アデニア・グロボーサの実生|現地球・挿し木との違い、種まきの手順と発芽温度、苗の冬越し

アデニア・グロボーサの実生株は、種から育ち、年を重ねるほど緑の塊根が丸くふくらんでいく株です。挿し木では根元が太りにくいため、塊根の姿を楽しむなら実生が向いています。雌雄異株で種が少なく、発芽率もばらつくので、新しい種を25〜30℃ほどの暖かさで無肥料の用土にまき、苗の最初の冬は15℃前後の明るい室内で、乾かしきらずに越させるのが基本です。
アデニア・グロボーサ(Adenia globosa)は、エチオピアやケニア、タンザニア、ソマリアなど東アフリカの乾いた林や藪に育つ、トケイソウ科の塊根植物です。いぼ状の凹凸がある緑色の塊根から、長いトゲをつけた緑の茎が四方へ伸びる姿で知られ、自生地では塊根が人の背丈を超えるほどの大きさになります。売り場で見かけるのは輸入された現地球が多いものの、種から育てた実生株や種そのものも出回るようになりました。実生(みしょう)は、種から育てること、または種から育った株を指す言葉です。
この記事では、グロボーサの実生株がほかの株とどう違うのか、種から始めるときの手順、苗を失いやすい最初の冬の越し方を順にまとめます。種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。
アデニア・グロボーサの実生株とは|現地球・挿し木株と何が違うか
グロボーサの株は、大きく実生株・現地球(輸入株)・挿し木株の3つに分かれます。いちばん大きな違いは、塊根が育っていくかどうかです。グロボーサは茎を挿すと根は出ても、根元がふくらみにくいとされます。塊根の姿を楽しむ観賞用の株は、種から育てるのがよいと言われるのはこのためです。
| 実生株 | 現地球 | 挿し木株 | |
|---|---|---|---|
| 生まれ | 種から | 自生地から輸入 | 茎を挿して発根 |
| 塊根 | 年ごとにふくらむ | すでにできている | ふくらみにくい |
| 姿 | 若いうちは細長く、しだいに丸く | ごつごつした球形 | 茎が中心 |
| 迎えてからの手間 | すぐ普通の管理 | 未発根なら発根管理 | すぐ普通の管理 |
現地球は、何十年もかけてできた大きな塊根をそのまま迎えられるのが魅力です。ただ、根を落として運ばれてくるため、根が出ないまま傷むこともあります。根の出させ方は塊根植物の発根管理にまとめました。札に書かれた「実生」「現地球」の意味や迎えたあとの手間の差は、実生株と輸入株の違いで整理していて、考え方はグロボーサにもそのまま重なります。
名前のよく似たアデニウム(砂漠のバラ)は、キョウチクトウ科の別の植物です。種の形や発芽の速さも違うので、手順を調べるときは取り違えないようにします。アデニウムの種まきはアデニウムの実生にまとめています。
雌雄異株で種が少ない理由と、種の見分け方
グロボーサの種があまり出回らないのは、雌雄異株、つまり雄の株と雌の株に分かれているためです。ひと株だけでは種ができず、雌雄そろった株を同じ時期に咲かせる必要があります。花は葉のつけ根に咲く小さな緑白色の花で、雌株には緑色の丸い実がなり、熟すとなかに数粒の種が入っています。国内で採られた種は数が限られ、流通するのは海外で採られたものが中心です。海外から取り寄せる場合は、植物検疫の手続きが関わります。
雌雄の株をそろえて受粉させる流れは、交配(受粉)のやり方に書きました。
グロボーサの種は、表面に細かなくぼみ模様のある、やや平たい形をしています。まく前に次のところを見ておくと、発芽しなかったときに原因をたどりやすくなります。
- ふくらみと重さ:しっかりふくらみ、つまむと重さを感じる種は中身が詰まっていることが多く、薄くぺたんこな種や軽い種は発芽しにくいとされます。
- 新しさ:採ってから時間が経った種ほど発芽しにくくなります。採種時期の新しいものを、届いたら早めにまきます。
- 吸水:殻が硬めなので、30℃前後のぬるま湯に一晩ほど浸けてからまくと、水を吸いやすくなります。
種は用土の上に間隔をあけて置き、ごく薄く覆います。(AIで生成したイメージです)
まく時期と発芽の条件
グロボーサは夏に育つ塊根植物で、発芽にもしっかりした暖かさが要ります。発芽はそろわず、早い種は2週間ほどで顔を出し、遅い種は1か月以上かかることもあります。まいた数のうち出てくるのが一部だけ、ということも珍しくないので、数粒まとめてまくと見通しが立てやすくなります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| まく時期 | 気温が安定して暖かくなる5〜7月 |
| 発芽に向く温度 | 25〜30℃前後 |
| 発芽までの日数 | 2〜4週間ほど。それ以上かかる種もある |
| 用土 | 細粒の赤玉土・軽石などの無機質で、肥料なし |
| 水 | 腰水で表面を乾かさない |
秋にまくと、発芽した苗が小さいまま冬を迎えることになります。最初の冬を越しやすくするためにも、初夏までにまいて、ひと夏育てておくのが安心です。
播種の手順と、殻をかぶったままの芽の扱い
まく手順は、ほかの塊根植物の実生とほぼ同じです。
- 用土を湿らせる:鉢に無肥料の細粒の用土を入れ、トレーに水を張って下から吸わせる
- 種を置く:2〜3cmほどの間隔で並べる。根がまっすぐ下へ伸びるので、深さのある鉢が向く
- 薄く覆う:種が隠れる程度に、細粒の用土をかける
- 覆いをして温める:透明な蓋かラップをかけ、日中は少し開けて空気を入れ替える。気温が足りない時期はヒーターマットで25〜30℃ほどに保つ
グロボーサの芽は、種の殻を頭にかぶったまま出てくることがあります。殻が双葉に張りついたままだと、その下が蒸れて傷みやすくなります。霧吹きで殻を湿らせて柔らかくしてから、ピンセットでそっとつまむと外れやすくなります。無理に引くと双葉がちぎれるので、外れないときは湿らせて半日ほど待ちます。
発芽したら覆いを外し、明るい日陰へ移します。苗の時期にいちばん多い失敗は、湿りすぎで根元が細くくびれて倒れる立ち枯れです。双葉が開いたら腰水の水位を下げ、弱い風が通る場所に置きます。
- 光:光が足りないと茎がひょろりと伸び、根元が細いまま育ちます。本葉が出たら、数日かけて明るさに慣らしていきます。
- 水:本葉が出そろったら、1〜2か月かけて上からの水やりに切り替えます。
- 肥料:本葉が数枚になってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。
- 植え替え:本葉が数枚になり、鉢のなかが混み合ってきたら、根を崩さないように用土ごと1株ずつ植え分けます。
光が足りない季節や室内では、植物育成ライトを使うと徒長を抑えやすくなります。用土の組み方は用土の選び方にまとめています。
苗の最初の冬越し|いちばんの分かれ目
グロボーサの実生で苗を失いやすいのは、発芽のときより最初の冬です。東アフリカの暖かい土地の植物で寒さに弱く、まだ塊根に水を蓄えていない苗はなおさらです。
- 置き場所:最低気温が15℃を下回りはじめたら室内へ。冬のあいだも15℃前後を保てる明るい場所が安心で、10℃を下回らないようにします。
- 水やり:大きな株は冬に水を控えて休ませますが、まいた年の苗は乾かしきらないのが要点です。暖かい日の午前中に、用土の表面が湿る程度の水を月に1〜2回与えます。
- 落葉:寒くなると葉を落とすことがありますが、緑の茎と根元が硬いままなら心配はいりません。グロボーサは茎や塊根の緑の部分でも光合成をするので、葉がなくても明るい場所に置いておきます。
- 春の目覚め:新しい葉が動き出すまでは水を急に増やさず、葉が開いてから少しずつ量を戻します。
冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しに、春からの水の戻し方は塊根植物の水やりにまとめています。
種から育てた株の姿の変わり方
グロボーサの実生株は、若いうちは根元が細長いとっくり形をしていて、年を重ねるにつれて横にふくらみ、丸みのある塊根に近づいていきます。表面のいぼ状の凹凸も、株が大きくなるほどはっきりしてきます。育つ速さはゆっくりで、現地球のような大きな球になるまでには長い年月がかかります。その途中の形の移り変わりを見ていけるのが、実生株ならではの楽しみです。
種から1年ほどの苗のイメージ。根元が少しずつふくらみはじめます。(AIで生成したイメージです)
- 塊根は強い直射から守る:茎や葉はよく日に当てたいところですが、緑の塊根は真夏の強い日ざしで焼けることがあります。夏の西日が当たる場所では、塊根に寒冷紗で軽く影を作ります。
- 鉢を急に大きくしない:根が回ったら一回り大きい鉢へ。大きすぎる鉢は用土が乾かず、冬に根を傷めます。植え替えの手順は塊根植物の植え替えと同じです。
- 伸びすぎた茎は生育期に切る:茎はつるのように長く伸びるので、置き場所に合わせて生育期に切り戻します。切り口から出る樹液は有毒とされ、茎のトゲも鋭いので、手袋をして作業し、終わったら手を洗います。
姿の整え方は塊根植物の仕立て方にも書きました。夏に育つ仲間の実生では、パキポディウムの実生やボスウェリアの実生も同じリズムで始められます。塊根植物の仲間全体は塊根植物(コーデックス)にまとめています。
縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。
よくある質問
アデニア・グロボーサは挿し木でも塊根ができますか?
茎を挿すと根は出ますが、根元が丸くふくらむことは少ないとされます。グロボーサらしい緑の塊根を時間をかけて育てたい場合は、種から育てた実生株が向いています。挿し木株は、茎やトゲの姿を手軽に楽しむ株と考えるとわかりやすくなります。
グロボーサの種が発芽しません。何が原因ですか?
まず温度を確かめます。グロボーサは25〜30℃前後でよく動き、20℃を下回る日が続くと動き出さないまま傷むことがあります。次に種そのもので、薄くぺたんこな種や軽い種、採ってから時間の経った種は発芽しにくいとされます。発芽はそろわず、1か月以上かかる種もあるので、用土を乾かさずに様子を見ます。
種から育てた苗は、何年くらいで丸くなりますか?
育つ速さは置き場所や温度でかなり変わるため、年数ははっきり決まっていません。若いうちは細長いとっくり形で、年を重ねるにつれて横にふくらみ、丸みが出てきます。生育期によく日に当て、冬を暖かく越させるほど、毎年の育ちが積み重なっていきます。