実生

アデニア・グラウカの実生|種まきの時期と発芽温度、挿し木との違い、苗の冬越し

木の縁側の台に置いた素焼きの浅鉢に、青緑色でなめらかなとっくり形の塊根をもつアデニア・グラウカが植わり、頂部から細い茎と深く切れ込んだ葉が伸びている
AIで生成したイメージです
この記事の結論

アデニア・グラウカの実生株は、種から育ち、根元の青緑色の塊根がとっくり形にふくらんでいく株です。挿し木では根元が太りにくいため、塊根の姿を楽しむなら実生が向いています。新しい種を25〜30℃ほどの暖かさで無肥料の用土にまき、苗の最初の冬は10〜15℃を保てる明るい室内で、乾かしきらずに越させるのが基本です。

アデニア・グラウカ(Adenia glauca)は、南アフリカ北部からボツワナにかけての乾いた岩場や藪に育つ、トケイソウ科の塊根植物です。根元に青緑色でなめらかな塊根をつくり、その頂部から細いつる状の茎を伸ばして、手のひらのように深く切れ込んだ葉を広げます。名前の「グラウカ」は、白い粉を帯びたような青緑色を指す言葉で、塊根や葉の色合いをよく表しています。流通名で「幻蝶かずら(幻蝶カズラ)」と呼ばれることもあります。

売り場では輸入株や挿し木の株も見かけますが、種から育てた実生株や種そのものも出回っています。実生(みしょう)は、種から育てること、または種から育った株を指す言葉です。この記事では、グラウカの実生株がほかの株とどう違うのか、種から始めるときの手順、苗を失いやすい最初の冬の越し方を順にまとめます。種から育てる話の全体は実生・種まきにまとめてあります。

アデニア・グラウカの実生株とは|挿し木株・輸入株と何が違うか

グラウカの株は、大きく実生株・輸入株(現地球)・挿し木株の3つに分かれます。いちばん大きな違いは、根元の塊根が育っていくかどうかです。グラウカは茎を挿すと根は出やすいものの、根元はふくらみにくいとされます。とっくり形の塊根を楽しむ株を育てたいとき、種からが向いていると言われるのはこのためです。

実生株輸入株挿し木株
生まれ種から自生地から輸入茎を挿して発根
塊根年ごとにふくらむすでにできているふくらみにくい
姿若いうちから根元が丸みを帯びる大きくごつごつした塊根茎と葉が中心
迎えてからの手間すぐ普通の管理未発根なら発根管理すぐ普通の管理

輸入株は、長い年月をかけてできた大きな塊根をそのまま迎えられるのが魅力です。ただ、根を落として運ばれてくることが多く、根が出ないまま傷むこともあります。根の出させ方は塊根植物の発根管理にまとめました。札に書かれた「実生」「現地球」の意味や、迎えたあとの手間の差は実生株と輸入株の違いで整理しています。

同じアデニア属でも、東アフリカのアデニア・グロボーサの実生は、長いトゲのある茎といぼ状の塊根をもち、寒さにもより弱い仲間です。グラウカの茎にはトゲがなく、塊根の肌もなめらかです。名前の似たアデニウム(砂漠のバラ)はキョウチクトウ科の別の植物で、種の形も発芽の速さも違います。アデニウムの種まきはアデニウムの実生にまとめています。

雌雄異株で種が少ない理由と、種の選び方

グラウカの種があまり出回らないのは、雌雄異株、つまり雄の株と雌の株に分かれているためです。ひと株だけでは種ができず、雌雄そろった株を同じ時期に咲かせる必要があります。花は葉のつけ根に咲く小さな淡い黄緑色の花で、受粉した雌株には丸い実がなり、熟すとなかに数粒の種が入っています。国内で採られた種は数が限られ、海外で採られたものが流通の中心です。海外から取り寄せる場合は、植物検疫の手続きが関わります。

雌雄の株をそろえて受粉させる流れは、交配(受粉)のやり方に書きました。

グラウカの種は、表面に細かなくぼみ模様のある、やや平たい形をしています。まく前に次のところを見ておくと、発芽しなかったときに原因をたどりやすくなります。

  • ふくらみと重さ:しっかりふくらみ、つまむと重さを感じる種は中身が詰まっていることが多く、薄くぺたんこな種や軽い種は発芽しにくいとされます。
  • 新しさ:採ってから時間が経った種ほど発芽しにくくなります。採種時期の新しいものを選び、届いたら早めにまきます。
  • 吸水:殻が硬めなので、30℃前後のぬるま湯に一晩ほど浸けてからまくと、水を吸いやすくなります。

赤玉土と軽石の細粒を入れた黒い角鉢に、ピンセットで平たい茶色の種を置いている手元。鉢は浅く水を張ったトレーに置かれている 種は用土の上に間隔をあけて置き、ごく薄く覆います。(AIで生成したイメージです)

まく時期と発芽の条件

グラウカは夏に育つ塊根植物で、発芽にもしっかりした暖かさが要ります。発芽はそろわず、早い種は2週間ほどで顔を出し、遅い種は1か月以上かかることもあります。まいた数のうち出てくるのが一部だけ、ということも珍しくないので、数粒まとめてまくと見通しが立てやすくなります。

項目目安
まく時期気温が安定して暖かくなる5〜7月
発芽に向く温度25〜30℃前後
発芽までの日数2〜4週間ほど。それ以上かかる種もある
用土細粒の赤玉土・軽石などの無機質で、肥料なし
水腰水で表面を乾かさない

秋にまくと、発芽した苗が小さいまま冬を迎えることになります。最初の冬を越しやすくするためにも、初夏までにまいて、ひと夏育てておくのが安心です。

播種の手順と、発芽後の苗の育て方

まく手順は、ほかの塊根植物の実生とほぼ同じです。

  1. 用土を湿らせる:鉢に無肥料の細粒の用土を入れ、トレーに水を張って下から吸わせる
  2. 種を置く:2〜3cmほどの間隔で並べる。根がまっすぐ下へ伸びるので、深さのある鉢が向く
  3. 薄く覆う:種が隠れる程度に、細粒の用土をかける
  4. 覆いをして温める:透明な蓋かラップをかけ、日中は少し開けて空気を入れ替える。気温が足りない時期はヒーターマットで25〜30℃ほどに保つ

芽が種の殻を頭にかぶったまま出てくることがあります。殻が双葉に張りついたままだと、その下が蒸れて傷みやすくなります。霧吹きで殻を湿らせて柔らかくしてから、ピンセットでそっとつまむと外れやすくなります。無理に引くと双葉がちぎれるので、外れないときは湿らせて半日ほど待ちます。

発芽したら覆いを外し、明るい日陰へ移します。苗の時期にいちばん多い失敗は、湿りすぎで根元が細くくびれて倒れる立ち枯れです。双葉が開いたら腰水の水位を下げ、弱い風が通る場所に置きます。

  • 光:光が足りないと茎がひょろりと伸び、根元が太りにくくなります。本葉が出たら、数日かけて明るさに慣らしていきます。
  • 水:本葉が出そろったら、1〜2か月かけて上からの水やりに切り替えます。
  • 肥料:本葉が数枚になってから、薄めた液体肥料を月1〜2回ほど。
  • 植え替え:鉢のなかが混み合ってきたら、根を崩さないように用土ごと1株ずつ植え分けます。

光が足りない季節や室内では、植物育成ライトを使うと徒長を抑えやすくなります。用土の組み方は用土の選び方にまとめています。

アデニアの仲間は、ほぼ同じ流れでまけます雌雄異株の事情や種の見分け方、発芽の温度、最初の冬の越し方まで、アデニア・グロボーサの実生もよく似た手順で進みます。
アデニア・グロボーサの実生を見る →

苗の最初の冬越し|いちばんの分かれ目

グラウカの実生で苗を失いやすいのは、発芽のときより最初の冬です。霜には耐えられず、まだ塊根に水を蓄えきれていない苗はなおさら寒さに弱くなります。

  • 置き場所:最低気温が15℃を下回りはじめたら室内へ。冬越しの最低温度は資料によって5〜10℃と幅がありますが、まいた年の苗は10〜15℃を保てる明るい場所が安心です。
  • 水やり:大きな株は冬に葉を落として休むため、水を切って乾かし気味に越させます。一方、まいた年の苗は乾かしきらないのが要点です。暖かい日の午前中に、用土の表面が湿る程度の水を月に1〜2回与えます。
  • 落葉:寒くなると葉を落としますが、塊根が硬く張りを保っていれば心配はいりません。塊根の緑の部分でも光を受けるので、葉がなくても明るい場所に置いておきます。
  • 春の目覚め:新しい芽が動き出すまでは水を急に増やさず、葉が開いてから少しずつ量を戻します。春の動き出しはゆっくりで、暖かくなってもしばらく変化が見えないことがあります。

冬の置き場所の考え方は塊根植物の冬越しに、春からの水の戻し方は塊根植物の水やりにまとめています。

種から育てた株の姿の変わり方

グラウカの実生株は、比較的若いうちから根元が丸みを帯び、とっくり形にふくらみはじめるとされます。年を重ねるにつれて塊根は横にも太り、青緑色の肌に細かな凹凸や模様が出てきます。自生地では大人の腰ほどの高さになる大きな塊根に育ちますが、鉢のなかではゆっくりと時間をかけて大きくなります。その途中の形の移り変わりを見ていけるのが、実生株ならではの楽しみです。

小さな素焼き鉢に植わった種から1年ほどのアデニア・グラウカの苗。根元が青緑色の小さな球状にふくらみ、細い茎の先に深く切れ込んだ葉が数枚ついている 種から1年ほどの苗のイメージ。根元が小さな球のようにふくらみはじめます。(AIで生成したイメージです)

  • よく日に当てる:生育期は日当たりと風通しのよい場所で育てると、茎が間のびせず、塊根も太りやすくなります。真夏の強い西日は、寒冷紗で少しやわらげます。
  • 鉢を急に大きくしない:根が回ったら一回り大きい鉢へ。大きすぎる鉢は用土が乾かず、冬に根を傷めます。植え替えの手順は塊根植物の植え替えと同じです。
  • 伸びすぎた茎は生育期に切る:つる状の茎は長く伸びるので、置き場所に合わせて生育期に切り戻します。アデニアの仲間の樹液は有毒とされるため、手袋をして作業し、終わったら手を洗います。

姿の整え方は塊根植物の仕立て方にも書きました。夏に育つ仲間の実生では、コミフォラの実生やドルステニア・ギガスの実生、パキポディウムの実生も同じリズムで始められます。塊根植物の仲間全体は塊根植物(コーデックス)にまとめています。

縁側では、球形ユーフォルビアのオベサ鉄甲(愛好家のあいだでは「オベ鉄」)を中心に、実生の株から1株ずつ姿を見て紹介していく予定です(個体販売は準備中)。はじめの入荷は入荷通知に登録いただいた方から先にお知らせします。

よくある質問

アデニア・グラウカは挿し木でも塊根ができますか?

茎を挿すと根は出やすいものの、根元がとっくり形にふくらむことは少ないとされます。青緑色の塊根を時間をかけて育てたい場合は、種から育てた実生株が向いています。挿し木株は、つる状の茎と葉の姿を手軽に楽しむ株と考えるとわかりやすくなります。

グラウカの種が発芽しません。何が原因ですか?

まず温度を確かめます。グラウカは25〜30℃前後でよく動き、20℃を下回る日が続くと動き出さないまま傷むことがあります。次に種そのもので、薄くぺたんこな種や軽い種、採ってから時間の経った種は発芽しにくいとされます。発芽はそろわず、1か月以上かかる種もあるので、用土を乾かさずに様子を見ます。

グラウカとグロボーサ、種から育てるならどちらが始めやすいですか?

種のまき方や発芽の温度はほぼ同じです。違いが出るのは冬で、東アフリカ原産のグロボーサは冬も15℃前後の暖かさを好むのに対し、南部アフリカ原産のグラウカはもう少し低い温度でも越しやすいとされます。冬の室温を高く保ちにくい場合は、グラウカのほうが管理しやすいと感じることが多いでしょう。

縁
縁側 編集部オベサ鉄甲を中心に、塊根植物とユーフォルビアの育て方と選び方を、静かに言葉にしています。

入荷のお知らせと育て方の便りを、月に二度。

個体販売は準備中です。はじめの入荷は、登録いただいた方から先にお知らせします。