コミフォラの実生|挿し木・現地球との違い、種まきの手順と発芽温度、苗の冬越し

コミフォラの実生株は、種から育ち、太くなる主根を持っている株です。国内で出回る株の多くは挿し木で殖やされていて、根元がふくらみにくいのに対し、実生株は年を重ねるほど根元に量感が出ていきます。種は雌雄の株がそろわないとできないため数が少なく、殻が硬く発芽にも時間がかかります。黒く詰まった新しい種を、25〜30℃以上の暖かさで無肥料の用土にまき、苗の最初の冬は10℃以上の明るい場所で乾かしきらずに越させるのが基本です。
コミフォラは、アフリカやマダガスカル、アラビア半島などの乾いた土地に育つカンラン科の低木で、樹脂が没薬(ミルラ)の原料になることでも知られています。紙のように剥がれる樹皮や、こぶの多いねじれた枝を楽しむ塊根植物として人気が出ていて、売り場では挿し木で殖やした株や現地球のほかに、種から育てた実生株も見かけるようになりました。実生(みしょう)は、種から育てること、または種から育った株を指す言葉です。
この記事では、コミフォラの実生株がほかの株とどう違うのか、種から始めるときの手順、そして苗を失いやすい最初の冬の越し方を順にまとめます。種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。
コミフォラの実生株とは|挿し木株・現地球と何が違うか
国内で手に入るコミフォラは、大きく実生株・挿し木株・**現地球(輸入株)**の3つに分かれます。コミフォラは枝を挿すと根が出やすい仲間なので、国内で殖やされた株は挿し木のものが多数派です。違いがいちばん出るのは、根元がふくらんでいくかどうかです。
| 実生株 | 挿し木株 | 現地球 | |
|---|---|---|---|
| 生まれ | 種から | 枝を挿して発根 | 自生地から輸入 |
| 根 | 太くなる主根がある | 細い根が広がる | 根を落として運ばれる |
| 根元の量感 | 年ごとに出てくる | 出にくい | すでにできている |
| 迎えてからの手間 | すぐ普通の管理 | すぐ普通の管理 | 未発根なら発根管理 |
挿し木株は親株と同じ性質を受け継ぎ、育ちも早いのが良いところです。その一方で、種から出る主根を持たないため、枝や幹は伸びても根元がとっくり状に太りにくいとされます。塊根植物らしい、ふくらんだ根元を時間をかけて作っていきたい場合に選ばれるのが実生株です。
現地球は、太い幹と枝ぶりがすでにできあがった姿を迎えられますが、未発根の株は根が出ないまま終わることもあります。根の出させ方は塊根植物の発根管理にまとめました。札に書かれた「実生」「現地球」の意味や迎えたあとの手間の差は、実生株と輸入株の違いで整理していて、考え方はコミフォラにもそのまま重なります。
実生で見かける主な種類
コミフォラ属は200近い種を含む大きな仲間で、趣味で育てられているのはそのごく一部です。実生株や種で名前を見かけることがあるのは、たとえば次のような種類です。
| 種類 | 主な産地 | 姿の特徴 |
|---|---|---|
| カタフ | 東アフリカ〜アラビア半島 | 樹皮が薄く剥がれる |
| モンストローサ | マダガスカル | こぶの多いねじれた枝 |
| オルビクラリス | マダガスカル | 丸みのある小さな葉 |
| ワイティ | インド周辺 | とげのある枝。樹脂はグッグルの名で知られる |
同じ「コミフォラ」でも、自生地の気候によって寒さへの強さや育つ速さは少しずつ違います。名前のはっきりしない株は、属名だけで「コミフォラ sp.」と書かれていることもあります。迎えるときは種名と産地を確かめておくと、置き場所や冬の温度を決めやすくなります。
種が少ない理由と、良い種の見分け方
コミフォラの種があまり出回らないのは、多くの種類が雌雄異株、つまり雄の株と雌の株に分かれているためです。雌株だけ、雄株だけでは種ができず、しかも開花の時期がずれることも少なくありません。国内で種を採るには雌雄の株をそろえて同じ時期に咲かせる必要があり、流通する種の多くは自生地で採られた野生採種のものです。海外から取り寄せる場合は、植物検疫の手続きが関わります。
コミフォラの種は硬い殻に包まれていて、中身が育っていない種も混ざりやすいのが特徴です。まく前に次のところを見ておくと、発芽しなかったときに原因をたどりやすくなります。
- 色と重さ:黒っぽく、指でつまんでしっかり重さを感じる種は中身が詰まっていることが多く、白っぽい種や軽い種は発芽しにくいとされます。
- 新しさ:採ってから時間が経った種ほど発芽しにくくなります。採種時期が新しいものを、届いたら早めにまきます。
- 殻への下ごしらえ:殻のとがっていない側を爪切りやヤスリで少しだけ削り、半日〜1日ほど水に浸けてからまくと、水を吸いやすくなります。中身まで傷つけないように、殻の色が変わる程度にとどめます。
種は用土の上に間隔をあけて置き、ごく薄く覆います。(AIで生成したイメージです)
まく時期と発芽の条件、播種の手順
コミフォラは夏に育つ塊根植物で、発芽にもしっかりした暖かさが要ります。発芽はそろわず、早い種と遅い種で数週間の差が出るのがふつうです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| まく時期 | 気温が25℃を超えてくる5〜8月 |
| 発芽に向く温度 | 25〜35℃。暑いくらいの温度でよく動く |
| 発芽までの日数 | 2〜4週間ほど。それ以上かかる種もある |
| 用土 | 赤玉土・軽石などの無機質で、肥料なし |
| 水 | 腰水で表面を乾かさない |
まく手順は、ほかの塊根植物の実生とほぼ同じです。
- 用土を湿らせる:鉢に無肥料の用土を入れ、トレーに水を張って下から吸わせる
- 種を置く:2〜3cmほどの間隔で並べる。根がまっすぐ下へ伸びるので、深さのある鉢が向く
- 薄く覆う:種が隠れる程度に、細粒の用土をかける
- 覆いをして温める:透明な蓋かラップをかけ、日中は少し開けて空気を入れ替える。気温が足りない時期はヒーターマットで30℃前後に保つ
発芽したら覆いを外し、明るい場所へ移します。苗の時期にいちばん多い失敗は、湿りすぎで根元が細くくびれて倒れる立ち枯れです。双葉が開いたら腰水の水位を下げ、弱い風が通る場所に置きます。
- 光:光が足りないと軸がひょろりと伸び、根元が細いまま育ちます。直射には数日かけて慣らします。
- 水:本葉が出そろったら、1〜2か月かけて上からの水やりに切り替えます。
- 肥料:本葉が数枚になってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。
光が足りない季節や室内では、植物育成ライトを使うと徒長を抑えやすくなります。用土の組み方は用土の選び方にまとめています。
苗の最初の冬越し|いちばんの分かれ目
コミフォラの実生で苗を失いやすいのは、発芽のときより最初の冬です。乾いた暑い土地の植物で寒さに弱く、まだ根元に水を蓄えていない苗はなおさらです。
- 置き場所:最低気温が15℃を下回りはじめたら室内へ。最低でも10℃以上の明るい場所に置きます。
- 水やり:親株は落葉したら水を控えて休ませますが、まいた年の苗は乾かしきらないのが要点です。月に1〜2回、暖かい日の午前中に用土の表面が湿る程度の水を与えます。
- 落葉:秋に葉が黄ばんで落ちるのは休眠のしるしです。根元や枝が硬いままなら心配はいりません。柔らかくなってきたときは、寒さか水の当たりすぎを疑います。
- 春の目覚め:枝先に新しい葉が動き出すまでは水を急に増やさず、葉が開いてから少しずつ量を戻します。
冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しに、春からの水の戻し方は塊根植物の水やりにまとめています。
根元を太らせる仕立て方
実生株の楽しみは、年を追うごとに根元がふくらみ、樹皮の表情が出てくるところです。コミフォラは枝が伸びやすい仲間なので、放っておくと細長い木のような姿になりがちです。低く締まった姿に近づける方法はいくつかあります。
種から数年ほどの株のイメージ。根元に量感が出て、樹皮が剥がれはじめます。(AIで生成したイメージです)
- 根上げ:植え替えのたびに、ふくらんだ根元と太い根を少しずつ土の上に出して植えます。根と幹がひと続きに見え、塊根らしい量感が出ます。最初の植え替えは、冬を越した翌年の5〜6月に、根を崩さず用土ごと植え分けます。手順は塊根植物の植え替えと同じです。
- 摘心で枝を分ける:伸びた枝の先を生育期に摘むと、下の節から枝が分かれて、低く詰まった枝ぶりになります。切った枝は挿し木にも使えます。
- 強い光と風:生育期はよく日に当てて風を通すと、節の間が詰まり、幹が太りやすくなります。
- 鉢を急に大きくしない:根が回ったら一回り大きい鉢へ。大きすぎる鉢は用土が乾かず、冬に根を傷めます。
姿の整え方は塊根植物の仕立て方にも書きました。夏に育つ仲間の実生では、パキプスの実生やグラキリスの実生も同じリズムで始められます。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
コミフォラの挿し木株でも、根元は太りますか?
挿し木株は種から出る主根を持たないため、幹や枝は育っても、根元がとっくり状にふくらむことは少ないとされます。根上げで太い根を見せる仕立て方はできますが、時間をかけて塊根らしい根元を作りたい場合は実生株が向いています。一方で、挿し木株は親株と同じ性質を受け継ぎ、育ちが早いのが良いところです。
コミフォラの種が発芽しません。何が原因ですか?
まず温度を確かめます。コミフォラは25〜35℃でよく動き、20℃を下回る日が続くと動き出さないまま傷むことがあります。次に種そのもので、野生採種の種には中身の育っていないものが混ざりやすく、白っぽい種や軽い種、採ってから時間の経った種は発芽しにくいとされます。殻が硬いので、少し削ってから水に浸けると吸水が進みます。発芽はそろわないので、1か月ほどは様子を見ます。
実生の苗は、冬に水を切ってもいいですか?
親株は落葉したら水を控えて休ませるのが基本ですが、まいた年の苗は根元に蓄えている水が少なく、乾かしきると細い根が枯れて春に動けなくなります。10℃以上の明るい室内に置き、月に1〜2回、暖かい日の午前中に用土の表面が湿る程度の水を与えて越させます。