ユーフォルビアの挿し木|できる種類とできない種類、時期と切り口の乾かし方

ユーフォルビアの挿し木は、枝を伸ばすタイプ(ミルクブッシュ・ハナキリン・ラクテアなど)でできて、枝の出ない球形のタイプ(オベサ・鉄甲丸など)ではできません。挿せる株なら適期は生育期の5〜9月で、手順は「切る→切り口の白い乳液を流水で洗う→風通しのよい日陰で乾かす→乾いた用土に挿す」の4つ。乾かす日数は枝の太さ次第で、鉛筆ほどの枝なら2〜3日、指ほどの太さなら1〜2週間が目安です。発根までは1か月前後かかります。
ユーフォルビアの挿し木でいちばん最初に分かれ道になるのは、手順ではなく手元の株が挿し木のできるタイプかどうかです。2,000種を超えるこの属には、枝を伸ばす低木のタイプと、茎が球や柱にふくらんで枝を出さないタイプが同居していて、後者は切っても挿し穂になる部分がありません。この記事では、まずその見分けから始めて、挿せる株の適期・切り方・白い乳液の扱い・切り口を乾かす日数・発根までの管理を順に追い、うまくいかないときの切り分けと、挿し木のできない株を増やす方法までをまとめます。属全体の管理はユーフォルビアの育て方にまとめています。
挿し木できるタイプ・できないタイプ
挿し木は「切り取った茎から新しい根を出させる」増やし方なので、切り分けても姿が成り立つ枝があることが前提になります。ユーフォルビアはここで大きく二分されます。
| 姿のタイプ | 代表的な種 | 挿し木 | 増やすなら |
|---|---|---|---|
| 枝を伸ばす低木・柱状 | ミルクブッシュ、ハナキリン、ラクテア、白樺キリン | できる | 挿し木(5〜9月) |
| 枝の出ない球形・塊状 | オベサ、鉄甲丸、バリダ、ホリダ | できない | 実生(種まき)・子株分け |
| 株元に子株を吹く | 峨眉山、笹蟹丸系の交配種 | 子株を外して挿す | 子株分け |
| 草の姿で株元から茎が立つ | ポリクロマ、カラキアス | 基本は株分け | 株分け・種まき |
ミルクブッシュやハナキリンのように枝を何本も伸ばすタイプは、剪定で落とした枝がそのまま挿し穂になります。切る作業と増やす作業が同じ日に片づくので、挿し木がいちばん自然に回るのもこのグループです。
一方、オベサや鉄甲丸のような球形・松かさ状の株には、そもそも切り分けられる枝がありません。頂部を切れば成長点を失い、球の姿もそこで終わります。挿し木の記事を読んで手が止まるとしたら、たいていこのタイプです。この場合の増やし方は記事の最後でまとめます。
見分けがつかないときは、株を横から見て「細い枝が何本も分かれて立っているか」を確かめるのがいちばん早い方法です。枝分かれがあれば挿せるタイプ、ひとかたまりの球や柱なら挿せないタイプ。姿ごとの代表種はユーフォルビアの種類に並べています。
適期は5〜9月|暦より気温で決める
挿し木が成功するかどうかは、挿し穂が根を出すだけの力を持っている時期に切れているかでほとんど決まります。ユーフォルビアの多くは暖かい季節に育つので、適期は生育期にあたる5〜9月です。
- 最低気温が15℃を超えて安定してから始めます。春先はまだ地温が上がらず、発根より先に切り口が傷むことがあります。
- 5〜6月と9月がいちばん通りやすい時期です。気温が高く、なおかつ酷暑ではないので、切り口が乾くあいだも挿したあとも状態が安定します。
- 真夏の高温期は、切る日を選びます。35℃を超える日が続くあいだは鉢の中が蒸れやすいので、夕方に作業して、挿したあとは風の通る明るい日陰に置きます。
- 10月以降は見送ります。気温が下がると発根する前に休眠に入り、挿し穂が水を使わないまま土の中で傷みます。寒い時期に枝が折れてしまった場合は、切り口を乾かしたまま室内で保管して、春を待ってから挿すほうが残ります。
遅れたと思ったら、無理に挿さずに翌年の5月に回すほうが確実です。 挿し穂は乾かした状態なら数週間は持ちこたえるので、時期を待つあいだに失うものはあまりありません。
挿し木の手順|切る・洗う・乾かす・挿す
用意するのは、清潔な刃物(剪定ばさみかカッター)、手袋、乾いた挿し木用土、素焼きか小さめのプラ鉢です。刃物はアルコールで拭くか火であぶってから使います。用土は赤玉土の小粒、鹿沼土、バーミキュライト、多肉植物用の培養土のいずれかで、肥料の入っていない清潔なものを選びます。配合の考え方は用土の配合にまとめています。
1. 枝を10〜15cmに切る
枝分かれの下あたりで、10〜15cmを目安に切ります。長すぎると自立せず、短すぎると発根までの体力が足りません。葉の付くタイプは、土に埋まる部分の葉を落としておきます。挿し穂に使うのは、先端に近い、その年に伸びた張りのある枝です。木質化して硬くなった古い枝は根が出るまでに時間がかかります。
2. 切り口の白い乳液を流水で洗い流す
切るとすぐ、切り口から白い乳液が出ます。これを流水にあてて、にじまなくなるまで洗い流します。洗うのには2つの意味があります。ひとつは、乳液が固まって切り口に膜を張ると、挿したあとに水を吸い上げられなくなること。もうひとつは、粘った切り口が土に触れると雑菌が入りやすいことです。ここを省くと、根の出方がはっきり変わります。
乳液には皮膚や目に刺激のある成分が含まれるので、手袋をつけ、作業のあとは手を洗います。目のあたりに手をやらないよう、作業中は顔から離れた位置で切るのが安全です。樹液そのものの扱いはユーフォルビアの育て方にもまとめています。
にじまなくなるまで流水で洗う。ここを省くと、切り口が膜を張って水を吸えなくなります。(AIで生成したイメージです)
3. 風通しのよい日陰で乾かす
洗った挿し穂を、風の通る日陰に立てて乾かします。乾かす日数は枝の太さで決まります。
| 枝の太さ | 代表的な種 | 乾かす日数の目安 | 乾いたサイン |
|---|---|---|---|
| 鉛筆ほど(5〜8mm) | ミルクブッシュ、ハナキリン | 2〜3日 | 切り口が白く乾いて縮む |
| 親指ほど(1.5〜2cm) | ラクテアの柱、白樺キリン | 5日〜1週間 | 断面の中心まで乾いて硬い |
| 太い柱(3cm以上) | 大株の柱状種 | 1〜2週間 | 押しても湿り気が出ない |
太い切り口を乾かしきらないまま挿すと、土の中で水を含んだ断面から腐りが始まります。逆に、細い枝を2週間も置くと今度は枝そのものが痩せて、発根に使う体力が減ります。「表面だけでなく、断面の中心まで乾いているか」で見ると、太さに関係なく判断できます。
乾かすあいだは、切り口を上に向けて空鉢に立てかけておくと、断面が土や棚に触れずに済みます。直射日光には当てません。
切り口を上に向けて乾かします。断面が白く乾いて締まってきたら、挿すタイミングです。(AIで生成したイメージです)
4. 乾いた用土に挿す
乾いた用土を鉢に入れ、挿し穂の下から3〜4cmほどが埋まる深さに挿します。挿した直後は水をやりません。乾かした切り口をまた湿らせることになるためです。鉢は明るい日陰に置き、直射日光と雨を避けます。
挿し穂が倒れる場合は、支柱を添えるか、鉢の縁に寄りかからせます。ぐらつくと出はじめた根が切れるので、動かないようにしておくと後が楽です。複数本を同じ鉢に挿すときは、枝どうしが触れない間隔をとります。
挿してから発根するまで|水やりと、根が出たかの確かめ方
挿し木で迷いやすいのが、この期間の水やりです。多肉植物の扱いから「完全に乾かす」と考えてしまいがちですが、カラカラのままでは根が伸び出す先がありません。かといって湿らせ続ければ、根のない挿し穂は水を使えず土だけが湿って腐ります。
- 挿してから3〜5日は、水をやりません。 切り口が土に馴染むまでの期間です。
- その後は、10日に1回ほど土の表面が軽く湿る程度を与えます。鉢の底まで濡らす必要はありません。
- 新芽が動き出したら、通常の水やりに切り替えます。 鉢底から流れるまで与える与え方に戻すのはここからです。
発根までの日数は、細い枝で3週間から1か月、太い枝では1か月半ほどかかります。根が出たかどうかは、挿し穂を指でごく軽くつまんで動かし、抵抗があるかで分かります。すっと動くならまだ、土に引っかかる手応えがあれば根が出ています。確かめたくなっても、抜かずにおきます。出たばかりの根は細く、一度切れると出し直しになります。
もうひとつの目安が、先端から新芽が動くことです。根が水を吸えるようになって初めて新しい部分が伸びるので、新芽が出たら発根したと考えて構いません。植え替えは、根が鉢の中に回る翌春まで待つと安全です。
うまくいかないとき|腐る・しおれる・根が出ない
挿し木が失敗するときの形はだいたい3つで、見分けがつけば次の一手が決まります。
- 土に挿した部分が黒ずんで柔らかくなる:切り口の乾かし方が足りなかったか、水をやるのが早すぎたときに起こります。黒ずんだ部分を硬い緑の組織が出るまで切り戻し、改めて乳液を洗って、前回より長く乾かしてから挿し直します。傷んだ組織をどこまで落とすかの見きわめは腐ったときの切り戻しと同じ考え方です。
- 挿し穂全体がしなびて細くなる:水が足りていません。根が出る前に自分の水を使い切った状態です。土の表面が湿る程度の水を10日に1回入れ、置き場所を風の強すぎない明るい日陰に移します。
- 1か月以上たっても何も変わらない:時期か温度が合っていないことが多いところです。9月下旬以降に挿した株は、そのまま春まで動かないことがあります。この場合は水を切って越冬させ、暖かくなってから様子を見ます。挿し穂が硬く緑を保っていれば、まだ生きています。
発根促進剤は使っても構いませんが、ユーフォルビアでは必須ではありません。切り口を洗う・乾かす・挿したあと数日水をやらないという3つの守り方のほうが、結果に直結します。
切ったあとの親株
挿し穂を取った親株は、切り口の乳液を水で洗い流し、そのまま乾かします。傷口をふさぐ処置は要りません。切り口のすぐ下から、2〜3本の新しい枝が出るので、株はむしろ密にまとまります。
作業後の2週間ほどは、直射日光と雨を避けた場所に置きます。切り口が濡れた状態で強い光に当たると、跡が残ることがあります。水やりもいつもより控えめにして、新芽が動き出したら通常に戻します。剪定と挿し木を同じ日にまとめると、この養生期間も一度で済みます。
挿し木で増やせない株を増やす
枝の出ない球形のタイプや、白く色の抜けた株は、挿し木以外の道を選びます。
球形・塊状のタイプは実生(種まき)
オベサや鉄甲丸は枝を出さないので、増やすなら種からになります。どちらも雌雄異株で1株では種ができないため、実生を目指すなら苗を複数そろえて、花が咲くのを待って受粉させます。種まきは春か秋、20〜25℃くらいの時期。細かい用土の表面に播いて腰水で湿らせると、1〜3週間で小さな緑の球が顔を出します。手順はオベサの実生にまとめました。
実生と挿し木では、増えたあとの株の性格も違います。挿し木は親とまったく同じ姿が増え、実生では1株ずつ顔が変わります。気に入った個体をそのまま残したいなら挿し木、違いが出てくること自体を楽しむなら実生、という選び分けになります。オベサ鉄甲のような交配種が1株ずつ違う表情になるのは、種から育てているためです。
子株を吹く株は、外して挿す
峨眉山や笹蟹丸の血を引く交配種のように、株元から子株を吹くタイプは、その子株を外して増やせます。指で外せる大きさになってから切り離し、切り口を1週間ほど乾かして、乾いた用土に置いておくと数週間で発根します。やっていることは挿し木と同じで、挿し穂が枝ではなく子株になっただけです。親と同じ姿がそのまま増えるので、気に入った個体を残す方法としても確実です。
オベサや鉄甲丸でも、株元に子株が出る個体はあります。数は多くありませんが、出ていれば同じ手順で増やせます。
白い扇・斑入りの株は接ぎ木
ラクテアのホワイトゴーストやマハラジャのように、白く色素が抜けた部分は自分で栄養をほとんど作れません。白い部分だけを切って挿しても、根が出る前に力尽きることがほとんどです。増やす場合は、緑の残る部分を含めて切るか、育ちの早い別のユーフォルビアを台木にして接ぎます。市販のマハラジャの多くが接ぎ木の株なのは、このためです。
縁側では、オベサと鉄甲丸の交配種「オベサ鉄甲」(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を、1株ずつ選んで紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
オベサは挿し木で増やせますか?
増やせません。オベサは枝を伸ばさないので、切り分けられる挿し穂がそのまま取れないためです。頂部を切れば成長点を失い、球の姿もそこで終わります。増やすなら種から育てる実生が基本で、雌雄異株のため苗を複数そろえて受粉させる工程が要ります。まれに株元から子株が出る個体があり、その場合は指で外せる大きさになってから切り離し、切り口を1週間ほど乾かして乾いた用土に置けば発根します。
切り口の白い樹液は、洗わずに拭き取るだけでもいいですか?
拭き取るだけでは、切り口の内側から新しい乳液がにじみ続けて膜を張ります。流水にあてて、にじまなくなるまで洗い流すのが確実です。洗うのは水だけで構いません。作業のあいだは手袋をつけ、終わったら手を洗います。目に入った場合は、こすらずに大量の水で洗い流し、痛みや充血が残るなら眼科へ。
挿し木した枝を水に挿して発根させてもいいですか?
ユーフォルビアには向きません。切り口が水に浸かったままになると、乾かして膜を作るという工程が成り立たず、断面から腐りやすくなります。水耕で根を出しても、その根は土の中では使いにくい性質のもので、植え替えたあとに出し直しになることが多いところです。乾かしてから乾いた用土に挿す、という順序のほうが結果は安定します。
挿し木した枝は、いつ植え替えればいいですか?
根が鉢の中に回る翌春まで待つのが安全です。発根の直後は根が細く、植え替えの衝撃で切れると出し直しになります。新芽が動き出したら通常の水やりに戻し、そのまま1シーズン育てて、春に一回り大きい鉢へ移します。挿した鉢が小さすぎて乾きが早い場合だけ、秋のうちに鉢ごと大きい鉢の中に据える方法で間に合わせます。
剪定で切った枝を、その日のうちに全部挿しても大丈夫ですか?
切り口を乾かす日数を確保できるなら問題ありません。切ったその日に挿すのではなく、洗って乾かす期間を挟みます。枝の太さがまちまちなら、太さごとに分けて乾かし、乾いたものから順に挿していくと失敗が減ります。使い切れない枝は、乾かした状態のまま日陰に置いておけば数週間は持つので、鉢や土の用意ができてから挿しても間に合います。