実生

ドルステニア・フォエチダの実生|種の採り方、まき方と発芽温度、こぼれ種の育て方

木の縁側に置いた木箱に小さな角鉢が並び、根元が丸くふくらんだドルステニア・フォエチダの苗が波打つ細長い葉を広げている。奥には素焼き鉢の親株が置かれている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

ドルステニア・フォエチダは1株だけでも種ができ、熟すと勢いよくはじけて周りの鉢に飛ぶほど、種から増やしやすい塊根植物です。種を採るなら花に細かい網の袋をかけて受け止め、20℃台の暖かい時期に、清潔な細かい用土の表面へ埋めずにまきます。発芽後は光を十分に当て、最初の冬は10℃以上の明るい室内で、完全には水を切らずに越させます。

ドルステニア・フォエチダ(Dorstenia foetida)は、アラビア半島から東アフリカの乾いた岩場に自生する、クワ科の小さな塊根植物です。ずんぐり太る根元と、ヒトデのような形の花が特徴で、丈夫なことから最初の塊根植物として迎えられることも多い種類です。

フォエチダは、塊根植物のなかでも種から育てやすい部類に入ります。1株だけでも種ができ、熟した種が周りの鉢へ飛んで勝手に芽を出すほどです。この記事では、種の採り方、まく時期と温度、播種の手順、こぼれ種の芽の扱い、苗の管理と最初の冬、花が咲くまでの目安を順にまとめます。株そのものの一年の管理はドルステニア・フォエチダの育て方に、実生の道具と手順の基本はオベサの実生に書いています。

フォエチダの実生とは|こぼれ種で増えるほど、種から育てやすい

実生(みしょう)は、種をまいて苗から育てることです。フォエチダの実生には、ほかの塊根植物と比べて次のような特徴があります。

ドルステニア・フォエチダドルステニア・ギガス
種の入手1株でも種ができ、手元で採りやすい流通が少なく、購入に頼ることが多い
種の大きさごく小さな丸い粒直径1〜2mmほどの小さな丸い粒
発芽に向く温度20℃台(21℃前後でよく発芽するとされる)20〜25℃前後
苗でつまずく点光不足での徒長、最初の冬待つあいだのカビ、最初の冬

同じ属のドルステニア・ギガスの実生は、種が手に入りにくく、発芽まで時間がかかる「待つ実生」です。フォエチダは種が身近で扱いやすいぶん、気をつけるところは発芽したあとの光と、最初の冬に寄ります。

種の採り方|はじけて飛ぶ種を、袋で受け止める

フォエチダは、ひとつの株の花だけで種ができやすい植物です。平たい円盤(花托)の中に種が育ち、熟すと勢いよくはじき飛ばされます。飛ぶ距離は最大で2mほどになるとされ、気づいたときには種がなくなっていることがほとんどです。

素焼き鉢のドルステニア・フォエチダの花に、白い網の小袋をかぶせて茎元で結んである。袋の底に小さな黒い種がたまっている 花に網の小袋をかぶせて、はじけた種を受け止めます。(AIで生成したイメージです)

種を手元に集めたいときは、次の方法がとられます。

  • 花に袋をかぶせる:咲き終わって円盤がふくらみはじめたら、お茶パックや目の細かいネットの小袋をかぶせ、茎元を軽く結んでおきます。はじけた種が袋の底にたまります。
  • 鉢ごと囲う:花がいくつも上がる株は、鉢の周りを紙箱や布で囲い、飛んだ種を受け止めます。
  • 集めた種はすぐまく:小さな種は乾きやすく、時間がたつほど揃いが悪くなる傾向があります。採ったら日付を書いて袋に入れ、なるべく早くまきます。

花が次々に咲く株なら、生育期のうちに何度も採種できます。種を増やしたくない株では、反対に咲き終わった花を熟す前に摘み取ります。購入した種を使う場合も、採種の時期がわかる新しいものを選ぶと発芽が揃いやすくなります。

まく時期と、そろえるもの

まき時は、気温が安定して20℃を超える5月〜7月がいちばん揃いやすい時期です。この時期にまくと、秋までに根と根元のふくらみをつくる期間を確保できます。採った種をそのまま夏の終わりにまくこともできますが、その場合は苗が小さいまま冬を迎えるので、室内で温度と光を補う前提になります。

そろえるものは、ほかの塊根植物の実生と大きくは変わりません。

もの選び方理由
用土細粒の赤玉土・軽石などの無機質で、肥料の入っていないもの湿った状態が続いてもカビを出しにくい
容器2.5〜3号ほどの小鉢、または育苗ポット少ない粒数を扱いやすく、乾き具合も見やすい
水やりの道具霧吹き、腰水用の浅いトレー小さな種を流さずに湿らせるため
光明るい窓辺、または植物用の育成ライト発芽後の徒長を防ぐため
温度必要ならヒーターマット夜の冷え込みで発芽が止まらないようにするため

用土は、使う前に水で洗って細かい粉を流しておくと、表面が固まりにくくなります。組み方は用土の選び方に、光の補い方は育成ライトの選び方にまとめています。

種のまき方と、発芽に向く温度

フォエチダの種は、埋めずに表面にまくのが基本です。ドルステニアの種は光が当たる状態で発芽しやすいとされ、深く埋めると芽が出にくくなります。

細かい用土を入れた黒い角鉢の表面に、丸い双葉を開いた小さな芽がいくつか出ている。横に霧吹きとピンセットが置かれている 種は用土の表面に置き、霧吹きで湿らせます。(AIで生成したイメージです)

  1. 用土を湿らせる:鉢に用土を入れて表面を平らにならし、底から水を吸わせておく
  2. 種を置く:表面に1cmほどの間隔でぱらぱらとまく。小さいので、湿らせた楊枝の先に付けて運ぶと扱いやすい
  3. 軽く押さえる:上から用土をかけず、指先や板で軽く押さえて種を用土になじませる
  4. 霧吹きで湿らせる:上から水を注ぐと種が流れるので、霧吹きを使う

あとは表面を乾かさないことと、20℃台を保つことの2つを続けます。フォエチダの種は21℃前後でよく発芽するとされ、春から初夏の室温でも十分に動きます。夜に20℃を大きく下回る場所ではヒーターマットで鉢の温度を補い、蓋やラップをかける場合は直射に当てて30℃を大きく超えさせないようにします。

条件が合えば、早い粒から丸い双葉が出はじめます(近い仲間のドルステニアでは、まいてから1〜2週間ほどが目安とされています)。遅い粒はそのあと数週間かけてばらばらに出てきます。芽が出ない粒があっても、しばらくは同じ管理を続けます。蓋を使う場合は日中に少しずらして空気を入れ替え、腰水の水は数日おきに替えて、カビを防ぎます。

こぼれ種から出た芽の育て方と鉢上げ

フォエチダを育てていると、親株の近くの鉢から、まいた覚えのない小さな芽が出てくることがあります。はじけて飛んだ種が発芽したものです。この芽も、そのまま育てれば立派な実生苗になります。

  • 見分け方:丸い双葉のあとに、細長く少し波打つ本葉が出てきます。根元が早いうちから少しふくらむのも目印です。
  • 動かす時期:本葉が数枚出て、根が張ってから小鉢へ移します。双葉だけのうちは根が細く、動かすと傷みやすいので待ちます。
  • 移し方:周りの用土ごと、スプーンや竹串で根を崩さないように持ち上げ、湿らせた用土に植え付けます。植え付け後数日は明るい日陰で休ませます。

ほかの植物の鉢に出た芽をそのままにしておくと、その鉢の水やりや植え替えの邪魔になります。育てない芽は、小さいうちに抜いておきます。

まいた苗の植え分けも、同じ要領です。混み合ってきたら、まいた翌年の春から初夏、株がよく動き出してから1株ずつ小鉢へ分けます。手順は塊根植物の植え替えと同じです。

発芽してから最初の冬まで|光を十分に、冬は冷やさない

芽が出たら、少しずつ明るい場所へ移します。フォエチダの苗は光が足りないと、葉と葉の間が開いて茎がひょろりと伸び(徒長)、根元のふくらみが細いまま育ちます。窓辺なら数日かけて日差しに慣らし、室内なら育成ライトを当てます。急に強い直射へ出すと葉が焼けるので、段階を踏みます。

  • 水:本葉が出て根元がふくらみはじめたら、腰水や霧吹きから、表面が乾いたら上から与える水やりへ少しずつ移します。苗のうちは蓄えが少ないので、親株より短い間隔で水を回します。
  • 肥料:本葉が数枚そろってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。発芽直後は要りません。
  • 風:苗が混み合うと根元から蒸れて倒れることがあります。風の通る場所に置くか、サーキュレーターで空気をゆっくり動かします。

最初の冬は、最低10℃以上、できれば15℃前後を保てる明るい室内で越させます。親株は葉を落として休むことが多い時期ですが、苗は蓄えが少ないので完全には水を切らず、暖かい日の午前中に表面が湿る程度の水を月に数回与えます。冷えた用土が湿ったままになるのがいちばん根を傷めるので、その日のうちに乾く量にとどめます。冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しにまとめています。

ドルステニアの仲間を、種から育てる同じ属でも、種が手に入りにくく発芽まで時間のかかるギガスは、待ち方とカビ対策が要になります。違いを並べて読むと、それぞれの実生の勘どころが見えてきます。
ドルステニア・ギガスの実生を見る →

種から何年で花が咲くか

フォエチダは小さな株のうちから花をつけやすい種類で、実生の苗も比較的早い段階でヒトデのような花を咲かせはじめます。育て方と環境で大きく変わるので幅のある目安ですが、おおよその道のりは次のとおりです。

まいてからの時間様子
数週間〜数か月双葉のあとに細長い本葉が出て、根元が少しふくらみはじめる
1年前後最初の冬を越し、根元が丸くなってくる。早い株は花を上げはじめる
2〜3年手のひらに乗る大きさに近づき、生育期には花が次々に咲く

花が咲いて種ができるようになれば、その株からまた次の実生ができます。光をよく当てて乾いたらたっぷり水を与えると根元が締まって太り、光が足りないまま水と肥料を増やすと、茎ばかり伸びて根元が細くなります。鉢は根が回ったら一回りずつ大きくし、急に大きな鉢へ移さないようにします。

同じ親から採った種でも、葉の幅や波打ち方、根元の形は1株ずつ違ってきます。フォエチダは葉の形に個体差が大きい植物で、その違いを並べて見比べられるのも実生の楽しみです。

縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

ドルステニア・フォエチダは1株だけでも種ができますか?

できます。フォエチダは1株の花だけで種ができやすく、熟すと種を勢いよくはじき飛ばします。手元に集めたい場合は、咲き終わった花に網の小袋をかぶせて受け止めます。

種は土に埋めたほうがよいですか?

埋めずに、用土の表面にまいて軽く押さえるだけにします。ドルステニアの種は光が当たる状態で発芽しやすいとされ、深く埋めると芽が出にくくなります。上から水を注ぐと流れるので、霧吹きや腰水で湿らせます。

発芽に向く温度は何℃ですか?

20℃台が目安で、21℃前後でよく発芽するとされます。春から初夏の室温で十分に動きます。夜に20℃を大きく下回る場所ではヒーターマットで補い、蓋をしたまま直射に当てて30℃を大きく超えさせないようにします。

ほかの鉢に出た小さな芽は、育てられますか?

育てられます。親株から飛んだ種が発芽したものなので、本葉が数枚出て根が張ってから、周りの用土ごと小鉢へ移します。育てない場合は、小さいうちに抜いておきます。

実生の苗は、冬に断水しますか?

苗のうちは完全には断水しません。最低10℃以上の明るい室内に置き、暖かい日の午前中に表面が湿る程度の水を月に数回与えます。冷えた用土が湿ったままにならないよう、その日のうちに乾く量にとどめます。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。