バリダ鉄甲とは|バリダ×鉄甲丸の交配種の姿と残る花柄、似た品種との見分け、育て方

バリダ鉄甲は、球形に近い体に枯れた花柄を長く残すバリダ(Euphorbia valida)と、葉痕が突起として積み上がる鉄甲丸(Euphorbia bupleurifolia)を掛け合わせた交配種です。稜の上に低い突起が並び、そのあいだから細長い花柄が枝のように伸びて残ります。同じ「◯◯鉄甲」でも、ホリダ鉄甲の硬く短い刺や笹蟹鉄甲の細い刺とは、突き出るものの質が違います。
売り場やSNSで「バリダ鉄甲」というラベルの株に出会い、名前で調べたら植物とは関係のないページばかりが並んだ。そんな入り口でこのページに辿り着く方が多いと思います。バリダ鉄甲(ばりだてっこう)は、バリダと鉄甲丸を掛け合わせた交配種です。この記事では、二つの親から何を受け継いでいるのか、姿の見どころ、同じ「◯◯鉄甲」の仲間との見分け、名前がそろわない事情、育て方の組み立て、そしてこの品種について分かっていないことまでを順にまとめます。資料の少ない品種なので、確かめられていないところは確かめられていないまま書いています。
バリダ鉄甲とは|バリダと鉄甲丸を掛け合わせた交配種
バリダ鉄甲は、バリダ(Euphorbia valida)と鉄甲丸(Euphorbia bupleurifolia)を掛け合わせた園芸上の交配種です。名前の付き方は鉄甲丸の交配種に共通する形で、頭に来る「バリダ」が相手の親、後ろの「鉄甲」が鉄甲丸を指します。オベサ鉄甲やホリダ鉄甲と同じ並びの名前です。
片親のバリダは、南アフリカ東ケープ州の乾燥地に生えるユーフォルビアです。和名は万代(ばんだい)。単頭で直径10cmほど、高さ20cmほどに育ち、まれに株元から子株を吹いて群れることがあります。肌は灰緑色で、そこに紫褐色の細い横縞が入ります。縦の稜ははっきり刻まれますが、ホリダのように角を立てるほどではありません。
そしてバリダをバリダらしくしているのが、咲き終わった花の柄が硬くなって、そのまま株に残ることです。この残った花柄(かへい)が細長く伸びて四方へ広がり、乾いた小枝が球体から生えているような姿になります。ユーフォルビアには花の跡がそのまま姿になる種がいくつかあり、バリダはそのなかでも「長く枝状に残る」側の代表です。太く長い花柄を密に残す個体は、売り場で「スーパーバリダ」と呼び分けられることがあります。
もう一方の鉄甲丸は、葉が落ちた跡が三角形の突起として螺旋に積み上がっていく種です。子株はほとんど吹かず単頭で立ち、夏の蒸れに弱く、成長は1年に突起一段分ほど。つまりこの交配は、球形の体に花の跡を残していくバリダに、鉄甲丸の突起と葉の出入りを重ねた組み合わせにあたります。跡が残る親どうし──ただし残り方の異なる二つ──が出会うのが、この品種の見どころです。
学名として正式に登録された名前はなく、表記は Euphorbia valida × bupleurifolia のような交配式か、日本語の園芸名で流通します。どちらを種親にしたのかまでラベルに書かれることはほとんどありません。作出者や作出年も、公開された記録としては見当たりません。
ユーフォルビアはどの種類も、傷つけると白い樹液を出します。皮膚につくとかぶれ、目に入ると強い炎症を起こすことがあるので、植え替えや子株を外す作業は手袋をつけて行います。属全体に共通する性質はユーフォルビアの育て方に、姿の幅はユーフォルビアの種類にまとめています。
姿の特徴|稜の突起と、枝のように残る花柄
バリダ鉄甲のいちばん分かりやすい見どころは、一つの肌の上に、跡の残り方が二とおり並ぶことです。鉄甲丸の系統は葉が落ちた跡が突起として積み上がり、バリダは花が咲いた跡が花柄として突き出す。どちらも「過ぎたものが姿になる」性質ですが、残るものが葉と花で違います。その両方が同じ体に乗ります。
葉が落ちた跡の突起と、硬くなって残った花柄。跡の残り方が二とおり、同じ肌の上に並びます。(AIで生成したイメージです)
- 体つき:丸みの強い球形から、ずんぐりした短い円柱。鉄甲丸のように縦へ伸び上がるというより、バリダ寄りにまとまる株が多いようです。育つにつれて上へ伸びていきます。
- 稜:縦のヒダがはっきり走ります。ホリダ鉄甲のように指でなぞって谷と尾根が分かるほど角は立たず、丸みを残したまま稜が見える、という中間の出方です。
- 横縞:肌に紫褐色の細い横縞が入ります。バリダから受け継いだ部分で、日によく当てて締めて育った株ほどはっきり出ます。
- 突起:稜の上に、低い三角形の突起が並びます。葉が出て落ちるたびに一段ずつ増える、鉄甲丸ゆずりの積み上がり方です。
- 花柄:咲き終わった花の柄が硬く残り、細長く伸びます。株が花を付けるようになるまでは出ないので、若い株では見当たりません。
- 葉:頂部から細長い小さな葉を数枚出し、季節が進むと落とします。バリダは葉をほとんど見せないので、これは鉄甲丸から受け継いだ性質です。
なお、突起の強さや花柄の長さがどれくらいの幅で散らばるのかを示した、まとまった観察の記録は見当たりません。手元の1株が「バリダ鉄甲らしいかどうか」を写真だけで決めるのは難しい、というのが正直なところです。
ほかの「◯◯鉄甲」との見分け|突き出るものの質が違う
この一族はどれも「突起が並ぶ丸い体」をしているので、名前を伏せて並べられると迷います。手がかりになるのは、体から突き出ているものが何なのかです。
| 見るところ | バリダ鉄甲 | オベサ鉄甲 | ホリダ鉄甲 | 笹蟹鉄甲 |
|---|---|---|---|---|
| 体の輪郭 | 球形〜短い円柱 | 球形〜短い円柱 | 角張った樽形 | 丸い円柱・塊になる |
| 稜 | はっきり出る | 浅い | 深く角張る | 浅め |
| 突き出るもの | 細長い花柄が枝状に | 無し | 短く太い硬い刺 | 細く短い刺 |
| 肌の縞 | 紫褐色の横縞 | うっすら | 個体により縦の縞 | 目立たない |
| 株元 | 記録が見当たらない | ほとんど吹かない | 記録が見当たらない | 子株をよく吹く |
オベサ鉄甲といちばん迷いやすいのが、このバリダ鉄甲です。親のバリダとオベサがもともと似た球形種で、どちらも掛け合わせの相手は同じ鉄甲丸だからです。分かれ目は肌から何か突き出ているかどうかで、オベサは花柄が自然に落ちて跡が点で残るだけ、バリダは硬く残ります。触ってなめらかならオベサ鉄甲の側、指に引っかかるものがあればバリダ鉄甲の側、という見方ができます。横縞の濃さも手がかりになります。
ホリダ鉄甲・笹蟹鉄甲との分かれ目は、突き出るものの形です。ホリダと笹蟹丸の刺も成り立ちは同じ花柄ですが、短く硬い針状に止まります。バリダの花柄は枯れ枝のように細長く伸びて曲がるので、質感がはっきり違います。体の輪郭も、ホリダ鉄甲は角張り、笹蟹鉄甲は株元から子株を吹いて塊になります。
親2種を並べたときの見方はオベサと鉄甲丸の違いに、球形のユーフォルビアどうしの線引きはオベサの種類にまとめてあります。ただし、この一族では名前と中身の対応が資料によって揺れます。バリダ鉄甲も流通量が少なくまとまった記述が限られるので、ラベルは出発点として受け取り、最後は実物の姿で判断することになります。
同じ名前でも顔がそろわない|親の幅と、名前の揺れ
この品種で押さえておくと迷いが減るのが、片親のバリダの側に、姿と名前の両方で幅があるということです。
姿の幅は花柄に出ます。太く長い花柄を四方へ密に残す株から、短くまばらにしか残さない株まで開きがあり、前者は「スーパーバリダ」と呼び分けられるほどです。どのバリダを親にしたかで、子の顔も変わります。 花柄のよく残る株を親にすれば枝ぶりの目立つ子になり、控えめな株を親にすれば肌の縞のほうが主役の子になる。同じ「バリダ鉄甲」という名前で並んでいる株どうしが似ていなくても、取り違えとは限りません。
親に選んだバリダの型が違えば、子の顔も変わります。同じ名前で並ぶ株がそろわないのは、そのためです。(AIで生成したイメージです)
名前の側にも、もう一枚ややこしさが重なっています。バリダは、分類のうえでは貴青玉(Euphorbia meloformis)の亜種 Euphorbia meloformis ssp. valida として整理されることがあります。 独立した種として Euphorbia valida と書く資料もあり、扱いが分かれたままです。そのため、交配種の側のラベルにも valida と meloformis のどちらが書かれることもあります。名前が違っても、指しているものは重なっています。
顔のそろい方には、増やし方も効いてきます。株元から子株を吹く品種はその子株を外して殖やせるので、流通する株は同じ株の分身になり、姿がそろいます。種から育てる品種は1株ずつ違います。バリダはまれに子株を吹く程度、鉄甲丸はほとんど吹きません。バリダ鉄甲がどちらの方法で殖やされているのかを示した記録は見当たらないので、これも売り場で実物を見て確かめることになります。増やし方と個体差の関係は鉄甲丸の交配種に、種から育てる手順はオベサの実生にまとめています。
育て方|暦ではなく、葉の出入りで水を切り替える
管理の組み立ては、鉄甲丸の一年のリズムを下敷きにして、バリダから受け継いだ丈夫さのぶんだけ余裕を見る、という形になります。
水やりは、カレンダーではなく頂部を見ます。 葉が開いているあいだは水を使っていて、葉がないあいだはほとんど使っていない。この切り替えを株のサインで行うのが、鉄甲丸の血を引く一族に共通するこつです。葉のある春と秋は、中まで乾いてから鉢底に流れ出るまで。葉が黄ばんで落ちていく秋の終わりから間隔を伸ばし、葉のない冬は暖かい日の午前に、月1回ほど表面が湿る程度にとどめます。真夏の高温で動きが鈍る時期も、間隔をあけて夕方以降に控えめにします。
片親のバリダは、球体に水をたくわえるぶん乾いてからの余裕が長く、水切れより与えすぎのほうが早く効くとされる種です。迷ったときは待つほうが安全、という点は鉄甲丸とも重なります。乾き具合の見方はオベサの水やりに、稜のある体の扱いも含めてまとめています。
残った花柄は、抜かずにそのままにします。 この品種の花柄は姿の一部で、無理に引き抜くと肌に跡が残ります。自然に外れるものだけが落ちていきます。同じ理由で、水を株の頭からかけるより株元の土に注ぐほうが安全です。花柄の付け根や稜の谷に水が残ると乾きにくく、蒸れの起点になります。
そのほかの要点は、この一族に共通しています。
- 置き場所:明るく、風が動く場所。光が足りないと稜の間隔が空いて上に伸び、丸みのある姿と横縞が緩みます。一度伸びた部分は元に戻りません。真夏は遮光30〜50%か、午後に日陰になる場所へ。
- 用土:水はけ最優先の多肉用の配合。市販の多肉植物用の土に軽石を足すだけでも足ります。
- 植え替え:適期は春か秋、2〜3年に1回。花柄が手に引っかかるので、新聞紙を巻くか厚手の手袋を使います。根を切ったら切り口を数日乾かしてから植え、植え付け後1週間は水を与えません。
- 肥料:控えめに。多いと突起の間隔が間延びして姿が緩みます。緩効性肥料をひとつまみか、葉のある時期に薄めた液体肥料を月1回ほど。
- 冬:迎えた最初の冬は、鉄甲丸に合わせて最低10℃を目安に室内へ。取り込みと戻しの順番はオベサの冬越しと同じ考え方で組み立てられます。
分かっていないこと|冬の下限と、記録の薄さ
バリダ鉄甲について調べると、行き当たる情報のほとんどが販売ページの短い説明か、愛好家の投稿です。名前で検索しても植物と関係のないページが混ざるほど、まとまった記述がありません。はっきりしていないところを先に並べておきます。
- 冬の下限:確かめられた数字はありません。 親の性質から推し量ると、バリダは枯死しない下限の目安が3℃前後とされる丈夫な側、鉄甲丸は最低10℃が目安でシビアな側で、両親の幅がそのまま開いています。どちらに寄るかは株ごとに違う可能性が高く、迎えた最初の冬は鉄甲丸と同じ10℃を目安に室内へ入れて様子を見るのが無難です。霜と凍結には耐えられません。
- 冬の水:バリダは冬に断水する管理が一般的な種ですが、鉄甲丸の系統は水を止めきると細い根が枯れ込み、春の立ち上がりが鈍ります。この交配種がどちらに寄るのかは分かっていないので、葉のない冬も月1回ほど表面が湿る程度を残しておくほうが、取り返しがつきます。
- 夏の扱い:バリダは乾燥地の強い日差しのもとで育つ種、鉄甲丸は日本の真夏の蒸れで動きが鈍る種です。ここも両親で方向が逆で、どちらの性質がどれだけ出るかは分かりません。1年目は風通しを優先し、真夏は遮光しておくほうが安全です。
- 子株を吹くかどうか:バリダはまれに群れることがあり、鉄甲丸はほとんど吹きません。バリダ鉄甲がどちらに寄るのかを示した記録は見当たりません。
- 記録に残っていないこと:作出者・作出年、交配の向き(どちらを種親にしたか)、親に使われたバリダの型、花柄と突起の散らばり方、実生での殖やし方。いずれも公開された記録が見当たりません。
株そのものを選ぶときに見るところは、この一族で共通しています。突起の間隔が詰まっていること、幹を軽く押して硬いこと、稜の谷に傷みや黒ずみが無いこと、鉢を傾けて株が動かないこと。花柄の残る株は谷の奥が見えにくいので、鉢を回して各面を確かめます。見方の詳細は株の選び方に、値段の見当は塊根植物の相場にまとめています。
縁側では、この一族のなかでもオベサ鉄甲を中心に扱っています。同じ交配から採れた兄弟でも顔がひととおりではない、その幅の広さに惹かれたからです。個体ごとの姿を紹介していく予定で(個体販売は準備中)、はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
バリダ鉄甲とオベサ鉄甲はどう見分けますか?
肌から何か突き出ているかを見ます。片親のオベサは咲き終わった花の柄が自然に落ちて小さな点が残るだけなので、オベサ鉄甲の肌は突起こそ並びますが、触るとなめらかです。バリダは花柄が硬くなって残る種なので、バリダ鉄甲には細長い枯れ枝のようなものが稜のあいだから伸びます。もうひとつの手がかりは紫褐色の横縞で、バリダ側のほうがはっきり出ます。ただし花柄は株が咲くようになってから出るものなので、若い株では判断がつかないこともあります。
突き出ているものはトゲですか?
トゲではありません。咲き終わった花の柄が硬くなって残ったものです。サボテンのトゲのように棘座から生えるものとは成り立ちが違い、株が花を付けるようになってはじめて出ます。若い株に見当たらないのはその段階だからで、名前が違うとは限りません。引き抜くと肌に跡が残るので、自然に外れるまでそのままにしておくほうがきれいです。
冬は何度まで大丈夫ですか?
確かめられた数字はありません。片親のバリダは枯死しない下限の目安が3℃前後とされる丈夫な種、もう一方の鉄甲丸は最低10℃が目安で、両親の幅がそのまま開いている状態です。どちらに寄るかは株ごとに違う可能性があるので、迎えた最初の冬は鉄甲丸に合わせて10℃を目安に室内の明るい窓辺へ入れ、水を月1回程度に減らして越すのが確実です。窓ガラスのそばは夜間に外気並みまで冷えるので、夜だけ少し離します。霜と凍結には耐えられません。
ラベルに「meloformis」と書いてありました。バリダとは別物ですか?
重なっています。バリダは分類のうえで貴青玉(Euphorbia meloformis)の亜種 Euphorbia meloformis ssp. valida として整理されることがあり、独立した種として Euphorbia valida と書く資料もあります。扱いが分かれたままなので、同じものが両方の名前で流通しています。交配種の側のラベルも店によって書き方が揺れるため、最後は実物の姿で判断することになります。