亀甲竜の種子|種の見分け方とまく時期、発芽の温度と日数、最初の一年の育て方

亀甲竜の種子は、薄い羽の端に小さな種の本体がついた平たい形をしています。羽ではなく本体がふっくらと厚いものが良い種です。アフリカ亀甲竜は冬に育つので、まく時期は残暑が落ち着く9月下旬から11月ごろ。水はけのよい用土に寝かせて薄く土をかぶせ、20℃前後で表面を乾かさずにおくと、2〜3週間ほどで細い蔓とハート形の葉が上がってきます。つまずきやすいのは、塊根がまだ豆粒ほどの苗を、最初の夏に親株と同じように断水して休ませてしまうことです。
亀甲竜(Dioscorea elephantipes)は、塊根の皮が多角形に割れて亀の甲羅のようになる、ヤマノイモ科の塊根植物です。挿し木や株分けではほとんど増やせないため、出回っている株の多くは種から育てられています。種そのものも、春から秋にかけて専門店や個人の出品で見かけるようになりました。
この記事では、亀甲竜の種子がどんな形をしているか、買うときに何を見るか、いつ・どうまくか、そして芽が出てから最初の一年をどう越すかを順にまとめます。迎えた株の水やりや休眠の見極めは亀甲竜の育て方に、種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。
亀甲竜の種子とは|羽のついた平たい種
亀甲竜は雄株と雌株に分かれる植物で、雌株に実ったさやの中に種ができます。さやが乾いて割れると、中から薄い羽(翼)の端に、小さな種の本体がついた種が出てきます。羽は風に乗って遠くへ運ばれるための仕組みで、本体は数mmほど、羽を含めると1〜2cmほどの大きさです。
羽の根元にある丸い部分が種の本体です。右端のように本体が薄くしぼんだものは育ちません。(AIで生成したイメージです)
羽は大きくて目立ちますが、芽が出るのは本体のほうです。羽は取らずにそのまままいて構いません。かさばって扱いにくいときは、本体を傷つけないように羽の先をはさみで切り詰めます。
同じ「亀甲竜」の名前でも、種が2系統あることは覚えておくと迷いません。
| アフリカ亀甲竜 | メキシコ亀甲竜 | |
|---|---|---|
| 学名 | Dioscorea elephantipes | Dioscorea mexicana |
| 育つ季節 | 秋〜春(冬型) | 春〜秋(夏型) |
| まく時期 | 9月下旬〜11月 | 4〜6月 |
| 育った塊根 | 球状に盛り上がる | 平たく横に広がる |
園芸店で「亀甲竜」とだけ書かれているものの多くはアフリカ亀甲竜です。種の見た目では区別がつきにくいので、学名か「アフリカ」「メキシコ」の表記で確かめてから、まく時期を決めます。この記事ではアフリカ亀甲竜を中心に書きます。
良い種の見分け方|本体の厚みと採種の時期
種まきの結果を一番左右するのは、まく前の種の状態です。手に取ったら、次の3つを見ます。
- 本体の厚み:羽の根元の丸い部分が、ふっくらと厚みを持っているか。指でつまんで薄くつぶれるものや、光に透かして中が空っぽに見えるものは、中身が育っていない種です。
- 色と乾き具合:本体が茶色で、よく乾いているか。黒ずんでいたり、カビのような白い粉がついていたりするものは避けます。
- 採種の時期:いつ採れた種か。種は古くなるほど発芽がそろいにくくなるので、出品の説明に採種時期が書かれていれば、新しいものを選びます。
羽だけ立派で本体が細い種は、袋の中に一定の割合で混じることがあります。まく前に1粒ずつ本体をつまんで確かめ、厚みのあるものから順にまいていくと、芽の出方がそろいます。
自分の手元で種を採るには、雄株と雌株の両方がそろい、同じ時期に花を咲かせる必要があります。花が咲くまでに種から5〜10年ほどかかるため、はじめは種を買うのが現実的です。雄株と雌株で花を合わせる考え方は、オベサを例にした受粉と採種の手順にまとめています。
まく時期と発芽の条件|秋、20℃前後で
アフリカ亀甲竜は、自生地の雨季にあたる秋から春に育ちます。種まきもその入り口に合わせ、残暑が落ち着いた9月下旬から11月ごろが適期です。
| 条件 | 目安 |
|---|---|
| まく時期 | 9月下旬〜11月 |
| 発芽に向く温度 | 20℃前後(おおむね15〜25℃) |
| 発芽までの日数 | 2〜3週間ほど(遅いものは1か月以上) |
| 置き場所 | 直射の当たらない明るい場所 |
夏に育つパキポディウムやパキプスが25〜30℃を求めるのに対し、亀甲竜は20℃前後の涼しめの温度でよく動きます。真夏にまくと暑さで種が傷みやすく、逆に12月以降の寒い時期は温度が足りずに揃いません。室内の窓辺なら、日中20℃前後になる秋の数週間がちょうど合います。
春にまくこともできますが、芽が出てまもなく暑い季節に入るため、苗が育つ時間が短くなります。種が春に届いたときは、乾いた冷暗所に保管して秋まで待つほうが無理がありません。
種のまき方|寝かせて、薄く土をかぶせる
用意するものは、浅い鉢か育苗トレー、水はけのよい細かめの用土、霧吹き、腰水用の受け皿です。用土は軽石や赤玉土の小粒を中心にした、肥料の入っていないものを使います。配合の考え方は用土の配合にまとめています。
- 鉢に用土を入れ、底から水を吸わせて全体を湿らせておく
- 種を羽ごと平らに寝かせて、1〜2cmほど間隔をあけて並べる
- 種が隠れる程度に、ごく薄く細かい用土をかぶせる(本体の厚みと同じくらいが目安)
- 受け皿に浅く水を張って腰水にし、表面が乾かないようにする
- 乾燥しやすい部屋では、ラップや透明な蓋で軽く覆い、1日1回は開けて空気を入れ替える
羽は立てずに寝かせたほうが、本体が土に密着して水を吸いやすくなります。覆土が厚すぎると芽が上がりにくく、まったくかけないと本体が乾きやすいので、薄くかぶせるのが間をとった形です。
芽が出るまでは、直射日光の当たらない明るい場所に置きます。最初の芽が出ても、残りの種はしばらくそのまま待ちます。亀甲竜は芽の出るタイミングにばらつきがあり、1か月以上たってから顔を出すものもあります。
発芽してから最初の冬まで
発芽すると、まず細い蔓が1本伸び、その先にハート形の小さな葉が開きます。土の際には、やがて豆粒ほどの丸い塊根ができてきます。この小さなふくらみが、何年もかけて甲羅のような姿になっていきます。
発芽して間もない苗。土の際の小さな丸いふくらみが、のちの塊根になります。(AIで生成したイメージです)
芽がそろったら、蓋を外し、腰水も少しずつやめていきます。その後は用土の表面が乾いたら水を与える普通の管理に移ります。光は少しずつ強くしていき、冬のあいだはよく日の当たる窓辺に置きます。光が足りないと蔓ばかりが細長く伸び、葉が小さくなります。
冬の置き場所は、5℃を下回らない明るい場所が目安です。苗は親株より寒さに弱いので、夜に冷え込む窓際からは少し離し、できれば10℃前後を保てる場所に置くと安心です。冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しにまとめています。
蔓が伸びてきたら、細い棒を1本立てて巻きつかせておくと、ほかの苗と絡まずにすみます。
最初の夏は休ませない|苗だけの例外
親株の亀甲竜は、初夏に葉が黄ばんで枯れ、夏のあいだは水をほぼ止めて休ませます。ところが種から1年目の苗は、塊根がまだ豆粒ほどで、水の蓄えがほとんどありません。親株と同じように断水すると、そのまま干からびてしまうことがあります。
そのため最初の夏は、葉が緑のうちは休ませようとせず、育て続けるのが基本です。
- 直射日光を避けた、風通しのよい明るい日陰に置く
- 用土が乾いたら、量を控えめにして水を与える(受け皿に水をためない)
- 葉が自然に黄ばんで枯れた苗は、水をさらに減らし、表面が軽く湿る程度にとどめて秋を待つ
休眠のリズムは、塊根がある程度の大きさになってから、株のほうから自然に現れてきます。2年目以降は、葉の様子を見ながら少しずつ親株の管理に近づけていきます。
最初の植え替えは、2年目以降の夏、葉が枯れて休んでいる時期に行います。苗を1株ずつ小鉢に植え分けるときの手順や、塊根を土に埋めるか出すかの考え方は亀甲竜の植え替えにまとめています。
種から何年で甲羅になるか
亀甲竜は成長のゆっくりした植物です。環境で大きく変わるので幅のある目安ですが、おおよその道のりは次のとおりです。
| まいてからの時間 | 塊根の大きさの目安 | 様子 |
|---|---|---|
| 1年 | 1cm前後 | 表面はなめらかで、丸い豆のよう |
| 2〜3年 | 3〜5cm前後 | 皮が厚くなり、浅い亀裂が入りはじめる |
| 5年 | 5cm以上 | 多角形の面がはっきりしてくる |
| 5〜10年 | 株による | 花が咲くようになる |
亀裂が入るのは年数そのものより塊根の太さによるので、生育期に日をよく当てて葉を長く保つほど早く進みます。同じ日にまいた種でも、割れ方や盛り上がり方は一株ごとに違ってきます。その違いを見比べられるのが、種から育てる楽しみです。
種から育てるか、ある程度育った株を迎えるかは、手間と待つ時間のどちらを取るかの違いです。小苗から甲羅の割れた大株までの値段の幅は亀甲竜の価格に、実生株と輸入株の違いは実生株と輸入株の違いにまとめています。同じ手順で始められる種まきとして、夏に育つグラキリスの実生やパキプスの実生もあります。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
亀甲竜の種は、羽を取ってからまいたほうがいいですか?
取らずにそのままで構いません。芽が出るのは羽の根元にある丸い本体なので、羽は芽の出方にほとんど影響しません。かさばって並べにくいときは、本体を傷つけないように羽の先をはさみで切り詰めます。まくときは羽ごと平らに寝かせ、本体が隠れる程度に薄く土をかぶせます。
まいてから1か月たっても芽が出ません。
亀甲竜は芽の出るタイミングにばらつきがあり、1か月以上たってから出てくる種もあります。まず温度を確かめ、日中20℃前後になる明るい場所に置いて、表面を乾かさずに待ちます。本体を軽くつまんでみて、柔らかく崩れるものやカビが出ているものは傷んでいるので取り除きます。硬いまま残っている種は、もうしばらくそのまま待って構いません。
春に種が届きました。今まいてもいいですか?
アフリカ亀甲竜なら、秋まで待つほうが無理がありません。春にまくと、芽が出てまもなく暑い季節に入り、苗の育つ時間が短くなります。届いた種は、袋のまま乾いた冷暗所に保管して、9月下旬から11月ごろにまきます。メキシコ亀甲竜(Dioscorea mexicana)は夏に育つので、春から初夏にまいて構いません。
発芽した苗の夏は、断水したほうがいいですか?
種から1年目の苗は断水しないのが基本です。塊根が小さく水の蓄えが少ないため、乾かしきると干からびてしまうことがあります。葉が緑のうちは、直射を避けた風通しのよい日陰で、用土が乾いたら控えめに水を与えて育て続けます。葉が自然に枯れた苗だけ、水をさらに減らして秋を待ちます。