ドルステニア・ギガスの実生|種まきの温度と発芽日数、苗の育て方と最初の冬

ドルステニア・ギガスの実生は、小さな丸い種を清潔な細かい用土の表面に置き、表面を乾かさずに20℃台を保つところから始まります。発芽までは2〜4週間ほどかかるのがふつうで、条件が足りないと2か月近くかかることもあるので、急がず待つのがいちばんの要点です。待つあいだのカビと、苗が小さいまま迎える最初の冬が、つまずきやすい2か所です。
ドルステニア・ギガスは、イエメンのソコトラ島に自生する、クワ科の塊根植物です。灰白色のなめらかな幹がずんぐりと太り、その頂につやのある葉を広げます。流通する株が多くないこともあって、種から育てる実生(みしょう)で迎える人の多い植物です。
種は小さく、発芽まで時間がかかるので、パキポディウムなどの実生に比べると「待つ」場面の多い実生になります。この記事では、種の特徴と入手から、まく時期と温度、播種の手順、発芽までの待ち方、苗の管理と最初の冬、何年でどのくらいになるかまでを順にまとめます。実生の道具や手順の基本は、球形ユーフォルビアのオベサの実生でも詳しく書いています。
ドルステニア・ギガスの実生とは|ほかの塊根植物の実生と違うところ
ドルステニア・ギガスは、乾いた断崖の岩場に根を張って育つ植物です。生育期は暖かい季節で、冬は生長がゆるみます。実生で育てる流れそのものは、ほかの夏型の塊根植物と大きくは変わりません。違いが出るのは、種の小ささと、発芽までの長さです。
| ドルステニア・ギガス | グラキリス | |
|---|---|---|
| 種 | 直径1〜2mmほどの小さな丸い粒 | 細長く平たい。長さ1cm前後 |
| 発芽に向く温度 | 20〜25℃前後(記録によって幅がある) | 25〜30℃ |
| 発芽までの日数 | 2〜4週間ほど。遅いと2か月近く | 数日〜10日ほど |
| 苗でつまずく点 | 待つあいだのカビ、最初の冬 | 光不足での徒長、最初の冬 |
いちばん大きいのは、芽が出るまでの長さです。グラキリスのように数日で揃う感覚でいると、2週間たっても動きがないことに不安になり、掘り返したり水を切ったりしてしまいがちです。ギガスは2〜4週間かかるのがふつうと考えておくと、落ち着いて待てます。グラキリスの手順はグラキリスの実生に、パキポディウム全般はパキポディウムの実生にまとめてあります。
種を手に入れる|小さな丸い種と、鮮度
ドルステニアの花は、平たい盤のような花托の上に、ごく小さな花がびっしり並ぶ独特の形をしています。盤のふちからは細い苞が放射状に伸び、ヒトデのような姿になります。熟した実は、種を勢いよくはじき飛ばす性質があるとされ、親株のまわりの鉢に、まいた覚えのない苗が出てくることがあるのもこの属の特徴です。
流通している種は、小さな丸い粒です。特に目立つ形の特徴はないので、ほかの種と混ざらないよう、届いたら袋のまま名前と日付を書いておくと安心です。
選ぶときに見るのは、採種の時期と保管の仕方です。古い種ほど発芽までの日数が延び、揃いも悪くなる傾向があります。流通量が少なく、入荷のたびにすぐ売り切れることも多い種なので、手に入ったら用土と容器を先にそろえ、できるだけ早くまくと無駄がありません。
海外から種を取り寄せる場合は、植物検疫の手続きが関わります。書類の不備で届かないこともあるので、はじめは国内で販売されている種を選ぶのが手軽です。
まく時期と、そろえるもの
まき時は、**気温が安定して20℃を超える春から初夏(5月〜7月)**が揃いやすい時期です。この時期にまくと、発芽までに時間がかかっても、秋までに根と幹をつくる期間を確保できます。早めにまく場合や、夜に冷え込む場所では、ヒーターマットで鉢の温度を補います。
そろえるものは、ほかの塊根植物の実生とほとんど同じです。
| もの | 選び方 | 理由 |
|---|---|---|
| 用土 | 細粒の赤玉土・軽石などの無機質で、肥料の入っていないもの | 待つ期間が長く、カビを出さないため |
| 容器 | 2.5〜3号ほどの小さめの鉢、または育苗ポット | 少ない粒数を扱いやすく、乾き具合も見やすい |
| 水やりの道具 | 霧吹き、腰水用の浅いトレー | 小さな種を流さずに湿らせるため |
| 光 | 明るい窓辺、または植物用の育成ライト | 発芽後の徒長を防ぐため |
| 温度 | 必要ならヒーターマット | 夜の冷え込みで発芽が止まらないようにするため |
用土で大事なのは、清潔で、細かい粉が残っていないことです。発芽まで湿った状態が長く続くので、腐葉土や堆肥が混じっているとカビが出やすくなります。使う前に用土を熱湯にくぐらせ、水で洗って微粉を流しておく方法もあります。用土の組み方は用土の選び方に、光の補い方は育成ライトの選び方にまとめました。
種のまき方(播種)と、発芽までの日数・温度
まく前に、種を水に数時間〜一晩ひたして吸水させておくと、動き出しが揃いやすくなります。活力剤を薄めた水を使う人や、殺菌剤を規定の濃さに薄めた水にひたしてカビの元を落としておく人もいます。
ギガスの種は小さな丸い粒。用土の表面に間隔をあけて置きます。(AIで生成したイメージです)
手順は次のとおりです。
- 用土を湿らせる:鉢の縁近くまで用土を入れて表面を平らにならし、下から水を吸わせる
- 種を置く:表面に1〜2cmほどの間隔で並べる。小さいので、湿らせた楊枝の先に付けて運ぶと扱いやすい
- ごく薄く覆う:種が見え隠れする程度に細粒をかけるか、軽く押さえて用土になじませる。深く埋めない
- 霧吹きで密着させる:上から水を注ぐと種が流れるので、霧吹きで表面を湿らせる
そのあとは、表面を乾かさないことと、温度を安定させることの2つだけを続けます。発芽に向く温度は、栽培の記録によって「20〜25℃がよく、高すぎると揃いが悪くなる」というものと「地温25〜30℃で安定させるのがよい」というものがあり、幅があります。共通しているのは、夜に20℃を大きく下回らせないことと、蓋をしたまま直射に当てて30℃を大きく超えさせないことです。その範囲で温度の上下を小さく保つのが、いちばん確かな方法です。
発芽までは、早いもので2週間ほど、多くは2〜4週間かかります。温度が足りないと2か月近くかかることもあるので、2週間で芽が出なくても、そのまま管理を続けます。芽は少しずつばらばらに出てくることが多く、最後の1粒が出るまで1週間以上開くこともあります。
待つあいだのカビを防ぐ
発芽までが長いぶん、ギガスの実生ではカビが出やすくなります。湿った用土と止まった空気が長く続くのが原因です。
- 密閉しない:蓋やラップをかける場合は、穴を開けるか、日中は少しずらして空気を入れ替えます。蓋を使わず、霧吹きで1日1回表面を湿らせる方法でうまくいった記録もあります。
- 腰水の水を替える:腰水をする場合は、トレーの水を数日おきに替え、溜めっぱなしにしません。
- 空気を動かす:弱い風が当たる場所に置くか、サーキュレーターで部屋の空気をゆっくり回します(サーキュレーターの使い方)。
- カビた種は取り除く:白い綿のようなものが付いた種は、まわりに広がる前にピンセットで取り除きます。
発芽してから最初の冬まで|光と水と、冷やさないこと
芽が出たら、少しずつ明るい場所へ移します。光が足りないと、双葉の下の軸がひょろりと伸びて(徒長)、根元のふくらみが細いまま育ちます。窓辺なら数日かけて日差しに慣らし、室内なら育成ライトを当てます。いきなり強い直射に出すと葉が焼けるので、段階を踏みます。
- 水:本葉が出て根元がふくらみ始めたら、腰水や霧吹きから、表面が乾いたら上から与える水やりへ少しずつ移します。苗のうちは幹の蓄えが少ないので、親株より短い間隔で水を回します。
- 肥料:本葉が数枚そろってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。発芽直後は要りません。
- 風:苗が混み合うと根元から蒸れて倒れることがあります。風の通る場所で育てます。
ギガスは寒さに弱い植物で、最初の冬は暖かく明るい室内で越させるのが基本です。最低でも10℃、できれば15℃以上を保てる場所に置き、苗のうちは完全には断水せず、暖かい日の午前中に表面が湿る程度の水を月に数回与えます。冷えた用土が湿ったままになるのがいちばん根を傷めるので、水は量より「乾く日のうちに」を意識します。冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しにまとめています。
最初の植え替えは、まいた翌年の春から初夏、株がよく動き始めてから行います。根を崩さずに用土ごと持ち上げ、1株ずつ小鉢へ植え分けます。手順は塊根植物の植え替えと同じです。
実生は何年でどのくらいになるか
ドルステニア・ギガスの苗は、発芽して数か月で根元がふくらみ始め、小さなとっくりのような姿になります。育て方と環境で大きく変わるので幅のある目安ですが、おおよその道のりは次のとおりです。
| まいてからの時間 | 様子 |
|---|---|
| 数か月 | 根元がふくらみ始め、頂に数枚の葉をつける |
| 1年 | 最初の冬を越し、幹の肌が灰白色になってくる |
| 3年前後 | 手のひらに乗る大きさになり、枝が分かれ始める株も出る |
| 4〜5年 | 花(平たい盤のような花序)をつける株が出てくる |
種から数年の株。幹の太り方や枝の分かれ方は、1株ずつ違います。(AIで生成したイメージです)
生育期に光をよく当て、乾いたらたっぷり水を与え、薄い肥料を回すと、幹は年ごとに太っていきます。光が足りないまま水と肥料を増やすと、枝ばかり伸びて幹が細くなるのは、ほかの塊根植物と同じです。鉢は根が回ったら一回りずつ大きくし、急に大きな鉢へ移さないようにします。
同じ種から育った苗でも、幹の形や枝ぶりは1株ずつ違ってきます。その違いを何年も見比べられるのが、ギガスの実生の面白さです。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
ドルステニア・ギガスの種は、何日くらいで発芽しますか?
多くは2〜4週間ほどです。温度が足りない環境では2か月近くかかることもあります。2週間で芽が出なくても掘り返さず、表面を乾かさないまま温度を保って待ってください。芽はばらばらに出てくることが多く、最後の1粒まで1週間以上開くこともあります。
発芽に向く温度は何℃ですか?
栽培の記録によって「20〜25℃」「25〜30℃」と幅があります。共通しているのは、夜に20℃を大きく下回らせないことと、蓋をしたまま直射に当てて30℃を大きく超えさせないことです。その範囲で、温度の上下を小さく保つのが確かです。
種まきのあいだにカビが出てしまいます。
発芽までが長いぶん、湿った用土と止まった空気が続くことが原因です。蓋は密閉せず空気を入れ替え、腰水の水は数日おきに替え、弱い風で空気を動かします。用土は肥料の入っていない無機質のものを、微粉を洗い流してから使うとカビが出にくくなります。カビた種はまわりに広がる前に取り除きます。
実生の苗も、冬は断水しますか?
苗のうちは完全には断水しません。寒さに弱いので、最低でも10℃、できれば15℃以上の明るい室内に置き、暖かい日の午前中に表面が湿る程度の水を月に数回与えて越します。冷えた用土が湿ったままになるのを避けるのが要点です。
実生株と輸入された株は、どう違いますか?
実生株は鉢の中で最初から根が働いていて、日本の季節の中で育ってきた株です。輸入された株は長い年月でできた姿を迎えられる一方、根を出させる工程が要ることがあります。違いは実生株と輸入株の違いにまとめました。