育て方

ビスピノーサムを太らせる育て方|地中の塊根を育てる光・水・鉢と、根上げの時期

木の縁側に置かれた浅い素焼き鉢のビスピノーサム。土の上に灰色がかった丸い塊根が出ていて、そこからとげのある細い枝が数本伸び、枝先に細い葉とピンクの花が付いている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

ビスピノーサムの塊根は、葉が出ている春から秋のあいだに、光と水を受け取ったぶんだけ太ります。生育期は屋外の日なたに置き、土が乾いたら鉢底から流れるまで水を与え、深さのある鉢で根を動かすのが基本です。塊根は土の中にあるほうが太りやすいので、太らせたい年は深めに植え、姿を見せたい年に少しずつ根上げする、と使い分けると無理がありません。

パキポディウム・ビスピノーサム(Pachypodium bispinosum)は、南アフリカ東部の乾いた岩場に生える小型のパキポディウムです。地中で芋のように太る塊根から、対になった短いとげの付いた細い枝を伸ばし、春から夏にかけてピンクから赤紫の釣鐘形の花を咲かせます。種小名の「bispinosum」は「2本のとげ」という意味で、とげが対になって付く姿に由来します。

迎えた方の多くが気にするのが、「どうすれば塊根が太るか」です。この記事では、ビスピノーサムの塊根がどう太るかを押さえたうえで、生育期の光と水、鉢と用土、塊根を埋めるか出すかの使い分け、枝の切り戻し、冬越し、増やし方による太り方の違いを順にまとめます。属全体の育て方はパキポディウムの育て方に、塊根植物全般の考え方は塊根植物の育て方にあります。

ビスピノーサムの塊根|地中で太り、枝は細いまま

ビスピノーサムは、マダガスカル産のグラキリスのように幹そのものがとっくり形にふくらむ種類ではありません。栄養と水を蓄えるのは地際から地中にかけての塊根で、枝は年数がたっても細いまま、こんもりと茂るように伸びます。「太らせる」とは、この塊根を大きく育てることを指します。

見るところビスピノーサムの特徴
太る場所地際から地中の塊根。芋のように丸く、またはいびつにふくらむ
枝細く、短いとげが対になって付く。高さは数十cmほどに収まることが多い
葉細長い葉が枝先に集まる。秋から冬に落葉する
花ピンク〜赤紫の、ずんぐりした釣鐘形
生育の型夏型。春から秋に育ち、冬は葉を落として休む

塊根が太るのは、葉が出ている生育期だけです。葉が光を受けて作った養分が塊根に蓄えられていくので、太らせる工夫はすべて「春から秋をどう過ごさせるか」に集まります。夏に水で張った塊根が冬の断水で少し痩せて見えるのは水の出入りによる変化で、育って増えた太さは戻りません。成長は去年の秋と今年の秋のように、同じ季節どうしで比べると読み違えません。パキポディウム全体の太り方の仕組みはパキポディウムの太らせ方にまとめています。

生育期の光と水|太らせる土台

日当たり:いちばん大切な条件です。春に最低気温が15℃を超えたら屋外の日なたへ出し、秋まではできるだけ長く日に当てます。光が足りないと、水と養分は塊根ではなく枝の伸びに回り、枝が細く間延びして、とげの間隔が広がります。屋外に出せない場合は、南向きの窓辺に育成ライトを足すと補えます。室内から屋外へ移した直後は、数日〜1週間ほど明るい日陰で慣らしてから直射に当てると、葉焼けを避けられます。

水やり:葉が茂っているあいだは、土が中まで乾いたら鉢底から流れるまでたっぷり与えます。「乾く→たっぷり吸う→また乾く」の回数が多いほど根が動き、塊根も太っていきます。乾く前に次の水を足したり、受け皿に水をためたままにしたりすると、塊根が傷む原因になります。梅雨の長雨は軒下に移してしのぎます。季節ごとの加減はパキポディウムの水やりにまとめています。

肥料:生育期に、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど与えます。肥料は光と水がそろってはじめて効く下支えの役なので、日当たりが足りないまま肥料だけを増やすと、枝ばかりが伸びます。種類と与え方は肥料の選び方が参考になります。

生育期を長く取る:太れる期間が葉のある期間だけである以上、春の立ち上がりを早め、秋に葉を残せるうちは残すほど、太さが積み上がります。新芽が動き出したら少量の水から再開し、秋は最低気温が10℃を下回る前に明るい室内へ取り込んで、葉が自然に黄ばむまでは乾いたら水を与えます。

鉢と用土|深さのある鉢で根を動かす

塊根は地中に向かって太っていくので、鉢は口径よりも深さを優先して選びます。浅い鉢では塊根の下に根の張る余地がなくなり、太り方が鈍ります。ただし大きすぎる鉢は土がなかなか乾かず、根腐れのもとになるので、塊根のまわりに指1〜2本ぶんのすき間ができる程度が目安です。

用土は、赤玉土・軽石・日向土などの粒の土を中心に、水はけを優先して組みます。素焼き鉢は乾きが早く、水やりの回数を重ねやすいので、太らせたい時期に向いています。用土の考え方は用土の選び方に、鉢の大きさの決め方は鉢のサイズの選び方にあります。

根が鉢に回って水がすぐに抜けるようになったら、植え替えのサインです。植え替えは新芽が動き出す春から初夏に行い、ひと回り大きな鉢へ移します。根が動ける余地ができると、その年の生育期から塊根の太り方が戻ってきます。手順はパキポディウムの植え替えにまとめています。

埋めて太らせるか、根上げで見せるか

鉢から抜いたビスピノーサム。新聞紙の上に、芋のように丸い塊根と細い根が置かれ、横に深めの素焼き鉢と粒の用土がある 地中の塊根は、植え替えのときにはじめて全体の形が見えます。(AIで生成したイメージです)

ビスピノーサムの塊根は、土の中にあるほうが乾燥や日差しにさらされず、太りやすい性質があります。一方で、塊根を土の上に出す「根上げ」をすると、ごつごつした形を眺めて楽しめます。どちらを選ぶかで、太らせ方の考え方が変わります。

選び方太り方向いている時期
塊根を深めに埋める太りやすい。形は見えない苗が小さいうち、まず大きくしたい年
塊根の一部を出す(根上げ)埋めたときよりゆっくりある程度太ってから、姿を楽しみたい年

小さな苗のうちは深めに植えて数年かけて太らせ、塊根がある程度の大きさになってから、植え替えのたびに少しずつ上げていくと、太さと見た目の両方を取りやすくなります。

根上げをするときは、春の植え替えのタイミングで、塊根の1/4〜1/3ほどずつ上げます。一度に大きく出すと、根が減ったり、急に光に当たった肌が日焼けしたりして弱ることがあります。上げた直後は1週間ほど水を待ち、半日陰で慣らしてから日なたへ戻します。根上げで出した塊根の見せ方は、塊根植物の仕立て方も参考になります。

枝の切り戻し|葉の数を増やして太る力にする

ビスピノーサムの枝は細く、放っておくと四方に伸びて姿が乱れます。枝が伸びてきたら、春から初夏に好きな位置で切り戻せます。切った位置の下から新しい枝が分かれ、こんもりとまとまった姿になります。

枝を切っても塊根が直接太るわけではありませんが、枝数が増えて葉の数が増えれば、そのぶん光を受ける面が広がり、塊根に回る養分も増えます。切り戻しは、生育期の前半に済ませると、その年のうちに新しい枝と葉がそろいます。切り口からは白い乳液が出るので、手袋をつけ、作業後は手を洗います。切る位置と時期はパキポディウムの剪定にまとめています。

伸びた枝が細く長く、とげの間隔が広がっているなら、切り戻す前に日当たりを見直します。光が足りないままでは、切ったあとに出る枝も同じように細くなります。

冬越し|葉を落として休ませる

ビスピノーサムは夏型なので、秋に気温が下がると葉を黄色くして落とし、冬は休眠します。葉が落ちたら水を控え、明るい室内で休ませます。冬のあいだは月に1回、暖かい日の午前に土の表面を湿らせる程度の少量にとどめるか、置き場所が寒い場合は乾かしたまま越します。

南アフリカの種類なので、マダガスカル産のパキポディウムと比べると寒さにはやや強く、土を乾かした株なら5℃前後までしのぐことが多いとされます。ただしそれは下限の目安で、安心して冬を越すなら最低5〜10℃を保つのがおすすめです。小さな苗や植え替えたばかりの株は、10℃を下回らない場所に置きます。霜や凍結には耐えません。

冬に塊根を指で押して、硬く締まっていれば休んでいるだけです。柔らかい、しわが急に深くなった、黒ずんだといった様子は、低温と湿った土が重なったときの傷みのサインです。冬の置き場所の工夫は塊根植物の冬越しに、傷んだときの見分け方はパキポディウムのトラブルにあります。

増やし方で変わる太り方|種からと挿し木

塊根を太らせたいなら、**種から育てた株(実生株)**を選ぶのが近道です。ビスピノーサムは種から育てると、小さな苗のうちから根元がふくらみはじめ、年を重ねるごとに塊根が育っていきます。種まきは気温が上がる春から初夏が適期で、流れはパキポディウムの実生にまとめています。

切った枝を挿し木にして根付かせることもできます。挿し木の株は枝を増やす目的には向きますが、種から育てた株のような丸い塊根はできにくく、根元はあまりふくらみません。塊根の姿を楽しみたい場合は、迎える株が種から育てたものか、挿し木で増やしたものかを確かめておくと、あとから「太らない」と悩まずに済みます。

花と、サキュレンタムとの見分け方

ビスピノーサムの枝先に咲いたピンクの釣鐘形の花。とげのある灰色の枝と細い緑の葉が見える よく日に当てた株は、春から夏に枝先にピンクの花を咲かせます。(AIで生成したイメージです)

ビスピノーサムは、生育期によく日に当たった株が、春から夏にかけて枝先に花を咲かせます。花が咲くのは、株が光を十分に受け取れているひとつの目安でもあります。花後に種を採るには、別の株の花粉をつける必要があります。

同じ南アフリカ原産のサキュレンタム(天馬空)とは、塊根と枝の姿がよく似ていて、花が咲く前は見分けにくい種類です。いちばんの違いは花の形で、ビスピノーサムはずんぐりした釣鐘形、サキュレンタムは細い筒の先が開く漏斗形です。両者の交配株も流通しているので、名札と花の形の両方で確かめると確実です。育て方はどちらもほぼ同じで、サキュレンタムの育て方も参考になります。ほかの種類との違いはパキポディウムの種類で一覧にしています。

パキポディウムを太らせる考え方水でふくらむ太さと、育って増える太さの違い。種類ごとの太り方と、成長の比べ方をまとめています。
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よくある質問

ビスピノーサムの塊根は、どれくらいの速さで太りますか?

光の量と生育期の長さで大きく変わりますが、種から育てた苗は数年で塊根の形がはっきりし、生育期の条件がよい年は1年でも変化が見えることがあります。比べるときは、毎年同じ月(生育期の終わりの9〜10月がおすすめ)に、塊根のいちばん太い部分を同じ向きで測ると読み違えません。

根上げすると、太らなくなりますか?

止まるわけではありませんが、土の中にあったときより太り方はゆっくりになります。太らせたい年は深めに植え、姿を見せたい年に植え替えのたびに1/4〜1/3ずつ上げる、と年ごとに使い分けると無理がありません。

肥料をたくさん与えれば早く太りますか?

肥料だけを増やしても太りません。塊根を太らせるのは、生育期に葉が受け取る光と、乾いてたっぷりの水やりの積み重ねです。肥料は生育期に薄めの液体肥料を月1〜2回ほど、光と水がそろった状態で与えると下支えになります。日当たりが足りないまま肥料を増やすと、枝ばかりが伸びます。

冬に葉が全部落ちました。枯れたのでしょうか?

夏型なので、秋から冬に葉を落として休むのは自然な姿です。塊根を指で押して硬く締まっていれば生きています。水を控えて明るい室内に置き、春に新しい葉が出るのを待ちます。

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