パキポディウムの発根管理|種類ごとの発根しやすさと、株の状態・時期・温度・水の合わせ方

パキポディウムの発根管理は、手順そのものは種類を問わず同じで、変わるのは「いつ始めるか」と「どこまで乾かすか」です。夏型の種類は鉢の中を25〜30℃に保てる5〜7月に、冬型寄りの光堂は涼しくなる秋口に始めます。届いた株の根がどこまで残っているかで最初の水の時期が変わり、発根の合図は葉ではなく、株がぐらつかなくなったことです。
パキポディウムの発根管理は、根を切って輸入された株や、根の少ない状態で届いた株に、新しい根を出させるまでの過ごし方のことです。同じパキポディウム属でも、柱のように伸びるラメリーと、地面に貼りつくように平たい恵比寿笑いとでは、根の出やすさも、湿り気への強さも違います。この記事では、属に共通する手順の上に、種類による違いと届いた株の状態による違いを重ねて、始めどき・温度・用土・水・発根の確かめ方を順にまとめました。塊根植物全般に共通する根の整理と乾かし方は塊根植物の発根管理に、パキポディウムの1年の育て方はパキポディウムの育て方にあります。
パキポディウムの発根管理で共通すること
パキポディウムは幹に水をたっぷり蓄える植物で、根のない状態でも数週間から数か月は持ちこたえます。この蓄えがあるので、発根管理の考え方は種類を問わず次の3つにまとまります。
- 暖かさで根を動かす:根が動くのは、鉢の中が25〜30℃前後、夜も20℃を大きく下回らないときです。手順の上手下手より、この温度を用意できる時期かどうかで結果が分かれます。
- 葉は根より先に出る:幹の蓄えで芽を動かすので、根がなくても葉を開きます。葉が出たのを見て水を増やすのが、属全体でいちばん多いつまずき方です。
- 切ると白い乳液が出る:キョウチクトウ科の植物で、根や幹を削ると白い乳液がにじみます。肌に付くとかぶれることがあり、口に入ると害になるので、手袋をつけて作業します。
違いが出るのは、根を出す力の強さと、根がないあいだに湿った用土へどれだけ耐えられるかです。ここが次の節の種類ごとの差になります。
種類ごとの発根しやすさと始めどき
発根管理の情報はグラキリスを例にしたものが多いのですが、ほかの種類では始めどきや水の加減が少しずつ変わります。愛好家のあいだでよく言われる傾向をまとめると、次のようになります。株ごとの差も大きいので、目安として見てください。
| 種類 | 発根のしやすさ | 始めどき | 合わせたいところ |
|---|---|---|---|
| ラメリー・亜阿相界 | 出やすい | 5〜8月 | 生育が旺盛。温度があれば素直に動く |
| グラキリス | ふつう | 5〜7月 | 休眠のまま届くことが多い。葉で判断しない |
| デンシフローラム・ホロンベンセ | ふつう | 5〜7月 | 低い幹から枝を張る型。枝先の枯れ込みを先に整える |
| ウィンゾリーなどマダガスカル北部の種類 | やや時間がかかる | 6〜8月 | 高めの温度を好む。真夏に合わせて始める |
| 恵比寿笑い | 時間がかかる | 5〜6月 | 真夏の蒸れに弱い。乾かす時間を長めにとる |
| 光堂 | 時間がかかる | 9月下旬〜10月 | 冬型寄り。夏に始めない |
ラメリーや亜阿相界のような柱状の種類は生育が旺盛で、ほかの種類の接ぎ木の台木に使われるほど根を出す力があります。初夏から夏の気温があれば、素直に動くことが多い種類です。
恵比寿笑いは、マダガスカル中央部の高地の岩山に育つ種類で、平たい幹の底が広く用土に接します。根がないあいだに用土が湿ったままだと、この広い底から傷みが入りやすくなります。用土を浅めにして、水を与えたあとに乾く時間を、ほかの種類より長めにとると落ち着きます。真夏の蒸し暑さでは動きが鈍る種類なので、梅雨明け前の5〜6月に始めて、暑さが本格的になる前に根を動かしておくと進めやすくなります。それでも根が張るまでに、ひと夏かかることは珍しくありません。
**光堂(ナマクアナム)**は、ほかの種類と季節が逆の冬型寄りです。根が動くのも秋から春の生育期なので、真夏に発根管理を始めると、休みに入ろうとする株に水を与えることになります。迎えた季節が夏なら、根の整理と切り口の乾燥だけ済ませ、雨の当たらない風通しのよい場所で、葉が動きはじめる秋口を待ちます。
ラベルに種名がない株は、まず型を確かめます。見分けの手がかりはパキポディウムの種類にまとめています。
届いた株の状態で変わる扱い|根の残り方を見る
「ベアルート」「抜き苗」と書かれた株でも、根の残り方は一様ではありません。届いたら幹の硬さを確かめたうえで、根がどこまで残っているかを見ます。最初の水をいつ与えるかが、ここで変わります。
左は根を短く切った状態、右は新しい根が出はじめている状態。扱いの出発点が違います。(AIで生成したイメージです)
| 根の様子 | よくある売り場の表記 | 植える前 | 最初の水 |
|---|---|---|---|
| 根がほぼなく、切り口だけ | 未発根・現地球 | 傷みを削り、切り口を1〜2週乾かす | 植えて1週間ほどおいてから |
| 太い根が数本残っている | 根切り済み・ベアルート | 黒い根・崩れる根だけ落とし、数日乾かす | 植えて数日〜1週間おいてから |
| 白い新しい根が出かけている | 発根しかけ・半発根 | 新しい根を折らないよう、整理は最小限 | 植えて数日おいて、控えめに |
| 新しい根が十分にある | 発根済みの抜き苗 | 根を乾かしすぎない。早めに植える | 植えて数日おいてから、ふだんの与え方へ |
いちばん気をつけたいのは、白い新しい根が出かけている株です。この根はとても細く、乾かしすぎても、植えるときに曲げても傷みます。切り口を乾かす工程は根のない株のためのものなので、新しい根がある株では短く済ませ、そっと植えます。反対に、根がほぼない株は、切り口が乾いて固まるまで待つことが何より大事です。売り場の言葉の読み分けはベアルートとはにまとめています。
時期・温度・用土|鉢の中を25〜30℃に
始める時期
夏型の種類なら、気温が自然に足りる5月下旬〜7月がいちばん素直です。屋外の明るい日陰に置けば、温度も風も光もそろいます。8月に入っても温度は足りますが、根が張ったあとに育つ期間が短くなり、浅い根のまま秋を迎えます。
秋から冬に迎えた株は、鉢の下にヒーターマットを敷き、上から育成ライトを当てれば進められます。用意がなければ、根の整理と乾燥だけ済ませて、明るく暖かい室内で乾かし気味に春を待つほうが株は持ちます。室内での温め方はグラキリスの発根管理の「方法を選ぶ」の節、ライトの選び方は植物育成ライトの選び方にあります。
温度は「気温」ではなく「鉢の中」で見る
根が動くかどうかを決めるのは、用土の温度です。日中は暑くても夜に鉢が冷える場所や、エアコンの風が当たる室内では、気温計の数字ほど鉢の中は温まっていません。鉢のそばに温度計を置き、25℃前後を保てているかで確かめます。いちばん傷みやすいのは、温度が足りないまま用土が湿っている組み合わせです。
用土と鉢
軽石、硬質赤玉土、日向土など、粒が粗く乾きの早い無機質の用土を使います。肥料分や有機質の多い用土は、根のない株には向きません。鉢は株に対して大きすぎない、乾きの早いものを選び、切り口が軽く埋まる程度の深さに据えて、株がぐらつかないよう用土をしっかり詰めます。
平たい種類は浅い鉢に、幹の底が少し埋まる程度に据えます。(AIで生成したイメージです)
恵比寿笑いのような平たい種類は浅い鉢に、ラメリーのような背の高い種類は株が倒れないよう、少し深さのある鉢か支柱で支えます。配合の考え方は用土の選び方にまとめています。
水の与え方|段階ごとに変える
発根管理の水は、毎回同じ量を与えるのではなく、株の段階に合わせて変えていきます。
| 段階 | 株の様子 | 水 |
|---|---|---|
| 植え付け直後 | 変化はほとんどない | 与えない(数日〜1週間) |
| 待つあいだ | 幹にしわが寄ることがある | 用土が中まで乾いたら、鉢底から流れる程度に与えて、また乾かす |
| 芽が動いた | 枝先や幹の上に小さな葉 | 待つあいだと同じ。葉を見て増やさない |
| 根が張った | 株がぐらつかない | 乾いたらたっぷりの、生育期の与え方へ寄せる |
「乾いたら与えて、また乾かす」を繰り返すのは、根が出はじめたときに水が届く状態と、株が水を求めて根を伸ばす余地の両方をつくるためです。鉢を浅く水に浸けておく腰水を使う人もいますが、使うなら気温が十分な真夏に、数日おきに水から上げて乾かす時間をつくるのが前提です。恵比寿笑いや光堂のように湿り気に弱い種類では、腰水よりも乾湿を繰り返す方法のほうが合います。
発根を待つあいだ、幹に縦じわが寄るのは蓄えを使っているためで、押して硬ければ待てる状態です。指が沈む、根元が黒く湿っているといった変化が出たら、水を止めて鉢から抜き、傷んだところを健全な組織まで削って乾かし直します。傷みの見分け方はパキポディウムが腐ったときの見分け方にまとめています。
発根の確かめ方と、根が張ってから
根が張ったかどうかは、葉ではなく次の3つで確かめます。
- 株を指で軽く押す:ぐらつかず、鉢に固定されているように感じれば、根が用土をつかんでいます。
- 鉢底の穴をのぞく:白く細い新しい根が見えれば、鉢の下まで届いています。
- 葉が増え続ける:出た葉がそのまま大きくなり、次の葉が続けば、根から水が上がっています。出た葉が黄ばんで落ちるのを繰り返すときは、まだ根が働いていません。
確かめたくなっても、掘り返して根を見るのは控えます。出はじめの根は細く、抜くだけで切れてしまいます。発根までの期間は、ラメリーのように数週間で動く株から、恵比寿笑いのようにひと夏かかる株まで幅があります。
ぐらつかなくなったら、光を日向へ少しずつ慣らし、水も生育期の調子に近づけます。発根した年は根がまだ浅いので、秋はきっぱり断水せず少しずつ間隔をあけ、冬は最低10℃を保てる明るい室内に置きます。植え替えは根が増えた翌春の生育期の始めまで待ちます。生育期の水の加減はパキポディウムの水やりに、植え替えの手順はパキポディウムの植え替えにあります。
発根管理を経ずに迎えたいときは、鉢の中で根が働いている実生株という選び方もあります。種から育てる流れはパキポディウムの実生に、実生株と輸入株の違いは実生株と輸入株の違いにまとめました。縁側では、塊根植物とあわせて、球形ユーフォルビアのオベサと鉄甲丸、その交配種であるオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)の個体ごとの姿を紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
パキポディウムで発根しやすい種類はどれですか?
ラメリーや亜阿相界のような柱状の種類は生育が旺盛で、温度があれば比較的素直に根を出します。グラキリスやデンシフローラムがその次で、恵比寿笑いや冬型寄りの光堂は時間がかかりやすい種類です。ただし株の大きさと届いたときの状態で差が大きく、種類よりも始める時期と温度のほうが結果を左右します。
パキポディウムの発根には、どのくらいの日数がかかりますか?
温度が足りている時期に始めた場合で、芽が動くまでが数週間、株がぐらつかなくなるまでが1〜3か月ほどがひとつの目安です。恵比寿笑いのようにひと夏かかる種類もあります。気温の下がる秋以降に加温なしで始めると、根が動かないまま時間が過ぎがちです。
夏に光堂の未発根株を迎えました。すぐ植えてもいいですか?
光堂は秋から春に育つ冬型寄りの種類なので、真夏は根が動きにくい時期です。根の整理と切り口の乾燥だけ済ませ、雨の当たらない風通しのよい場所で乾かし気味に置き、葉が動きはじめる9月下旬から10月ごろに植えて水を与えはじめると落ち着きます。
抜き苗で届いた株にも、発根管理は要りますか?
抜き苗は送るために鉢から抜いた株で、根が残っていることが多いので、根のない輸入株と同じ扱いは要りません。白い新しい根があるなら、乾かしすぎないうちに植え、数日おいてから控えめに水を与えます。根がほとんど残っていない場合は、未発根の株と同じ手順で切り口を乾かしてから植えます。