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マカイエンセとグラキリスの違い|花の白い輪・幹の形・自生地での見分け方

木の縁側に並んだ2つの素焼き鉢のパキポディウム。左は球のように丸い銀灰色の幹から短い枝を出した株、右は下ぶくれの低い幹からやや長い枝を伸ばした株
AIで生成したイメージです
この記事の結論

マカイエンセとグラキリスは、どちらもロスラーツム(Pachypodium rosulatum)の亜種で、別の種ではありません。いちばん確かな違いは花で、マカイエンセは黄色い花の中心に白い輪が入り、グラキリスは中心まで黄色一色です。幹の形は個体差が大きく、資料によって説明が逆になることもあるので、花のない株は来歴とラベルで判断します。育て方はほぼ同じで、どちらも夏に育ち冬に葉を落とす夏型です。

マカイエンセとグラキリスは、どちらも丸くふくらむ幹に棘の枝を出し、黄色い花を咲かせるマダガスカルのパキポディウムです。売り場では隣り合って並ぶことが多く、若い株どうしだと名札を外せば見分けがつかないこともあります。この記事では、2つがどういう関係にあるのかを先に整理し、見分けの決め手になる花、言い方が分かれる幹の形、自生地、花のない苗の見方、育て方の差の順にまとめます。パキポディウム全体の種類の一覧はパキポディウムの種類に、塊根植物というくくりの話は塊根植物・コーデックス入門にあります。

2つの関係|どちらもロスラーツムの亜種

最初に押さえておきたいのは、マカイエンセとグラキリスは別の種ではなく、同じロスラーツム(Pachypodium rosulatum)の中の亜種どうしだということです。2004年の分類の見直しで、ロスラーツムはいくつかの亜種に分けて整理され、その中にグラキリスとマカイエンセが並んで入りました。

名前学名和名・別名自生地
グラキリスP. rosulatum subsp. gracilius象牙宮マダガスカル南部・イサロ山地の砂岩の岩場
マカイエンセP. rosulatum subsp. makayense魔界玉マダガスカル南西部・マカイ山地の砂岩の山
カクチペスP. rosulatum subsp. cactipes―マダガスカル南端に近い岩場
ロスラーツム(基本の亜種)P. rosulatum subsp. rosulatum―マダガスカルの広い範囲

グラキリスは古くはロスラーツムの変種(var. gracilius)として記載された経緯があり、いまも札や資料に「var.」と書かれていることがあります。「var.」か「subsp.」かは扱った資料の違いで、指している植物は同じです。マカイエンセのほうは2004年に独立の種として記載され、同じ年のうちにロスラーツムの亜種へ組み替えられました。資料によっては「ロスラーツムの幅の中に収まる地域の型」と書かれることもあり、**2つの差は「別の植物」というより「同じ種の中の地域ごとの顔つき」**くらいに受け止めておくと、見分けにくさにも納得がいきます。

よく一緒に名前が挙がるホロンベンセ(P. horombense)は、かつてロスラーツムの変種とされたこともありますが、いまは独立した種として扱われます。グラキリスとの違いはホロンベンセの育て方にまとめています。

いちばん確かな違いは花|中心に白い輪があるか

2つを確実に見分けたいなら、花を見るのがいちばんの近道です。

  • マカイエンセ:大きめでつやのある黄色い花。花の中心、細い筒になったところのまわりに白い輪が入ります。
  • グラキリス:明るいレモン色の花で、中心までほぼ黄色一色。細い筒の先に、細めの花びらが開きます。長い花茎の先に2〜5輪ほどまとまって咲くのも特徴です。

2輪のパキポディウムの花を並べた様子。左は中心まで黄色一色の細身の花、右は大きめの黄色い花の中心に白い輪が入っている 左が中心まで黄色いグラキリス、右が中心に白い輪の入るマカイエンセのイメージ。(AIで生成したイメージです)

ひとつ気をつけたいのは、白い輪はマカイエンセだけの印ではないことです。同じロスラーツムの仲間のビカラー(subsp. bicolor)も、黄色い花の筒のまわりに白い輪が入ります。また、2つは近い仲間なので交雑することがあり、親のはっきりしない実生株では、白い輪が薄かったり、どっちつかずの花が咲いたりすることもあります。花は決め手になりますが、「白い輪があればマカイエンセ」と一つの特徴だけで言い切らず、来歴と合わせて見るのが確かです。

花が咲くのは、ある程度育った株の春から初夏です。若い実生株では数年待つことになるので、迎える時点で花を確かめたいなら、親株の花の写真が添えられているかどうかが手がかりになります。

幹と枝の形|個体差が大きく、言い方も分かれる

見た目でいちばん目に入るのは幹ですが、幹の形だけで2つを見分けるのは難しいというのが実際のところです。

  • グラキリス:球や壺のように丸くふくらむ幹が持ち味で、幹の頂から細く短い枝を出します。この丸さこそがグラキリスの人気の理由です。
  • マカイエンセ:「グラキリスより低く横に広がる」と書く資料もあれば、「とっくり形でやや縦に伸び、上のほうで枝を分けやすい」と書く資料もあり、説明が分かれます。

説明が分かれるのは、マカイエンセ自体の個体差が大きいことに加えて、国内に出回る株の多くが実生で、親の組み合わせによって姿に幅が出るためと考えられます。グラキリスも、光の量や育ち方しだいで縦長になったり枝が伸びたりします(枝が細く伸びてしまう理由はグラキリスの徒長にまとめています)。

幹で見るなら、ひとつの特徴ではなく全体のつり合いを見ます。

見るところグラキリスに多い姿マカイエンセに多いと言われる姿
幹球に近く、どこから見ても丸い下ぶくれの低い幹、またはとっくり形と幅がある
枝幹の頂から短く、細めに出るやや長めに伸び、枝分かれしやすい
花中心まで黄色一色中心に白い輪が入る
太り方ゆっくりグラキリスより早いと言われることが多い(個体差が大きい)

表の右側に「言われる」と付けたのは、それだけ例外が多いからです。表の特徴がいくつ重なるかで、どちらに近いかを見る目安にしてください。

自生地の違い|イサロ山地とマカイ山地

2つの名前の違いは、そのまま自生地の違いでもあります。

  • グラキリス:マダガスカル南部のイサロ山地。標高およそ300〜1000mの砂岩の崖や岩場に、わずかに腐植のたまったすき間で育ちます。
  • マカイエンセ:マダガスカル南西部のマカイ山地。名前の「マカイエンセ」は「マカイの」という意味で、こちらも砂岩の山に自生します。

どちらも、乾いた季節と雨の季節がはっきり分かれる土地の岩場で、日当たりがよく水はけのよい場所に根を張っています。鉢で育てるときに「よく日に当てて、乾いてから水をやる」が共通の基本になるのは、この自生地の姿から来ています。

マカイ山地は人が入りにくい場所で、マカイエンセが記載されたのは2004年と比較的新しいことから、輸入株の流通は限られ、国内で見かけるマカイエンセの多くは実生株です。グラキリスは現地球と実生株の両方が出回っています。株の出自による違いは現地球と実生株の違いにまとめています。

花のない苗の見方|ラベルと来歴を確かめる

売り場で出会うことの多い、数センチの実生苗。この大きさだと、マカイエンセとグラキリスはまず見分けがつきません。どちらも根元からふくらみ、棘の並んだ短い茎の先に細い葉を広げる、よく似た姿をしています。

黒い角鉢に植えられたパキポディウムの実生苗が5つ並ぶ。どれも根元が灰色にふくらみ、丸いものからとっくり形のものまで少しずつ形が違い、先に細い葉が集まっている 若い実生苗は、同じ名前でも形に幅があり、苗だけで2つを見分けるのは難しい。(AIで生成したイメージです)

花のない苗を迎えるときに見ておきたいのは、形よりも次のような情報です。

  1. ラベルの学名:「rosulatum subsp. makayense」「gracilius」のように学名まで書かれているか。和名や通称だけの札より、取り違えに気づきやすくなります。
  2. 親株の情報:種を採った親が分かるか、親株の花の写真があるか。白い輪の有無が親で確かめられていれば、子の姿もある程度予想がつきます。
  3. 交雑の可能性:いろいろな種類の親を並べた場所で採られた種は、名前どおりの姿にならないことがあります。名前の姿をはっきり楽しみたい場合は、親の分かる種や苗を選ぶのが確かです。

反対に、「どちらに育つか」を含めて楽しむのも実生のおもしろさです。種から育てる手順や、種類ごとの苗の育ち方の違いはパキポディウムの実生とグラキリスの実生にまとめています。

育て方の差|ほぼ同じと考えてよい

同じロスラーツムの亜種どうしなので、育て方はほぼ同じです。

  • 夏型:春から秋に葉を広げて育ち、秋に下の葉から黄ばんで落ち、冬は葉のない姿で休みます。
  • 光:春から秋は屋外の日なたが基本。光が足りないと枝が細く伸び、幹とのつり合いが崩れます。
  • 水やり:葉が茂っているあいだは、鉢の中まで乾いてから鉢底に流れるまで。葉が落ちたら水を止めます。
  • 冬越し:霜と凍結に耐えられないので、最低10℃を目安に明るい室内で越します。

細かな差を挙げるなら、マカイエンセは枝を伸ばしやすいと言われる分、光が足りないと姿の崩れが目立ちやすい点、また幹の太りが早い個体は、鉢がきつくなるのも早い点くらいです。管理の詳しい手順はグラキリスの育て方、冬の扱いはグラキリスの冬越し、植え替えはグラキリスの植え替えが、マカイエンセにもそのまま使えます。

迎えたあとの育て方は水やりの量、落葉から断水への切り替え、幹がしぼんだときの見分けまで順にまとめています。
グラキリスの育て方を見る →

縁側では、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、塊根植物の個体も紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

マカイエンセとグラキリスは、結局どこで見分ければいいですか?

いちばん確かなのは花です。マカイエンセは黄色い花の中心に白い輪が入り、グラキリスは中心まで黄色一色です。ただし同じ仲間のビカラーにも白い輪があり、交雑した実生株では中間的な花が咲くこともあるので、花に加えてラベルの学名や親株の情報も合わせて確かめると安心です。幹の形は個体差が大きく、それだけで決めるのは難しいところです。

マカイエンセのほうが早く太るというのは本当ですか?

そう言われることは多いものの、1株ずつの差が大きく、どちらも育て方しだいで太り方が大きく変わります。マカイエンセのほうが早く育つ個体もあれば、グラキリスと変わらない個体もあります。太り方の差より、日当たりと生育期の水やり・薄い肥料のほうが、幹の太さに与える影響ははるかに大きいと考えておくのが確かです。

グラキリスとロスラーツムは別の植物ですか?

同じ種の仲間です。グラキリスはロスラーツム(Pachypodium rosulatum)の亜種、資料によっては変種として扱われます。マカイエンセやカクチペスも同じロスラーツムの亜種で、いずれも黄色い花を咲かせます。札に「var.」とあるか「subsp.」とあるかは扱った資料の違いで、別の植物という意味ではありません。

マカイエンセとグラキリスを同じ棚に並べても大丈夫ですか?

育て方はほぼ同じなので、同じ場所で問題なく育てられます。ひとつだけ、花の時期に近くで咲いていると互いの花粉で実を結ぶことがあり、その種から育てた苗は親の名前どおりの姿にならない場合があります。自分で種を採るつもりがなければ気にしなくてかまいませんし、採るなら親の組み合わせを記録しておくと、育った苗の姿を読み解く手がかりになります。

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