育て方

パキポディウムの植え替え|時期と手順、根の切り方と種類ごとの違い

木の縁側の作業台に横たえた、鉢から抜いたばかりのパキポディウム・ラメリー。棘の並ぶ銀灰色の柱状の幹の先に細長い葉が広がり、根元の根がほぐれている。横に素焼き鉢と粒の粗い用土の入った木箱が置かれている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

パキポディウムの植え替えは、枝先の新芽が動き、最低気温が安定して15℃を超える4〜6月に行います。頻度は2年に1回が目安で、数日前から水を止めて土を乾かし、黒く傷んだ根と中身のない根だけを切って、水はけのよい乾いた用土に幹の下端が少し出る浅さで据えます。植えたあと1週間ほどは水を与えず、明るい日陰で休ませてから少量で戻します。寒さに弱いウィンゾリーは5〜6月と少し遅め、冬型の光堂は秋が適期です。

パキポディウムは根が鉢に回るのが比較的ゆっくりで、毎年植え替える必要はありません。そのぶん、いざ植え替えるときに「いつ」「どこまで根を触るか」で迷いやすい植物です。この記事では、適期と替えどきのサイン、準備するもの、鉢から抜いて植え直すまでの手順、植え替えたあとの水の戻し方を順にまとめ、最後にラメリーや恵比寿笑いなど種類ごとに変わるところを整理します。1年の育て方はパキポディウムの育て方に、グラキリスに合わせた鉢の選び方はグラキリスの鉢の選び方と植え替えにあります。

植え替えの時期|新芽が動く4〜6月

パキポディウムの多くは、春から秋に葉を広げて育ち、冬に葉を落として休む夏型です。植え替えの適期は、枝先に新芽が動き出し、最低気温が安定して15℃を超える4〜6月です。関東の平地なら5月ごろが動きやすく、暖かい地域では4月から、寒い地域では5月下旬からと考えます。

この時期に合わせる理由は、根を切ったあとの回復にあります。新芽が動いている株は、これから根も伸ばしていく時期なので、植え替えで減った根をすぐに出し直せます。反対に、葉を落として休んでいる冬に根を触ると、切ったところから傷みが入っても株が回復できません。秋に葉が黄ばみはじめてからも、休眠へ向かう時期なので避けます。

梅雨の長雨のさなかや真夏の猛暑日は、作業はできても、植えたあとに鉢の中が乾きにくかったり、株が暑さで消耗したりします。4〜6月のうち、晴れが続く日を選ぶと植えたあとが落ち着きます。夏型・冬型ごとの適期の見分け方は塊根植物の植え替え時期にもまとめています。

替えどきのサイン|2年に1回が目安

植え替えの頻度は2年に1回ほどが目安です。実生から育てている若い株は根の伸びが速く1〜2年に1回、根の張った成株は2〜3年に1回と、株の勢いで前後します。年数よりも、次のような様子が出てきたかどうかで決めます。

  • 鉢底の穴から根が出ている、または鉢の縁に沿って根が回っている
  • 水を与えても染み込みにくく、表面にたまってから下りていく
  • 生育期なのに水の減りが鈍く、葉の数も増えない
  • 反対に、乾くまでの日数が目に見えて短くなった(根が鉢いっぱいに詰まっている)
  • 幹が太って、鉢の縁に迫ってきた

急いだほうがよいのは、株元を押すと柔らかい、土が何週間も湿ったままといった、根の傷みが疑われるときです。この場合は季節を問わず鉢から抜いて根を確かめます。見分け方と対処はパキポディウムが腐ったときの見分け方にまとめています。それ以外のサインなら、時期を外していても次の4〜6月まで待って差し支えありません。

用意するもの|乾いた用土と、ひと回りまでの鉢

植え替えの前に、用土・鉢・道具をそろえておきます。

用意するもの目安ひとこと
用土軽石(または日向土)を半分、赤玉土の小粒を3割、残りを鹿沼土や燻炭市販の多肉植物用の土に軽石を足すだけでもよい。乾いた状態で使う
鉢根鉢の幅に左右1〜1.5cmを足した口径。今の鉢と同じか1号上まで素焼き鉢やスリット鉢など乾きの速いもの
鉢底ネット・鉢底石大粒の軽石をひと並べ底の水はけを確保する
厚手の手袋棘を通さないもの新聞紙やタオルで幹を包んで持つ
はさみ・割り箸はさみは刃を清潔にしておく割り箸は古い土をほぐすのと、新しい土を詰めるのに使う

鉢は大きくしすぎないことがいちばんの要点です。幹の太さに合わせて大きな鉢を選ぶと、根の届かない土が湿ったまま残り、それが根の傷みにつながります。根の量に合わせて、ひと回りずつ上げていきます。号数とcmの対応は鉢のサイズの選び方に、用土の配合の考え方は塊根植物の用土配合にあります。

植え替えの手順|抜いて、整えて、浅めに据える

鉢から抜いて新聞紙の上に横たえたパキポディウム。ふくらんだ銀灰色の幹の根元から、古い土をほぐした白っぽい太い根が広がり、横に小ぶりのはさみと割り箸が置かれている 古い土をほぐしたら、黒い根と中身のない根だけを切り、張りのある太い根は残します。(AIで生成したイメージです)

  1. 数日前から水を止め、土を乾かしておく:乾いた土は根から離れやすく、根をちぎらずに抜けます。湿った土のまま抜くと、細い根ごと土が崩れ落ちます。
  2. 手袋をつけ、幹を包んで鉢から抜く:鉢の側面を軽くたたくか、スリット鉢なら側面を押して根鉢をゆるめ、幹の根元を持って引き抜きます。棘のある幹は新聞紙をひと巻きすると持ちやすくなります。
  3. 古い土を落とす:割り箸で根のあいだの土をほぐし、3分の1から半分ほどを目安に落とします。根が鉢の形に固く回っている部分は、底のほうを軽くほぐす程度にとどめます。
  4. 傷んだ根だけを切る:黒く変色した根、つまむと皮がむけるように崩れる根、干からびて中身のない根を、清潔なはさみで取り除きます。張りのある白っぽい太い根は、長くても残します。極端に長い根は、鉢に収まる長さまで先を整えます。
  5. 根を切ったら、切り口を乾かす:太い根を切った場合や、傷んだ根を取り除いた場合は、風通しのよい日陰に2〜3日置いて切り口を乾かしてから植えます。細い根を少し整えた程度なら、そのまま植えて構いません。
  6. 浅めに据える:鉢底ネットと大粒の軽石を入れ、乾いた用土を少し盛って株を置きます。幹の膨らみの下端が土の上に少し出るくらいの高さにすると、株元が蒸れにくく、年々その部分が太って幹と根が続く姿になります。
  7. すき間に用土を落とし込み、株を固定する:鉢を軽くたたきながら割り箸で用土を根のあいだに落とし込み、株がぐらつかない程度に詰めます。押し固めすぎると水はけが落ちるので、詰めるのは割り箸で十分です。

根や枝を切ると、切り口から白い乳液が出ます。パキポディウムはキョウチクトウ科の植物で、この乳液は口に入れると害になります。作業中は手袋をつけ、目をこすらないようにし、終わったら手を洗います。切った根や枝はその場で片づけておきます。

植え替えたあと|1週間は水を待ち、明るい日陰で休ませる

スリット鉢に浅く植え直したパキポディウム。銀灰色にふくらんだ幹の下端が粒の粗い乾いた用土の上に出ていて、軒下の明るい日陰に置かれている 植えた直後は乾いた用土のまま、軒下のような明るい日陰で休ませます。(AIで生成したイメージです)

植えた直後は、乾いた用土のまま1週間ほど水を与えません。根の傷は乾いた状態のほうが早くふさがるからです。太い根を切った株や、傷んだ根を取り除いた株は、10日から2週間ほど待ちます。

そのあいだは、雨の当たらない明るい日陰で、風の通る場所に置きます。根が働きはじめるまでは水を吸う力が落ちているので、いきなり真夏の直射に当てるより、半日陰から少しずつ元の置き場所へ戻すほうが株は落ち着きます。

水を戻すときは、最初の1〜2回は鉢の半分ほどが湿る量にとどめ、乾くのを確かめてから次を与えます。新しい葉が開いてきたら、生育期の「乾いてからたっぷり」に移ります。鉢の素材や号数を変えたときは、乾くまでの日数が以前の鉢とは変わるので、竹串を挿して一度だけ乾くまでの日数を確かめておくと、その後の間隔に迷いません。月ごとの与え方はパキポディウムの水やりにまとめています。

植え替えのあと、しばらく葉の勢いが落ちたり、下葉が1〜2枚黄ばんだりすることがあります。根が減ったぶん、株が葉の数を合わせているもので、新しい根が出れば戻ります。株を軽く押してぐらつかなくなったら、根が鉢の中で働きはじめた合図です。肥料は植え替えから1か月ほど空け、根が落ち着いてから生育期のぶんを与えます。

種類と株の状態で変わるところ

ここまでの流れは、グラキリスやラメリー、デンシフローラムなど、国内でよく見かけるマダガスカルの夏型の種類に共通する基本です。種類や株の状態によって、時期と手つきが少し変わるものがあります。種類の見分け方はパキポディウムの種類にまとめています。

種類・株の状態時期変わるところ
グラキリス4〜6月幹の幅ではなく根鉢の幅で鉢を選ぶ。やや深めの鉢が合う
ラメリー・亜阿相界(柱状に伸びる種類)4〜6月背が高く倒れやすいので、重さのある鉢で安定させる
恵比寿笑い4〜5月根が細く傷みやすい。間隔は2〜3年に1回、根はいじりすぎない
ウィンゾリー・アンボンゲンセ5〜6月寒さに弱いので、十分暖かくなってから少し遅めに
光堂(冬型)秋(9〜10月)生育の季節が逆。秋に新芽が動いてから行う
未発根の輸入株発根するまで行わない根が出てぐらつかなくなったら、翌春の適期に植え替える

グラキリスは、平たく丸い幹が横へ張り出すぶん、幹に合わせて鉢を選ぶと大きすぎになりがちです。号数と深さの決め方はグラキリスの鉢の選び方と植え替えに詳しくまとめています。

ラメリーや亜阿相界のように柱状に伸びる種類は、育つにつれて頭が重くなります。軽いプラスチック鉢では倒れやすいので、背が伸びてきた株は素焼き鉢や陶器鉢など重さのある鉢に替え、鉢底に大粒の軽石を入れて安定させます。植えた直後に株がぐらつくときは、根が張るまで支柱を添えると、倒れて根を動かしてしまうことを防げます。

恵比寿笑いは、根が細く植え替えで傷みやすい種類です。用土を最初から水はけのよいものにしておき、植え替えの回数そのものを減らします。古い土は落とせる範囲だけにして、根を大きく崩さずに一回り大きな鉢へ移すくらいで十分です。夏の扱いも含めた育て方は恵比寿笑いの育て方にあります。

ウィンゾリーとアンボンゲンセは寒さに弱い種類です。ほかのパキポディウムが動き出す4月ではなく、気温が十分に上がった5〜6月に行うと、根を切ったあとの回復が順調です。温度の目安はウィンゾリーの育て方とアンボンゲンセの育て方にまとめています。

光堂は冬に雨が降る地域の出身で、秋に葉を出して春まで育ち、夏に休みます。植え替えも季節が逆になり、夏の休眠が明けて新芽が動く秋が適期です。

未発根の輸入株は、根がないあいだは植え替えません。発根管理の鉢に据えたまま根が出るのを待ち、株がぐらつかなくなってから、翌春の適期に根の量に合わせた鉢へ移します。根を出させるまでの温度と水の考え方は塊根植物の発根管理にあります。種から育てた苗の扱いはパキポディウムの実生にまとめています。

植え替えのあとの水やりへ葉の出入りで切り替える月ごとの頻度と、種類ごとに変わる与え方をまとめています。
パキポディウムの水やりを見る →

縁側では、塊根植物とあわせて、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)の個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

冬に根詰まりに気づきました。今植え替えてもいいですか?

葉を落として休んでいる冬は避け、春に新芽が動いてから植え替えます。休眠中に根を触ると、切ったところから傷みが入っても回復できません。鉢底から根が出ている程度なら、次の4〜6月まで待って差し支えありません。冬は水をほぼ止め、10℃以上の明るい室内で春を待ちます。株元が柔らかい、土がいつまでも湿っているといった傷みのサインがあるときだけは、季節を問わず鉢から抜いて根を確かめます。

植え替えのあと、いつから水をあげればいいですか?

植えてから1週間ほど空けます。太い根を切った場合や、傷んだ根を取り除いた場合は10日から2週間ほど待ちます。最初の1〜2回は鉢の半分ほどが湿る量にとどめ、新しい葉が開いてきたら、乾いてからたっぷり与える通常の水やりに戻します。

根はどこまで切っていいですか?

切るのは、黒く変色した根、つまむと崩れる根、干からびて中身のない根で足ります。張りのある太い根は、長くても残します。古い土は3分の1から半分ほど落とせば十分で、根鉢が固く回っている部分は底を軽くほぐす程度にとどめます。根を多く切ったときほど、切り口を乾かす日数と、水を戻すまでの日数を長めにとります。

深く植えて幹を安定させてもいいですか?

幹の膨らみを土に埋めるほど深く植えると、株元が湿ったままになり、そこから傷みやすくなります。幹の下端が少し土の上に出る浅さが基本です。背の高い株がぐらつくときは、深植えにするより、重さのある鉢に替えたり、根が張るまで支柱を添えたりして支えます。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

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