶことがあります。落葉は休眠のしるしで、枯れているわけではありません。ただ、迎えてすぐの冬は置き場所が変わる負担も重なるため、はじめての一鉢は、葉が動いている春から夏に迎えると、株の調子をつかみやすくなります。
種から育てる|種の入手と良い種の見分け方
ネグレクタの種は、国内の種苗店や海外の業者を通じて手に入ります。多くは自生地で採られた野生採種の種で、海外から取り寄せる場合は植物検疫の手続きが関わります。同じ仲間のボスウェリア・サクラ(乳香の木)なども、種の扱いとまき方はほぼ同じです。
野生採種の種には、中身が育っていない種が混ざりやすいことを知っておくと、発芽しなかったときに慌てずに済みます。見分けの目安になるのが、水に浮かべる方法です。
- まく前に水に浸ける:常温の水に半日〜1日ほど浸けます。殺菌剤を薄めた水を使う方法もあります。
- 沈んだ種をまく:しばらくたっても浮いたままの種は、中身が詰まっていないことが多いとされます。
- 届いたら早めにまく:採ってから時間が経った種ほど発芽しにくくなります。採種時期が新しいものを選びます。
種は用土の上に間隔をあけて置き、ごく薄く覆います。(AIで生成したイメージです)
まく時期と発芽の条件、播種の手順
ネグレクタは夏に育つ塊根植物で、発芽にもしっかりした暖かさが必要です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| まく時期 | 気温が25℃を超えてくる5〜8月 |
| 発芽に向く温度 | 25〜30℃。30℃前後でよく動く |
| 発芽までの日数 | 早いもので数日〜2週間ほど |
| 用土 | 赤玉土・軽石などの無機質で、肥料なし |
| 水 | 腰水で表面を乾かさない |
まく手順は、ほかの塊根植物の実生とほとんど変わりません。
- 用土を湿らせる:鉢に無肥料の用土を入れ、トレーに水を張って下から吸わせる
- 種を置く:2cmほどの間隔で用土の上に並べる。苗の根の伸びが早いので、1鉢に1粒ずつまく方法もある
- ごく薄く覆う:種が隠れるか隠れないか程度に、細粒の用土をかける
- 覆いをして温める:透明な蓋かラップをかけ、日中は少し開けて空気を入れ替える。気温が足りない時期はヒーターマットで30℃近くに保つ
発芽したら、双葉が開いたところで覆いを外し、明るい場所へ移します。光が足りないと軸がひょろりと伸びて、根元が細いまま育ちます。直射には数日かけて慣らしていきます。
- 腰水:本葉が出そろったら水位を下げ、1〜2か月かけて上からの水やりに切り替えます。
- 風:苗が並んだ鉢は蒸れやすいので、弱い風が通る場所に置きます。
- 肥料:本葉が数枚になってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。
光が足りない季節や室内では、植物育成ライトを使うと徒長を抑えやすくなります。用土の組み方は用土の選び方にまとめています。
苗の最初の冬越し|いちばんの分かれ目
ネグレクタの実生でもっとも苗を失いやすいのは、発芽のときではなく最初の冬です。ボスウェリアは寒さにとても弱く、まだ幹に水を蓄えていない苗はなおさらです。
- 置き場所:気温が15℃を下回りはじめたら室内へ。最低でも10℃以上、できれば15℃前後の明るい場所に置きます。
- 水やり:親株は落葉したら水を切って休ませますが、苗は乾かしきらないのが要点です。月に1〜2回、暖かい日の午前中に用土の表面が湿る程度の水を与えます。
- 落葉:秋に葉が黄ばんで落ちるのは、休眠に入るしるしです。幹が硬いままなら心配はいりません。幹が柔らかくなってきたときは、寒さか水の当たりすぎを疑います。
- 春の目覚め:枝先に新しい葉が動き出すまでは、水を急に増やしません。葉が開いてから少しずつ量を戻します。
冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しに、春からの水の戻し方は塊根植物の水やりにまとめています。最初の植え替えは、冬を越した翌年の5〜6月、株がよく動いている時期に行います。根を崩さずに用土ごと持ち上げて、1株ずつ植え分けます。手順は塊根植物の植え替えと同じです。
実生株を太らせ、枝数を増やす仕立て方
ネグレクタは塊根植物のなかでは育ちの早いほうで、条件が合うと1年で枝を分けた苗になります。ただ、そのままでは幹が上へ伸びて、細長い木のような姿になりがちです。低く締まった姿に近づける方法はいくつかあります。
種から1〜2年ほどの株のイメージ。根元に量感が出て、樹皮が剥がれはじめます。(AIで生成したイメージです)
- 摘心で枝を分ける:伸びた枝の先を生育期に摘むと、下の節から枝が分かれ、低く詰まった枝ぶりになります。
- 強い光と風で育てる:生育期はよく日に当てて風を通すと、節の間が詰まり、幹が太りやすくなります。急に強い日差しへ出すと葉が焼けるので、数日かけて慣らします。
- 根上げ:植え替えのたびに、根元のふくらみを少しずつ土の上に出して植えます。太った根が幹とひと続きに見え、塊根らしい量感が出ます。
- 鉢を急に大きくしない:根が回ったら一回り大きい鉢へ。大きすぎる鉢は用土が乾かず、冬に根を傷めます。
姿の整え方は塊根植物の仕立て方にも書きました。夏に育つ同じリズムの仲間では、グラキリスの実生も同じ手順で始められます。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
ネグレクタの実生株と現地球は、どちらを選べばいいですか?
根が張った状態で迎えて、その日から普通の管理を始めたいなら実生株が確実です。現地球は太く低い幹と剥がれた樹皮の姿を迎えられる一方、未発根の株なら根を出させる工程が要り、出ないまま終わることもあります。はじめの一鉢なら実生株か発根済みの株を選び、一年の管理のリズムをつかんでから現地球に手を伸ばすと無理がありません。
ボスウェリアの種が発芽しません。何が原因ですか?
まず温度を確かめます。ネグレクタは25〜30℃でよく動き、20℃を下回る日が続くと動き出さないまま傷むことがあります。次に種そのもので、野生採種の種には中身の育っていないものが混ざりやすく、水に浮いたままの種は発芽しないことが多いとされます。採ってから時間の経った種も発芽しにくくなります。
実生の苗は、冬に水を切ってもいいですか?
親株は落葉したら水を切って休ませるのが基本ですが、まいた年の苗は幹に蓄えている水が少なく、乾かしきると細い根が枯れて春に動けなくなります。10℃以上、できれば15℃前後の明るい室内に置き、月に1〜2回、暖かい日の午前中に用土の表面が湿る程度の水を与えて越させます。