実生

パキプスの実生|実生株と現地球の違い、種まきの手順と発芽温度、何年で太るか

木の縁側の棚に小さな角鉢が並び、根元がふくらんだオペルクリカリア・パキプスの実生苗が細い枝に小さな丸い葉をつけている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

パキプスの実生株は、種から国内で育てられ、鉢のなかで根が働いている株です。現地球のような荒々しい肌とねじれた幹はまだありませんが、迎えたその日から普通の管理が始められ、育てるうちに幹がとっくり形に太っていきます。種から始める場合は、新しい種を無肥料の細かい用土にまき、25〜30℃で表面を乾かさずに待つのが基本です。成長はゆっくりで、幹が手のひらに乗る太さになるまでには5年ほど、見応えのある姿には10年単位の時間がかかります。

オペルクリカリア・パキプスは、コルク質のごつごつした幹で「塊根植物の王様」とも呼ばれる植物です。売り場には、マダガスカルから運ばれてきた現地球と並んで、種から育てられた実生株も見かけるようになりました。実生(みしょう)は種から育てること、または種から育った株を指す言葉です。

この記事では、実生株が現地球とどう違うのか、迎えるときに何を見るか、種から始める場合の手順、そして何年でどのくらいの姿になるのかを順にまとめます。迎えた株の水やりや落葉期の管理はオペルクリカリア・パキプスの育て方に、種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。

パキプスの実生株とは|現地球と何が違うか

売り場のパキプスは、大きく3つに分かれます。種から育てられた実生株、輸入後に根を出させてから売られる発根済みの現地球、根を落とした状態のまま並ぶ未発根の現地球です。いちばん大きな違いは、根が働いた状態で手元に来るかどうかと、幹の姿の2つです。

実生株現地球(輸入株)
育ってきた場所国内の鉢のなかマダガスカルの自生地
根の状態最初から鉢のなかで張っている根を落として運ばれる
幹の姿なめらかなとっくり形が多い隆起やねじれ、荒い肌が出ている
迎えてからの手間普通の管理からすぐ始められる未発根なら根を出させる工程が要る
姿の変わり方年ごとに太り、肌ができていく姿はほぼできあがっている

現地球の荒々しい姿は、乾いた岩場で長い年月をかけてできたものです。実生株は鉢のなかで水と光を受けて育つため、若いうちは幹がまっすぐ素直にふくらみ、肌もなめらかに見えます。年数を重ねるとコルク質の肌が少しずつ厚くなり、枝の分かれ方にも株ごとの個性が出てきます。

どちらが良いということはなく、できあがった姿を迎えるか、姿ができていく過程を見るかの違いです。札の意味や迎えたあとの手間の差は、実生株と輸入株の違いでオベサを例に整理していて、考え方はそのまま重なります。値段の幅はパキプスの価格にまとめました。

実生株を選ぶときに見るところ

実生株は根が張っているぶん、現地球より見るところが少なく済みます。それでも、次の4つは確かめておくと安心です。

  • 幹の硬さ:根元を指で軽く押して、張りがあるか。柔らかく沈む株は、根か幹が傷んでいることがあります。
  • ぐらつき:幹を軽く揺すって、鉢のなかで固定されているか。根が働いている株は動きません。
  • 枝先の芽:生育期なら、枝先に新しい葉や芽が動いているか。休眠期は葉がなくても問題ありません。
  • 育てた年数の表記:「実生3年」などの表記があれば、太さと見比べる目安になります。同じ年数でも、育て方で太さは倍ほど変わります。

ひとつ知っておきたいのは、「実生」の札でも、種からではなく挿し木で増やした株がまれに混ざることがある点です。挿し木の株は根元がふくらみにくく、幹が枝のように細いまま育つことが多いので、根元がとっくり形にふくらんでいるかどうかが見分けのひとつになります。出自が気になるときは、売り手に増やし方を尋ねてみるのがいちばん確かです。

種から育てる|種の入手と発芽の条件

パキプスは雄の株と雌の株が分かれている植物で、種を採るには両方の花が同じ時期に咲く必要があります。国内で花を咲かせる株そのものが多くないため、種が流通する機会は限られます。手に入るのは、国内の栽培家が採った種か、海外の種苗業者から取り寄せる種がほとんどです。海外から取り寄せる場合は、植物検疫の手続きが関わります。

軽石まじりの用土を入れた小鉢に、ピンセットで小さな丸い種を間隔をあけて置いている手元 種は用土の上に間隔をあけて置き、ごく薄く覆います。(AIで生成したイメージです)

種は小さな硬い殻に包まれていて、採ってから時間が経つほど発芽しにくくなるとされます。採種時期が新しいものを選び、届いたら早めにまくのが基本です。

発芽の条件は、夏に育つ塊根植物の多くと同じです。

項目目安
まく時期気温が25℃を超えてくる5〜7月
発芽に向く温度25〜30℃
発芽までの日数1週間〜1か月ほど。揃いにくい
用土細粒の赤玉土・軽石などの無機質で、肥料なし
水腰水で表面を乾かさない

パキプスの種は発芽が揃いにくく、早いものと遅いもので数週間の差が出ることがあります。最初の芽が出てからも、残りの種はしばらくそのまま待ちます。

種のまき方と、発芽してから最初の冬まで

まく手順は、ほかの塊根植物の実生とほとんど変わりません。

  1. 用土を湿らせる:小さめの鉢に無肥料の用土を入れ、トレーに水を張って下から吸わせる
  2. 種を置く:1〜2cmほどの間隔で用土の上に並べる
  3. ごく薄く覆う:種が隠れるか隠れないか程度に、細粒の用土をかける
  4. 覆いをして温める:透明な蓋かラップをかけ、日中は少し開けて空気を入れ替える。夜に冷える時期はヒーターマットで25℃前後を保つ

発芽したら、苗を徒長させないことが最初の要点です。光が足りないと双葉の下の軸がひょろりと伸び、根元のふくらみが細いまま育ちます。双葉が開いたら覆いを外し、明るい窓辺か植物用の育成ライトの下へ移します。直射には数日かけて慣らします。

  • 腰水:本葉が出そろったら水位を下げ、1〜2か月かけて上からの水やりに切り替えます。
  • 風:苗が並んだ鉢は蒸れやすいので、弱い風が通る場所に置きます。
  • 肥料:本葉が数枚になってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。

最初の冬は、親株のように断水しないのが要点です。苗は幹に蓄えている水が少なく、乾かしきると細い根が枯れて春に動けません。10℃以上、できれば15℃前後の明るい室内に置き、月に1〜2回、暖かい日の午前中に表面が湿る程度の水を与えて越します。冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しに、用土の組み方は用土の選び方にまとめています。

最初の植え替えは、まいた翌年の5〜6月、株がよく動いている時期に行います。根を崩さずに用土ごと持ち上げて、1株ずつ小鉢へ植え分けます。手順は塊根植物の植え替えと同じです。

苗が育ったら、親株と同じ管理へ葉の茂り具合に合わせた水やり、秋の紅葉から落葉までの読み分け、冬越しの温度をまとめています。
パキプスの育て方を見る →

実生は何年でどのくらいになるか

パキプスは塊根植物のなかでも特に成長がゆっくりです。環境で大きく変わるので幅のある目安ですが、おおよその道のりは次のとおりです。

まいてからの時間幹の太さの目安様子
1年5mm〜1cm根元が少しふくらみ、細い枝に小さな葉が並ぶ
3年1〜3cmとっくり形がはっきりし、枝が分かれ始める
5年3〜5cm手のひらに乗る大きさ。幹の肌に色の濃淡が出てくる
10年5〜10cm前後コルク質の肌が厚くなり、株ごとの個性がはっきりする

この数字は、温室や育成ライトで生育期を長く取った場合と、季節なりに育てた場合とで大きく開きます。 生育期に光と水をしっかり回した株は早く太り、控えめに育てた株はゆっくりですが締まった姿になります。

素焼き鉢に浅く植えられた数年目のパキプスの実生株。とっくり形の幹に薄いコルク質の肌ができはじめ、短い枝に小さな丸い葉がついている 種から数年の株。幹がとっくり形にふくらみ、肌ができはじめます。(AIで生成したイメージです)

実生株を現地球のような姿に近づける仕立て方

実生株を何年か育てると、「現地球のようなごつごつした姿に近づけたい」と考える人が多くなります。同じ姿にはなりませんが、近づける方法はいくつかあります。

  • 根上げ:植え替えのたびに、幹のふくらみの下端を少しずつ土の上に出して植えます。太った根が幹とひと続きに見え、塊根らしい量感が出ます。
  • 剪定で枝数を増やす:生育期に伸びすぎた枝を短く切ると、切り口の下から枝が分かれ、細かく詰まった枝ぶりになります。ウルシ科なので、樹液が肌に合わないことがあります。手袋をつけて作業します。
  • 太らせる時期と締める時期を分ける:若いうちは光と水と肥料を回して太さを稼ぎ、ある程度育ったら水と肥料を少し控えて、強い光と風の中でゆっくり育てる方向に切り替える考え方があります。
  • 鉢を急に大きくしない:根が回ったら一回り大きい鉢へ。大きすぎる鉢は用土が乾かず、根を傷めます。

姿の整え方は塊根植物の仕立て方にも書きました。同じ時期にまいた苗でも、幹の太り方や枝の分かれ方は1株ずつ違います。その差を何年もかけて見比べられるのが、パキプスの実生の面白さです。夏に育つ同じリズムのパキポディウムでは、グラキリスの実生も同じ手順で始められます。

縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

パキプスの実生株と現地球は、どちらを選べばいいですか?

根が張った状態で迎えて、その日から普通の管理を始めたいなら実生株が確実です。現地球は長い年月でできた荒々しい姿を迎えられる一方、未発根の株なら根を出させる工程が要ります。はじめの一鉢なら実生株か発根済みの株を選び、一年の管理のリズムをつかんでから現地球に手を伸ばすと無理がありません。

パキプスの種は、何日くらいで発芽しますか?

25〜30℃を保ち、腰水で表面を乾かさないままにしておけば、早いものは1週間ほどで芽が出ます。ただし揃いにくく、遅いものは1か月ほどかかることもあります。最初の芽が出てからも、残りの種はしばらくそのまま待ちます。20℃を下回る日が続くと動き出さないまま傷むことがあるので、まず温度を確かめます。

実生株も、育てれば現地球のような姿になりますか?

同じ姿にはなりませんが、年数とともにコルク質の肌が厚くなり、幹にも個性が出てきます。植え替えのたびに根上げをする、生育期に枝を切って枝数を増やす、ある程度育ったら水と肥料を控えて締めて育てる、といった方法で、塊根らしい量感に近づけることができます。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。